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オトナグリコの衝撃~だったらキャンペーンサイトの役割は何なの?

  • 須田 伸

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2008年9月30日(火)

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 グリコの大人向けチョコレートのシリーズ「OTONA GLICO(オトナグリコ)」の新CMがネット上でたいへんな話題です。

 長年にわたって日曜午後6時半からオンエアされているアニメ「サザエさん」。この「サザエさん」のエンディングテーマがテレビから流れると、強制的に週末の終わりを実感させられ、翌日からまた始まる会社や学校のことを思い出して憂鬱になる、いわゆる「サザエさん症候群」なる言葉があるほどの「国民的アニメ」です。

 そんな国民的アニメの25年後の世界を実写化したのが今回のCMです。磯野家の兄妹、カツオを浅野忠信、ワカメを宮沢りえ、タラちゃんを瑛太、そして家族同様の付き合いのイクラちゃんを小栗旬が演じるという、国民的アニメにふさわしい豪華なキャスティングになっています。

CMクリエイティブの極致、そういっていい出来栄え

 「オトナグリコ」のテレビCMの素晴らしさはキャスティングの豪華さだけでなく、クリエイティブすべての完成度が極めて高いところにあります。

 CMはお坊さんが玄関を入るところから始まり、その次の斜め俯瞰から縁側を写したカットとあわせて、今日が法事の日であることを視聴者に教えてくれます。またお坊さんが玄関をくぐるカットでは、画面下手にランボルギーニっぽいスーパーカーが駐車されていて、不思議な違和感を醸し出しています。

 そして、隣家との塀の上では、白い猫が「ニャー」と鳴いています。CMのバックには、ピアノの静かな音色で、「お魚くわえたどら猫、おおっかけって」のあのサザエさんのオープニングテーマ曲が、ゆったりしたリズムのインストゥルメンタルで流れています。

 全体でも30秒というCMの短い秒数の中の、前半に登場するこれらの細かい「小道具」が、あとでしっかり意味を持ってきます。黒い服を着た宮沢りえが、お茶とお菓子(もちろんオトナグリコ)をのせたお盆を持って「二人とも、すごいひさしぶりじゃない?」と話しながら、畳の間に入ってきます。そしてテロップで「ワカメ34歳」と表示されます。ここで初めてこのCMを見る者は「えー、ワカメ、いつの間に!!美人になってる、というか、宮沢りえだし!!」と衝撃を覚えるわけですが、そこまでの丁寧なつくりこみで、このCMを見て裏切られることはないだろうと確信でき、安心感と共に、続きが見たい気持でいっぱいになります。

 すると瑛太が「昔は毎日、会ってたのになぁ」としみじみ振り返るところに、テロップで「タラちゃん 28歳」と入ります。「タラちゃん、まぁ、大きくなって!」と、近所のおばさん的な感情が高まってきたところで、カメラが切り替わるとタラちゃんの言葉にうなづいている「イクラちゃん26歳」は小栗旬!!

 「どこまで豪華なんだぁ」とひっくり返っていると「あ、カツオ兄さん!」というイクラちゃんの言葉(昔は「バブー」とか「ハイー」とかしか言えなかったのに!!)でカットが変わると、子供の時のままのようなロングTシャツとズボンに野球のバットを抱えたカツオ36歳(浅野忠信)が「こんにちは」と法事の列席者に挨拶しながら入ってきます。「老けただけで、やってること、子供のときのままかよ」とさらにひっくり返っていると、カツオがイクラちゃんに向かって「スーパーカー、駐禁、来てるぜ」と声をかけ「あ、ヤベエ」とイクラちゃんが答えます。「カツオは相変わらず野球なのに、イクラちゃんはスーパーカーかよ」と、もう腰が立たなくなるほど驚きます。

 カットが一瞬、家の外観のCMのオープニングと同じ構図のカットに戻って、丸ワイプの中に貼られた駐車禁止の違反ステッカーが表示されます。ふたたび画面が磯野家の居間に戻って、イクラちゃんが、カツオの「スーパーカー」という言葉に対して「今どき、そんな言い方しないけど」と照れくさそうに話します。タラちゃんが「あれ、イクラちゃんのなの?」とビックリしているのは、視聴者の気持ちを代弁する言葉でもあります。

「イクラちゃん、稼いでるんだねぇ。でも、どんな商売してるんだい? まさか悪いことしてるんじゃないのよね? リーマンブラザーズなんてことはないよね?ちゃんと働いて稼いだお金だよね。それにしても、大人になったんだねぇ」

 という感慨の気持を、ワカメのキョトンとした表情がやはり代弁してくれます。

 そこに「あ、大人になってる。」という文字がインサートされます。そして商品カットに続いて、玄関の表札の「いその」の文字がアップで入り、「ああ、やはり、磯野家なんだなぁ」と、しっかり視聴者に確信を抱かせます。ラストカットは、お坊さんの「それでは法事を始めさせていただきます」の声に、頭を下げる出席者一同で「いったいこれは誰の法事なんだろう?」というすごく大切な、でも知りたいような、知りたくないような、複雑な気持ちを持たせます。そこに再び「ニャー」と鳴く猫が登場して、その猫の横には「タマ(三代目)」という、ユーモアでありながら、生命のはかなさまで感じさせたところでCMは終わります。

 これは、もう、企画も大きくキャスティングも豪華ですが、実にすみずみまで計算された「作品」です。CMがひとつのアートとも言われることがあるのも、ごく稀にこのような大傑作があるからだと、思い知らされます。

 私は、このCMを繰り返し、繰り返し、何度も見ました。
 でも、テレビでは、まだ一度も見ていません。
 グリコのオフィシャルホームページで見たのか?
 違います。
 すべて、YouTubeでみました。

キャンペーンサイトは必要最低限

 このオトナグリコには、Webサイトもあります

 しかし、その構成は、商品説明以外は、テレビCMとポスターなどのグラフィック広告の紹介程度という「必要最低限構成」になっています。

コメント7

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