グーグル・ストリートビュー。
あちこちで話題ですね。
ウェブのサービスで、ネット上を飛び出して新聞や雑誌などでこれほど話題になった事例としては、YouTube以来のような気がします。
それだけインパクトのあるサービス、ということだと捉えていますが、「便利じゃん」という声もあるものの、「気持ち悪い」という声のほうが、とりわけ新聞・雑誌などのオフラインメディアにおいては強いように思います。
ぼくのまわりで聞いてみたところ、ネット業界関係者は「便利だし、最初は抵抗があってもしばらくすれば受け入れられるよ」という声が圧倒的です。
一方でそもそも「ストリートビュー」というサービスの存在をまだ知らない人に、目の前でパソコンを使って彼らの自宅の住所を聞いて入力して見せてあげると一様に「気持ち悪い」と反応するのです。
非常に対照的な反応です。
当初、ストリートビューへの拒否的な反応を日本人の国民性になぞらえて語る論評もありましたが、実は世界中でストリートビューへの批判があることが明らかになってきました。ストリートビューへの反発は、本国のアメリカでも起きています。(参考記事:CNET「グーグル、私道内に侵入したとして非難される Street Viewをめぐって」)
ストリートビューは、世界中を巻き込んで論争になっているわけです。
読者の皆様の中でストリートビューをまだ使ったことのないという方は、まず、一度このリンクから使ってみてください。
想像だけでは語りえないサービスです。ぜひ、体験してみてください。
「グッバイ・プライバシー」が未来の姿なのかもしれない
CNET上のパネルディスカッションでも、ストリートビューを取り上げていて、その中でパネラーのひとりの時事通信社編集委員の湯川鶴章さんが「Privacy is Dead」という言葉を引用して、以下のように論評されているのが印象に残りました(もと記事はこちらから)。
「いつまでウダウダ言ってるんだ!プライバシーはもう死んだんだよ!(Get over it! Privacy is dead!)」って言ったのはだれだっけ?確かスティーブ・マクニーリーだったように記憶している。最初に聞いたときは違和感があったけど、マクニーリーの言う方向に進んでいるんだなとは思う。利便性の前に人間は抗えず、ストリートビューも受け入れられるだろうなあ。
ぼくは、この湯川さんのコメントを読んで、オーストリアのリンツで毎年開催されるメディアアートの世界的イベント「アルス・エレクトロニカ」(Ars Electronica)の2007年のテーマとして掲げられた「GOODBYE PRIVACY - Welcome to the Brave New World!」という言葉を思い出しました。
ぼくも、長い目でみれば、湯川さんが書いている方向に時代は流れていくのだろうと思います。
面白い!と気持ち悪い!の両方が混ざった複雑な感情です。はじめは会社の近所、次に自宅を見て、二度の衝撃を味わいました。しかし…その後、近所の幼馴染の家や通った学校、懐かしい場所、まだ行ったことのない観光地などを見てしまい、なんだかんだであっという間に2~3時間経っていました。カーナビが実写になったと考えれば非常に便利ですが、反面、日本の狭い住宅事情でここまで住宅街に入る必要があったのかな?とも思います。また、不意打ちであったことも気持ち悪さを助長しているのは間違いありません。削除の申請にしても判りづらく、さらにメールアドレスを記入する事によって、「ここに住んでいるのは私です」と喧伝しているようなものなので、プライバシーを公開したくないのに自分のアドレスを晒すのはなんだかなぁ…という矛盾も感じました。ただ、繁華街や主要な都市、観光地に限って言えば、やはり便利で面白いと思います。やはり、準備の仕方や公開の仕方が「隠し撮り」であったことと、その後アフターケアが充実していないことが問題なのでしょうね。今回のことで、グーグルは「ネット上に地球を丸ごと再現」したいのかな?と思いました。(2008/09/30)