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謎めく権威の神殿に“サラリーマンの夢”を見る

~最高裁判所(1974年)、東京都千代田区~

2008年9月18日(木)

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*本文中の写真とイラストはクリックすると拡大表示されます。

 皇居のお堀端。外壁にはびっしりと花崗岩が積み上げられている。公共建築でありながら、そこに出入りする人の姿はほとんどない。利用者1人当たりの建設費や運営費を算出したら、おそらく全国の公共建築のトップ10に入るであろう、この建物は何でしょう?

 見出しに書いてあるので既にお分かりとは思うが、答えは最高裁判所である。

 いかにも値が張りそうな分厚い花崗岩(茨城県産の稲田石)を惜しげもなく積み上げている。普通なら、石の一部を彫り込んでギリシャ風にしたり、動物の形にしたような部分があるものだが、ここはそうした装飾が一切ない。石はほぼすべてが直方体。表面は割り肌仕上げ。「石積み=様式建築」という定式を打ち破る、モダニズムとしての石の表現だ。

 好き嫌いは分かれるだろうが、外観のインパクトは強烈。筆者は初めて見た時、特別な人を収容する刑務所かと思った。それが最高裁と知って妙に納得した。こんなにも「権威」を感じさせ、こんなにも近寄り難いオーラを発している建物をほかに知らない。

 この建物を設計したのは、今も現役で活躍する岡田新一氏(1928年生まれ)。岡田氏は40年前、「公開設計コンペ」でこの建物の設計者に選ばれた。

 少し話がそれるが、公共建築の設計者が通常どうやって選ばれているかご存じだろうか。選定法の1つが、「指名設計コンペ」。数社の設計事務所を指名して設計案を求めるやり方だ。これと似ているが、設計案ではなく、人を選ぶ「指名プロポーザル」という方法もある。そして、建築家の団体は反対しているものの、依然として多いのが「設計入札」。つまり、設計料の安さで決める方法。「特命」という契約方法もある。これは複数で競争させるのではなく、初めから1者を指名する方法だが、発注の透明性が重視される昨今は少なくなっている。

 「公開設計コンペ」は、一定の資格を満たす設計者から広く設計案を募集して、一番優れた案を選ぶやり方だ。公平・公正であり、質の高い案を選ぶことができる。設計者選定の理想形だ。だが、この方法は主催者側も参加側も費用がかかるし、決まるまでに時間もかかる。だから、実施される数は少ない。

設計者は“サラリーマンの星”、最高裁を設計してスター建築家の仲間入り

 最高裁判所の公開設計コンペは1969年に実施された。無名でも国のシンボル施設を設計できるチャンス! ということで建築界は大いに沸いた。もちろん丹下健三など、スター建築家もこぞって応募した。応募総数217点。その中から最優秀に選ばれたのが前述の岡田新一氏。当時41歳で、鹿島建設設計部に所属していた。

 岡田氏は、後に岡山市立オリエント美術館(1979年)や警視庁本部庁舎(1980年)などを設計し、公共建築のスペシャリストとしての地位を確立するが、コンペ当時は一介のサラリーマン。当選が決まると鹿島建設を退社して、設計事務所を設立。5年後、この建物を完成させた。総工事費は126億円。威圧的な外観デザインに賛否両論あったものの、一躍、スター建築家に仲間入りした。サラリーマン・ドリームである。

 そうした経緯をうっすらとは知っていたので、「昭和モダン建築巡礼」の連載を始めた時から、取材候補の1つに考えていた。あの巨大彫刻のような外観の中にどんな空間が広がっているのか。九州から始まった連載がようやく東京に至った2007年の春、最高裁判所に「建物を取材したい」と電話を入れた。すると、「企画書を送ってください」との答え。企画書の中に、この施設が戦後モダニズム建築のエポックであることを熱っぽく書き、記事の見本を付けて送った。何度か電話でやりとりし、「さあ、取材だ!」と、意気込んでいたところ、「見学は一般の方と一緒に通常の見学コースを見てください」「敷地内の撮影は一切禁止です」と連絡が…。

コメント1件コメント/レビュー

最高裁に限らず、全国の高裁・地裁・簡裁、家裁すべてで撮影が禁止されています。たぶん最高裁判所規則によるものだと思います。趣旨はプライバシーの保護なんでしょうか。建築としての美しさや歴史的意義のための写真ならば、問題ないと思います。まあ、裁判所もお役所ですから(その割りに裁判手続では結構融通がききますけど・・)。ちなみに、傍聴席にはカメラのほかに、旗、のぼり、ゼッケン、などの持込が禁止されています。(2008/09/20)

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「謎めく権威の神殿に“サラリーマンの夢”を見る」の著者

宮沢 洋

宮沢 洋(みやざわ・ひろし)

日経アーキテクチュア編集長

1967年東京生まれ。1990年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日経BP社入社。日経アーキテクチュア編集部に配属。以来、建築一筋。現在は日経アーキテクチュアにて「建築巡礼/プレモダン編」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

最高裁に限らず、全国の高裁・地裁・簡裁、家裁すべてで撮影が禁止されています。たぶん最高裁判所規則によるものだと思います。趣旨はプライバシーの保護なんでしょうか。建築としての美しさや歴史的意義のための写真ならば、問題ないと思います。まあ、裁判所もお役所ですから(その割りに裁判手続では結構融通がききますけど・・)。ちなみに、傍聴席にはカメラのほかに、旗、のぼり、ゼッケン、などの持込が禁止されています。(2008/09/20)

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