まず、図1をご覧いただきたい。これは人類の歴史が始まる前に遡って、「富」がどのように増えてきたかを示したものである。「富」の定義は様々なので、この図では1人当たりのGDP(国内総生産)で示しているが、19世紀の後半から急速な立ち上がりを見せ、20世紀になると爆発的に高まっているのが分かる。

図1
これはいったい、何を意味するのだろうか? なぜこのような富の爆発が可能になったのだろうか?
考えられる答えの1つは、産業革命である。それまでは人力・家畜の力・風力などの自然エネルギーを動力に使っていた人類が、内燃機関を発明することで化石燃料をエネルギー源に使うことを覚えた。これによって財やサービスの生産能力が飛躍的に向上した。産業革命は18世紀後半に英国で始まったが、19世紀後半には世界に拡大し20世紀には世界中で化石燃料を膨大に消費する生産活動が行われてきた。
しかし、本当に産業革命だけがこうした「富」の爆発を起こした原因だろうか? 産業革命だけが理由にしては、20世紀後半以降の急カーブは説明できないのではないだろうか。実は、図1が示す曲線と同様に、20世紀後半になって益々爆発的に増加しているものがある。それは、人類が取り扱うデータの量である。
情報処理の単純モデルと経済行為
情報処理のメカニズムはシンプルに模式化すると、インプット、プロセス、アウトプットの3要素に帰着する。すなわちインプットとしてのデータがあり、これを何らかのプロセスで加工し、アウトプットとしてのデータを作る、となる。そして、アウトプットのデータは別の加工のインプットとなったり、あるいはプロセスの変更に使われる。情報処理というと複雑なように思われるが、突き詰めて考えると、こうした極めてシンプルなモデルに還元することができる。
では、こうした情報処理の営みを経済行為とつなげて考えてみるとどうなるであろうか? 経済行為とは、何らかの財やサービスが生産され、そして消費されることを意味する。上記の情報処理とつなげてみると、アウトプットとなったデータに基づいて、誰かが何らかの財・サービスの生産活動を行うことになる。そして、生産された財・サービスは誰かに消費される。人気がある財・サービスは多く消費されるし、人気のない財・サービスは見向きもされずに無駄として廃棄されることになる。
これを分かりやすい言葉で書くと、工夫・アイデア(アウトプットとしてのデータ)に基づいて誰かが生産活動を行い、それを使ったユーザーが「これはいい」と評判になればその財・サービスは多く使われ(従って生産され)、「これはいらない」ということであれば、その財・サービスは市場の中で淘汰されることになる。
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