• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

意思決定プロセスとプロジェクト運営体制をきっちり作る

JTB、ビジネスモデルとITの同時革新に挑む(後編)

2008年9月26日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 ジェイティービー(JTB)のCIO(最高情報責任者)である志賀典人常務と、IT(情報技術)リサーチ大手、米ガートナー日本法人の日高信彦社長が、旅行業界のビジネス革新、JTBの基幹系システム再構築プロジェクトなどを題材に、CIOの仕事について語り合った。その模様を前編、後編の2回に分けてお送りする。

 旅行業界の変化に対応すべく、JTBはビジネスモデルの革新と、情報システムの再構築を同時に進めようとしている。それに先立って、志賀常務が取り入れた「IT戦略委員会」と「プロジェクトオーナー制」という仕組みは多くの企業にとっても参考になる。

(前編はこちら

日高 次の話題は、情報システムのマネジメント体制です。2006年に御社が分社化した時、志賀さんは「情報システムの戦略を立案する中枢部門やコアのテクノロジーは、本社に残すべきだ」と主張されたと伺っています。なぜそういう判断をされたんですか。

写真:志賀典人氏、日高信彦氏

(左)志賀 典人(しが・のりひと)
JTB常務取締役、総合企画担当、事業創造担当、CIO。1973年静岡大学人文学部卒業後、日本交通公社(現JTB)入社。2000年4月市場開発部長。2001年6月取締役。2005年6月常務取締役。2007年6月常務事業創造担当・CIO。2008年6月から現職

(右)日高 信彦(ひだか・のぶひこ)
ガートナー ジャパン 代表取締役社長。1976年東京外国語大学外国語学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。96年アプリケーション・システム開発部長。2001年アジア・パシフィックCRM/BIソリューション統括。2003年4月から現職 (写真:中島正之、以下同)

志賀 それらを分散させていろいろな所で情報システムに関する決断を下し始めたら、グループにとって十分な効果が得られるシステムは構築できません。この点については、大きな信念があったのです。システム設計に遠心力ではなく、求心力を持たせられるような仕組みを作ろうと考えました。

 私は今から4年前、つまり分社化の1年前に経営企画の統括とCIOを兼任することになり、その時最初にやったのが、グループとしてもっと集中的に物事を判断し、すべてのことが見えるような仕組みを作ることでした。ITについて言うと、それまであった「システム投資委員会」を格上げしました。具体的には「IT戦略委員会」を本社の中に設けて、グループ全体の案件を議論する場にしました。

システム開発に「プロジェクトオーナー制」を導入

 同時に行ったことが2点あります。まず情報システム子会社であるJTB情報システムの位置づけを変えました。それまではどちらかと言うと、システムを開発するベンダーであると同時にシステムを運用するオペレーション会社でもあるという位置づけでした。それを、これからはIT戦略委員会の事務局として、グループのシステムを企画する会社だと位置づけたのです。というわけで、現在、IT戦略委員会のスタッフは、ほとんど情報子会社から出向してきてもらっています。情報子会社の側にも、グループのシステムを企画する部門を設けてもらっています。

 もう1点の改革は、システムを利用する部門に、システム開発の最後まで関与させることです。「プロジェクトオーナー制」を設けました。例えば会計システムに関するプロジェクトならば、財務担当役員にプロジェクトオーナーを務めてもらう。最終的にシステムが納品されるまではあなたの責任ですよ、というふうにします。原則としてシステムを利用する部門の代表がプロジェクトオーナーになります。

 プロジェクトオーナーの下に、要件定義までの責任を負う利用部門の代表と、プロジェクトマネジメントができるシステム開発側の人間を据えます。プロジェクトオーナーは利用部門と開発側の両方を統括するわけです。何かあれば相談を受けたり、利用部門に対しても開発側に対しても、「それでは駄目だ」と軌道修正を促したりする。実際のプロジェクトの進行管理は、IT戦略委員会の事務局が担当するという構図です。

 なぜプロジェクトオーナー制を導入したかと言いますと、それまでのシステム開発プロジェクトでは、利用部門が最初に言いたい放題を言って、適当に要件をまとめ、後は情報子会社にお任せするということが少なくなかったのです。

日高 ある意味では、典型的なやり方ですよね。任せきりなのに、開発が終わってみると、利用部門は「こんなはずじゃなかった」と言ったりする。

志賀 それもあったし、利用部門が要件を途中で勝手にどんどん変えてしまうということもありました。そうすると、開発が終わってみるとコストが最初の予算の倍ぐらいになっていたとか、あるいは大幅な遅れが出たとか、そんなことばかりだったんです。これではいかんということで、プロジェクトオーナー制にたどりつきました。

日高 最後まで責任を取れと言っても、「何でコンピューターのことまで俺が面倒を見るんだ」とか「なんでそんなに金を使ってシステムを作るんだ」と言い出す人はいませんか。

志賀 そういう人はいませんね。システムのためのシステムを作るのではなく、何か新しい事業のためのIT投資をするわけですから。そこはきちんとみんな理解している。むしろオーナーだということで真剣になります。

 例えば2009年に動かす海外旅行の予約・発券システムがあります。プロジェクトオーナーは海外旅行パッケージを作っている会社の社長なんです。プロジェクトが始まる前に彼と議論をして「数十億円かかる」と言ったら、もう目の色を変えて徹底的にやりましたね。予算が大きかったこともありますが、やはり彼の中で、そのシステムを作らないとグループ全体の海外旅行パッケージ商品が立ち行かない、という問題意識が非常に強かった。だからシステムに対する姿勢は非常にシビアだったと思います。我々としては、もう少し緩くしてもいいのではないかと思ったぐらいでした(笑)。

日高 プロジェクトオーナー制のような仕組みが必要だと考えるようになったきっかけは何ですか。

志賀 8年ほど前になりますが、市場開発部門を担当していた時に、今の「i.JTB(アイドットジェイティービー)」というインターネット販売会社の前身になる、ウェブトラベル事業部を設置する準備をしていました。その時、私はシステムを利用する側にいたわけですが、システムを開発する情報子会社との間でなかなか収まりがつかなかった。情報子会社は、「メインフレーム回りの仕事で精いっぱいだから手を回せない。インターネットのことは勘弁してください」みたいな感じでしてね。

経営とITを一緒に見る

 要するに、利用部門と開発側を統括する機能が存在しなかった。これはちょっとまずいと思っていた。そういう経験がありましたので、佐々木(会長)から「CIOになれ」と言われた時に、システム開発プロジェクトではとにかく責任の所在をはっきりさせようと考えました。トップの問題意識も同じだったようです。システムに投資しているのだけれど、責任の所在がはっきりしない。さっきお話ししたように、結果を見ると完成が1年遅れたとか、投資額が予算よりも倍になりましたとか、そういう話が出てくる。いったいどうなっているんだと。だから、私に「経営企画とIT戦略を一緒に見ろ」という指示が下ったわけです。

 CIOと言われても、正直言って技術のことは私には分かりません。自分がやるべきことは、意思決定プロセスとプロジェクトの運営体制をきっちりと作ることだと思ったわけです。当社や情報子会社の技術者たちは優秀ですから、技術に関しては任せておけば安心だという気持ちがありました。

日高 とは言っても、技術上の決断をされているのではないですか。

志賀 IT戦略委員会にグループのプロジェクト案件がすべて上がってきます。そこでスタッフが議論をして、ボールを投げ返します。技術的にどのシステムがいいとか悪いとかは、私には言えません。私の立場としては、経営が向かおうとしている方向に照らし合わせて、そのシステムにどのような意味があるのかだけはしっかりと確認したいと思っています。

「IT経営問答」のバックナンバー

一覧

「意思決定プロセスとプロジェクト運営体制をきっちり作る」の著者

谷島 宣之

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BP総研

一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。1985年から日経コンピュータ記者。2009年1月から編集長。2015年から日経BP総研 上席研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

変化を受け入れやすい組織体質があればビジネス上の“地殻変動”が起きた際にも、他社に半歩先んじられる。

井上 礼之 ダイキン工業会長