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CO2ゼロ交通にシフトする都市と北欧自転車デザイン(前編)

  • 若井 浩子

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2008年10月29日(水)

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 「そこは自転車道だから危ないわよ」。

 フィンランド、ヘルシンキ市内。キアズマ(現代美術館)からホテルへの帰り道、地図をぐるぐる回しながら現在地の確認に躍起になっていると背後から女性が声を掛けてくれた。慌てて一歩下がった目の前を、自転車がものすごいスピードで走り過ぎていく。

 その通りは自動車道が片側一車線ずつで中央に路面電車の線路のある、ごく典型的な中規模の街路。石畳の歩道の車道側がアスファルト敷きの自転車専用道路になっている。

ヘルシンキの中規模の街路。歩道、自転車道、車道、トラムの線路の棲み分けがなされている。

ヘルシンキの中規模の街路。歩道、自転車道、車道、トラムの線路の棲み分けがなされている。

 当たり前だが、自転車道にボンヤリ立っている人などいない。人、自転車、自動車、路面電車──棲み分けがはっきりしている。駐停車している自動車も車道の端に止めていて、自転車道に乗り上げるようなことはしていない。

 ここ数年、こうした自転車専用道路の整備拡充はヨーロッパ、とりわけ北欧諸都市では都市計画の最重要課題になっている。デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、それぞれ進捗状況に差こそあれ、自転車道拡充政策は市民、行政、産業の基本合意のもとに着々と進められている。

 日本と比較しても人口の少ない北欧の都市(*1)は、交通全体の規模的にも地形的(起伏が少ない)にも冬季以外は自転車走行に適した条件が揃っている。また、コペンハーゲンでは1960年代初頭でさえ舗装された通りならば自転車道があるのが普通だったらしい。

 「だから、行政がどうやって自動車交通と折り合いをつけて自転車道の整備を始めたかと聞かれても答えようがないんですよね。50年前は普通の人は自家用車など持っていませんでしたから自転車は重要な交通手段でしたし、集合住宅の地下階に駐輪場があるのは当たり前のことでしたよ」(デンマーク大使館参事官 ベンツ・リンドブラッド氏)。

(*1)人口約520万人のフィンランドの首都ヘルシンキは人口約56万人。人口約910万人のスウェーデンの首都ストックホルムは人口約191万人。人口約467万人のノルウェーの首都オスロは人口約117万人。人口約544万人のデンマークの首都コペンハーゲンは人口約183万人。

日本が支払い続ける“自動車の社会的費用”

 自動車の大量生産はたんに自動車産業だけでなく、鉄鋼、銅などの金属資源をはじめとして石油、電力を大量に消費する。このような基礎資源、エネルギー資源を生産するための大量の資本と労働とが投入され、自動車産業から発生する需要を前提としてこれらの産業で多くの企業の存続が可能になってきた。(中略)

 すべての生産活動が利潤動機にもとづいて計画され、消費もまた私的な利潤のみを追っておこなわれるような分権的市場経済制度は、もともと内在的な不安定性をもつ。(『自動車の社会的費用』宇沢弘文著 岩波新書)

 宇沢弘文氏が1970年前後に執筆した論文を編集した『自動車の社会的費用』が出版されたのは1974年。社会が物理的にも文化的にも“自動車(産業)”という価値基準に組み込まれていく危険性を分析した本だ。現在も30刷を超えて読まれ続けている。

 現在、複雑化した世界情勢の中でかつてとは別次元のオイルショック状態にあって、本の内容は少しも古びていない。それどころか“万人の共有資産であるべきインフラ”についての考え方は、現状が空しくなるほどに革新的だ。

 日本は化石燃料依存型社会と自動車偏重型社会から少しもベクトルをずらすことなくここまで来てしまい、あらためて同根の問題に直面していることが分かる。

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