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バナナの次は何ですか?

  • 須田 伸

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2008年10月14日(火)

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 すこし落ち着きを取り戻したようですが、「バナナ・ダイエット」の大流行で、一時期、スーパーの店頭からバナナが消えるという大騒ぎになっていました。

 いつぞやの納豆であったり、かなり前のココアであったり、テレビから発信された「健康情報」によって、ある商品が爆発的に売れてしまい在庫がなくなってしまう、という現象はこれまでにも何度も繰り返されています。そのたびに「なにかひとつの食べ物だけで痩せるということはない」といった専門家からの冷静な指摘があるのですが、大きな流れを止めることはできていないように思います。

 テレビからは、食品以外にもさまざまな流行が生み出されていますが、とりわけ食べ物や健康情報に関して、テレビの持つインパクトにはすさまじいものがあります。それも何度でも繰り返す。体験から学ぶことがないようにすら思えます。

 ぼくも過去の自分の仕事のなかで、一度だけ「爆発」を痛烈に経験したことがあります。今回はそのときの体験をひもときながら、「なぜ食品や健康に関連した、爆発的な広がりが繰り返されるのか」を、考えてみたいと思います。

「ビールは鮮度で選ぶ」

 博報堂のCMプランナーだった時、4年目の制作局所属の社員がシャッフルされるという社内異動があり、所属しているチームが変わりました。新しいボスは、クリエイティブディレクターの小沢正光氏。現在、小沢さんの著書『プロフェッショナルプレゼン。』や『プロフェッショナルアイデア。』が書店の店頭に並んでいますが、当時から博報堂の中でも大きなクライアントの競合プレゼンテーションで高い勝率を誇るクリエイティブディレクターとしてその名前は業界中にとどろいていました。

 そんな小沢さんの下で、ぼくは大手ビールメーカーの仕事を担当しました。その際に、小沢さんから指示されたコンセプトは「ビールは鮮度で選ぶ」というものでした。最初にその指示を聞いて「では次回の打ち合わせまでに、そのコンセプトを、表現ワードに書き換えてきます」と言ったことをおぼえています。すると小沢さんは「言い換える必要などない。このままのメッセージで、下手なクリエイティブの言いかえなどせずに、映像言語で鮮度を表現して、あとは圧倒的なオンエア量で、日本人のビール選びの基準を変えるのだ」と、断言しました。

 正直「ほんとにそんなことが出来るのかなぁ」と思いながらも、新鮮なエビや鯛が飛び跳ねたり、牛肉がジュージューと音をたてながら焼かれるカットに、黄金色のビールの液体がグラスに注がれていくさまをハイスピードカメラで撮影したスローモーションの映像をはさみこみ、「ビールは鮮度で選ぶ」というCMをつくりました。そのCMは大量にオンエアされました。

 結果、その商品は、たしかに売れました。しかし、その事実だけでは、「鮮度が日本人のビール選びの基準になった」とは言えないでしょう。

 実際、数々のテレビCMを博報堂時代につくりましたが、「CMだけで消費者に態度変容がおきて、購買につながった」と断言できるケースはありませんでした。当然、そこにはテレビCM以外にも、さまざまなマーケティング活動や営業マンの努力などもあるわけで、「CMがよかったから売れた」というのは、CM屋の傲慢ではないか、と当時から感じていました。

 しかし、このビールのキャンペーンの時だけは「自分がつくったCMが効いた」と強く実感することができました。それは、その商品が売れたからではありません。

 まったく競合商品としてなど意識していなかった輸入ビール、ハイネケンやカールスバーグ、バドワイザーといったビールの売上が激減したのです。繰り返しますが、それはその時のマーケティング活動の目標として設定していたものとは違った現象であり、副産物というか、そうしたビールにしてみれば副作用といってもいいものでした。

 「ビールは鮮度が大事」と刷り込まれた消費者は、遠く海を渡ってきたイメージある輸入ビールを敬遠するようになったのです。この時ほど、テレビCMの力を自分自身がたずさわった形で実感させられたことはありません。

 社内を歩いていて、そうした輸入ビールを担当している同僚社員から恨めしげに睨まれたこともよく覚えています。

テレビの「同時性」発信力はいまだに強い

 こうしたテレビの効果は、その「同時発信力」にあると思います。いわゆるキー局は、NHKを含めても6チャンネルしかない中で、「これがいいですよ」というメッセージを同時に受け取る人の数は、他のあらゆるメディアの比ではありません。「下手なクリエイティブなどに逃げずに、真正面から言い切り、あとは圧倒的なオンエア量で刷り込む」という戦略を押し通した小沢さんは、マス広告キャンペーンのある真実を教えてくれたと思います。

 しかし、ぼくがそのビールのCMをつくったのは10年以上も前です。

 今はインターネットの台頭もあって、テレビの影響力が落ちたのではないか、という声も聞きます。たしかに10年前とは違った状況になっていることは間違いないでしょう。しかし、その影響力の大きさは今でも、強大です。ヤフーやグーグルが発表している検索ワードの急上昇ランキングや、kizasiといったサイトなどを見ても、多くのユーザーが、テレビを見て、そこで気になった話題をネット上で調べたり、話題にしていることがわかります。大量の人に一時にリーチするメディアとしてのテレビの伝達力はいまだにすさまじいものがあります。皮肉なことに、それをインターネットがデータとして裏づけを取ってくれています。

 ビールに話を戻します。

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