「宮田秀明の「経営の設計学」」

今こそ、おおらかな気持ちが必要な時

小事にこだわり、大事を看過するのは日本人の大きな欠点

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2008年10月17日(金)

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 世界経済がとんでもない方向に進むにつれ、イタリア人たちも悲観しているのだろうかとふと考えた(関連記事:焼き鳥屋で語る金融恐慌「アングロサクソンのモデルに賞味期限は来たか?」)。

 イタリア人にはかなりいい加減なところがある。22年前に2週間半ほど滞在した時、様々な経験をした。まず私の勤務先の国立研究所の研究棟は新築されたばかりだったが、エレベーターはまだ動いていなかった。だから私も研究員も毎日階段を使っていた。

 講堂も建設中だった。私に対する講師謝礼の約20%の追加分は結局振り込まれなかった。銀行口座を伝えた時に、たぶんそうだろうなと思ったら、やはりそうだった。ローマから日本に送られてきたJALのエコノミーの往復切符の素性も怪しかった。帰国が近づいて日本航空(JAL)に再確認を頼んだら、こう言われた。

 「どこでこんな切符を手に入れたんですか? 乗れるようにしておきますが…」

 だいたい、イタリアの国立研究所の所長が出した正式招請状が私の手元に届いたのは、その滞在が終わって帰国してから1週間も経ってからだった。

 イタリアでは、日本では考えられないことが横行している。遊ぶのも大好きだ。7月と8月はバケーションでほとんど仕事をしない。それなのに1人当たり国民所得は日本の80%ぐらいを確保している。

 先にいくつか挙げたイタリアの事例は、日本では考えられないことだ。しかし、私たち日本人も、ミスとかいい加減さに対する考え方を少し変えた方がいいのかもしれないと思う。

小さなミスに敏感に反応しすぎて、大きなミスを看過していないか

 勤勉で緻密な性格は日本人の優れた特質だが、小さなミスを責め立てる一方で、大きなミスに対しては“仕方ない”とあきらめてしまうことも多い。小事にこだわり、大事を見過ごしたり大切にしなかったり諦めたりするのは日本人の大きな欠点のように思う。

 6年前のみずほ銀行の3行統合の時、システム障害が全国的な話題になった。今年は三菱東京UFJ銀行だ。システム障害が発生しても、結局最終的な損害はそう大きくないはずなのに、ミスやシステムのバグが発生すると非難が集中する。1円のミスも許されない世界だから、やむを得ない面もあるが、敏感過ぎはしないだろうか(関連記事:谷島宣之の経営の常識「トレードオフの概念は日本に無いのか」)。

 システムやプログラムのバグを完全になくすことは非常に難しい。不可能と言ってもいいくらいだ。だから、実害が小さいのなら、修復できるのなら、そんなに責め立てるのはやめた方がいいと思う。

 金融の世界では、決済の世界におけるミスやバグは致命的と思われているので、それを起こさないために膨大な資源が投入されている。これが社会にとって大変非効率な投資かもしれないのだ。

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著者プロフィール

宮田 秀明 (みやた ひであき)

宮田 秀明

1948年生まれ。1972年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士修了。同年石川島播磨重工業(現IHI)に入社、77年に東京大学に移り、94年より同大教授。専門は船舶工学、計算流体力学、システムデザイン、技術マネジメント、経営システム工学。世界最高峰のヨットレース「アメリカズ・カップ」の日本チーム「ニッポンチャレンジ」でテクニカルディレクターを務めた。著書に『アメリカズ・カップ―レーシングヨットの先端技術―』(岩波科学ライブラリー)、『プロジェクトマネジメントで克つ!』『理系の経営学』(日経BP社)など



このコラムについて

宮田秀明の「経営の設計学」

経営には「論理」が必要である。論理を積み重ねた理系思考がイノベーションを育む。技術力を最大限に生かし、プロジェクトをまとめ上げ、新しいビジネスを創造する。「理系の経営学」を提唱する東京大学の宮田秀明教授が理系の視点による経営の要諦を語る。

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