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NHKスペシャルの衝撃
~企業広報が「覚悟」すべきディスコミュニケーション

  • 須田 伸

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2008年7月29日(火)

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 7月20日、三連休の真ん中の日曜日の夜9時、NHKスペシャル「インドの衝撃 第1回」を見ました。21世紀の国際社会の中心的存在になる国として注目されるインドをターゲットにしたさまざまなビジネスを紹介していました。

 通常NHKのニュースなどでは、映像でそのメーカーがどこ会社であるか視聴者にわかる場合でもナレーションでは「この大手電機メーカーが開発したのが」とか「今、注目を集めているのが品川に本社のあるこの会社の」といったように、会社名は出さないのが「NHKのルール」です。

 公共放送として、特定の会社の広告になってはいけない、という配慮からだと推察され
ます。

 ところが今回、私が見たNHKスペシャル「インドの衝撃」では、企業名がはっきりと何度も連呼されていました。

 そしてこれは、通常であれば、その企業の広報担当者にとって夢のような出来事ですが、今回に関してはそうではありませんでした。

 実際の番組をご覧になった方も少なくないと思いますが、そうでない方のために少し丁寧に番組の内容を説明させてください。

ユニリーバ現地法人のコメントに絶句

 NHKスペシャル「インドの衝撃」の第1回放送分のサブタイトルは「“貧困層”を狙え」です。

 インドの人口の多くを占める、購買力の少ない貧困層をあえてマーケティングのターゲットにすることで成功している事例の1つとして、ユニリーバのインド現地法人が紹介されていました。

 ご存知のとおりユニリーバは世界中の国々でトイレタリー商品を中心に、P&Gなどと並んで圧倒的な認知度をほこるグローバル・ブランド企業です。

 そうであるがゆえに、NHKという日本の放送局の取材に対して、日本法人の広報担当者が関与していたとは思えません。

 おそらく、NHKの取材班がインドのユニリーバの現地法人に取材依頼をしたのでしょう。ユニリーバの広報担当者にしてみれば「自分たちのサクセスストーリーを取材してくれるのなら」という判断で取材を受けたのでしょう。

 そしてNHKのクルーは取材をし、取材テープから番組を編集して、ナレーションや音楽をつけて完成させ、オンエアしたのだと思います。

 インドでの自社の成功しているマーケティング活動の模様が取材され、自国ではなく日本で放送されたときに、日本のマーケット、日本の消費者に、どのような心理的影響を与えるのか? この点に関して、インドのユニリーバ現地法人の広報担当者は、あまり考えていなかったのではないか、と推察します。

 そうでなければ考えられないようなシーンが次々と登場したからです。

 番組では、まず最初にユニリーバの現地法人「ヒンドゥスタン・ユニリーバ」社が紹介されました。この会社の入っているビルや企業ロゴも大写しになります。

 次にカメラはビルの中のオフィスを撮影しています。そしてユニリーバのゼネラル・マネージャー、シュリカント・シュリニバスマドバンさんは「わが社にとって農村の貧困層は極めて有望な市場です」とカメラに向かって話はじめます。

 次に番組は都市から離れた農村ではせっけんが売れなかった理由を「インドの農村では、日常的にせっけんを使う習慣が根付いていないため」と解説し、ユニリーバが6年前から実際に行っているキャンペーンが紹介されます。

 それは、ユニリーバのスタッフがせっけんを使う習慣がない農村の学校をたずねて特別授業をする、というものです。ユニリーバから派遣されたスタッフが、貧困層の住む村で、せっけんを使うように子供たちに教えます。

「ユニリーバの」せっけんを使いましょう

 取材が入ったこの日、村の学校に集まったのは、7歳から13歳の子供80人です。彼らにむかって、清潔を保つために、せっけんを使うことがいかに大事か、紙芝居を使って教えます。カメラは、紙芝居を食い入るように見つめる真剣な子供たちの表情をとらえます。
 そこに「ユニリーバのキャンペーンでは子供たちが一番のターゲットです」とナレーションが入り、その理由として、「大人にくらべ子供は、習慣を変えやすいと見ているからです」と説明されます。

 しかし、ユニリーバのスタッフが教室の子供たちに繰り返し言わせる言葉は「せっけんを使いましょう」ではありません。

 「ユニリーバのせっけんを使いましょう」という言葉を、まるで日本の学校における算数の九九のように言わせるのです。

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