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読者コメントを基に
「地上デジタル放送の明日」を考える(後編)

2008年8月22日(金)

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 前回に引き続き、「『完全』を目指す地上デジタル放送、読者の皆様はどうお考えですか」への読者コメントを基に、地上デジタル放送の今後について考える。

 前回の最後では、ベストエフォートに関する読者の皆さんのご意見を取り上げた。

 ある読者からは、「ベストエフォートについては納得できるが、放送法との関連はどうなっているのか」という質問を受けた。確かに公共放送については、「あまねく日本全国において受信できる」という規定がある。別の読者が書いていたように、民放は「受信も送信も義務では」ない。そもそもNHKを含むアナログ放送が完全ということでもない。それなのに、完全移行を唱えることに無理がある。断っておくが、「もともと(番組を)見られない人がいるのだから、デジタル化されて見られなくなっても仕方がない」と言うつもりはない。

●もともと完全ではない

 素朴な疑問ですが、そもそもアナログ放送はラジオにしろテレビにしろ、ユニバーサルサービスではなく、ベストエフォート型だと思うのですが。必死にチューニングを合わせてラジオを聞いたり、画像が悪くても隣接地域のテレビ局の放送を音だけ聞いたりした経験者だから言えることかもしれません。放送はユニバーサルサービスであるべきだとは思いますが、そもそもそうなっていない。それなのに、完全な転換を目指そうとすると混乱が生じるのではないでしょうか。

●放送に縛られるな

 転勤であちこちの地域に住みましたが、テレビ放送ほど、ベストエフォートなしろものはありません。どこに引っ越しても見られるのはNHKだけです。完全性など、民放なんて全くの問題外。首都圏に住んでいると、地方のテレビ放送のチャンネル数がどんなに貧弱か分からないかもしれません。

 テレビに比べればまだインターネットや通販DVDの方が、どの地域にいても入手しやすいです。放送コンテンツもレベルダウンが激しいですし、中身があれでは箱モノ行政にしかならないでしょう。趣味のコレクションをネットオークションで売ったりしていますが、地方の方に買ってもらうことが多い。海外からも、代行業者を通じて買ってくれます。逆に人口が多いはずの首都圏は少ないです。

 首輪つきでないコンテンツホルダーは、放送に縛られずにネット配信などで日本を含む世界を相手にした方がいいでしょう。放送が国内100%に届いたとしても、世界の市場の方が絶対に大きい。

●都会と地方で差がある

 デジタル云々という前に、都会と地方で提供されているチャンネル数が違う時点で放送は既にベストエフォートなのではないか、と思います。デジタル化の欠点として「電波状態が悪いと全く視聴できない」というのがありますね。アナログなら映りが悪くてもなんとか見えますし、最悪の場合、音声だけでも聞けます。天災などで少しでも情報が欲しい時に情報が得られなくなってしまう可能性もあるのではないでしょうか。

●地デジはたぶん見られない

 現状のアナログ地上波でも、風・雨・雪などの天候によっては、NHKすら無音になる我が家。衛星放送ならなんとか映ると思われるが、UHFアンテナを使う地デジは多分無理でしょう。2011年のアナログ打ち切り時に全国で35万世帯には地デジが映らないらしい、と聞いたが、我が家はその1世帯だろう。唯一、ADSLが使えるようになったことがせめてもの救いでしょうか。

 前回コラムではっきり書かなかったが、「残る7%のために、今から9510局を開設」し、「完全移行」を目指すのは、やはり放送という事業を守りたい地方放送局、そして総務省の都合としか考えられない。同様の指摘をする読者もおられた。

●縄張り争いはやめてほしい

 米国でケーブルテレビを見ていますが、地方局の流すローカルニュースや地元大学のテレビ講座が見られます。他の州に行けば同じケーブル会社でも別のローカル番組を放映しています。なぜ日本では衛星やケーブルを使って地方局制作の番組を地元に配信できないのか疑問です。縄張り争いのために、間接的にであれユーザーが多大なコストを負担させられるのならば、即刻考えを改めてほしい。

●地方放送局の権益保護

 筆者の考えに基本的には賛成です。地上波デジタルの完全実施に固執するのは、総務省もにおわせているように、地方放送局の権益の保護なのでしょう。

●社会システム設計能力が低い

 中継局の設備を製造・設置する企業が、総務省や放送局の天下り先であって、今回の件でがっぽり儲かるというストーリーなのではないかと、勘繰りたくなる記事でした。日本の役所は社会システムの設計能力があまりにも低過ぎます。デジタル化とともに現行のビジネスモデルが滅びてしまえばいい。そのためには、今テレビ局にコンテンツを提供している、プロのコンテンツメーカーが他媒体に移動しないといけませんが。

●消費者不在の利権がらみ

 テレビ自体のニーズが薄まってきている現在、現状よりも不便なデジタル化を「完全」に実施し、コストをかけることが適切でしょうか。 消費者が便利にならないことを「完全」に実施するのは、利権がらみだとしか思えません。

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「読者コメントを基に
「地上デジタル放送の明日」を考える(後編)」の著者

谷島 宣之

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BPビジョナリー経営研究所

一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。1985年から日経コンピュータ記者、2009年1月から編集長。2013年から現職。プロジェクトマネジメント学会員、ドラッカー学会員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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