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うちのオカンは地球を救うナウシカだった

日本独自のカスタマイズ文化を切り拓く、「痛い」家族たち

2008年9月16日(火)

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 前回のコラムでは、若い男子の乗るカスタムカーの歴史をひもときながら、最新カスタムカーの超新星「痛車」について語りました(9月1日掲載「痛車~自動車界に登場した超新星」)。今回はそんな「僕たち」が自家用車にハマっていた間に、家族のほかのみんなは、何をカスタム化していたのかという視点で分析を続けていきたいと思います。

「痛車グラフィックスvol.1」(芸文社)

「痛車グラフィックスvol.1」(芸文社)

 僕たちのアニキが「夜露死苦」とつづった特攻服に身を固めて週末の産業道路を暴走していた時代、家の大黒柱の「オヤジ」たちはデコトラを電飾で派手に飾ってトラック野郎になっていました。

 前回も述べましたが、「ワル」の乗る車は世界的に共通して低くて黒い車両です。装飾もできるだけ排除してチャラチャラした感じを払拭し、威圧感をかもし出そうとします。それに対してデコトラは、装飾テンコ盛りを追い求めます。当時のチョイ悪オヤジが駆るトラックが、お神輿や山車のように華やかなお祭り装飾風に美しさを求めたというのは面白い現象でしょう。

 日本の美意識のユニークさの1つに「削ぎ落とす美」がよく言われます。ベルサイユ宮殿や紫禁城がデコレーションを塗り固めていった方向性だったのに対して、桂離宮や伊勢神宮の様式美とは、余分なものをそぎ落とす侘び寂びの方向性です。日本ではこのような正統的ハイカルチャーが「削ぐ方向」に進化したのに対して、下々のサブカルチャーは逆行していたというのもバランス感覚の結果なのかもしれませんね。

 ついでに書き記しておきますと、業務用の運搬車両をデコトラ風に飾り立てるサブカルチャーは、実は世界各地に認められます。パキスタンやアフガニスタンでは日本同様の立体造形と派手に着飾ったジングルトラックと呼ばれるデコトラが有名です。タイのトゥクトゥクやサムローと呼ばれる3輪タクシーにもカスタム化する文化がありますし、フィリピンでは、米軍払い下げのジープを思い思いのデザインに改造したのが始まりの、ジープニーと呼ばれる乗り合いタクシーが走り回っています。

デコトラからVipカー、痛車へと広がる日本のカスタムカー文化

 アジアを離れて、実は中南米でもとても良く似たトラックアート文化が華開いています。グアテマラのチキンバスは米国の黄色いスクールバスの払い下げ版ですが、極彩色に塗り固められています。ハイチのTap-Tap、コロンビアのChivasなども中古のトラックバスをカスタムデザイン化しています。

 アジアも中南米も共通しているのは、これでもかという感じでコテコテに仕上がっている点です。デザインの内容は、それぞれの土地に土着のアニミズム的な宗教色が反映される特徴もあります。中南米の装飾はキリスト教的な表現形をとっているものの、底辺に流れる東洋、インディオの魂が感じられます。

高級車にこだわりたい人のための4ドアセダン雑誌「VIPCAR」(芸文社) 2008年9月号

高級車にこだわりたい人のための4ドアセダン雑誌「VIPCAR」(芸文社) 2008年9月号

 その意味ではまさにお神輿のような捉え方なのかもしれません。お神輿って英訳すると「Portable shrine=持ち運べる神社」と訳されますから、もともと車両との相性が良いのでしょう。考えてみれば日本のデコトラに描かれるアイテムも般若とか鬼とか龍とか、刺青に描かれるような神通力を持つ妖怪系で宗教画に近い風合いがあります。

 コテコテに飾り立てるデコトラを含む一連のカスタムカー文化は西洋文化を基に近代化・発展した地域ではメジャーではありません。あっても移民などのマイノリティーのエスニックグループの中で継承される場合がほとんどです。米国においても、カリフォルニア南部のヒスパニック系や、南部のカリビアン系、都市のアフリカ系の中では花咲いています。

 いわゆる先進国の中でこのような文化を保ち続けているのは我が国だけでしょう。その表現形は「Vipカー」とか「痛車」と変化しているものの、カスタムカーの系譜であることは間違いありません。

「VIPCAR」(芸文社)2008年9月号バックナンバーのHPより

「VIPCAR」(芸文社)2008年9月号の巻頭特集「Cool beauty Queen」、バックナンバーのHPより

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「うちのオカンは地球を救うナウシカだった」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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