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20年で変貌したシミュレーション設計の世界

経営の世界で、先を読む「シミュレーション経営学」を発展させよ

  • 宮田 秀明

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2008年8月1日(金)

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 22年前の5月から6月にかけて2週間半ローマに滞在した。イタリアの国立船舶研究所の初代客員教授として招かれ、集中講義と個別指導をすることになったのだ。ローマ大学航空学科のP教授が私をその研究所に推薦した結果だった。

 コロッセオ近くの安いホテルに泊まり、毎朝地下鉄で15分南へ向かい、駅を出ると、若い研究員の車が待っていた。毎日8時間勤務で、土曜日も出勤だった。郊外の研究所なので、抜け出すこともできなかった。研究員たちと構内の食堂で毎日パスタの昼食を摂り、彼らにつき合って、食後にカプチーノを飲んでいた。もう昼なのにエスプレッソでなくカプチーノですか、とからかわれていたが、だんだん食後のカプチーノが欠かせなくなっていった。

 この研究室にはイタリア唯一と言っていい、長さ200メートルほどの流体実験用施設があり、連日実験が行われていた。いわば運輸省と防衛省の両方のための研究所のような形で運営されていたので、滞在中も実験そのものを見せてもらうことはなかった。イタリア海軍でも、と言っては失礼だが、極秘の技術情報やそのための実験があるのだ。

 ローマに滞在した1986年まで、造船大国の次のレベルの国であるイタリアのすべての流体力学的な設計、つまり船の形状の設計は、軍用の船も商船も実験によって行われていた。実験設計学が設計法の100%だったのだ。もちろん日本でも、その他の欧米諸国でも少し前までは同じだった。

実験設計学からシミュレーション設計学への進歩

 その世界を変えたのは私だった。まだ30代の初めだったのだが、コンピューターサイエンスを流体力学に応用して、コンピューターシミュレーションによって船の形状を設計できるようにした。1983年のことだ。だから、1980年代は世界中から引く手あまただった。

 流体力学はいろいろある力学の分野の中で一番難しい分野に属する。流体力学を支配する方程式はナビエ・ストークス式と呼ぶが、直接解くことは不可能だ。もし解ければ、賞金が与えられることになっているほどだ。私はその問題の波に関する部分をコンピューターの力を借りて解いた最初の研究者だった。

 1993年にアメリカズカップの仕事を引き受けた時も、コンピューターサイエンスによる設計の世界では世界のトップにいたことが、この仕事を引き受けた理由の1つである。競争優位の技術を持っていないまま引き受けては詐欺になってしまう。

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