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続・戦前の建築が残り、戦後の建築が消えていく、という不条理

“アンチ・モダン建築派”コメントに学ぶべき点多し

2008年11月13日(木)

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 「昭和モダン建築巡礼 ビジネスマン必見編」も最終回を迎える。今回は、これまでの連載記事にお寄せいただいた意見や質問に答えつつ、連載初回に掲げた「戦前の建物は大切にされるのに、なぜ戦後の建物はあっさり壊されてしまうのか?」という問いについて改めて考えてみたい。

イラスト

 正直なところ、連載初回の記事に寄せられたコメントの多さにびっくりした。そして、その内容に戸惑い、この連載を続けてよいものか、頭を抱えた。

 筆者はこのコラムを書く前まで、一般の人の大半は、戦後のモダニズム建築に全く関心がない、と思っていた。つまり、“無関心派”。だから、戦後に建設された、まだまだ使える建物がどんどん壊されていく現状を気にも留めない。関心がないならば、今後、関心を持ってもらえるようになれば、少しは状況が変わるかもしれない──そう楽観的に考えていた。

NBonlneの読者の「鋭さ」には恐れ入りました

 しかし、連載初回のコメントを見て、考えを改めざるを得なかった。一般の人も、戦後建築に関心がないわけではない。それは初回の記事を読んでくれた人の数や、コメントの数を見れば明らかだ。そして、もうひとつ予想外だったのは、「自分はモダニズム建築が好きではない」あるいは「嫌いだ」とはっきり意識している“アンチ・モダン建築派”が、筆者の想像以上に多かったことだ。

 例えば、こんな声──。

 「いずれにしても主観なのですが、戦後建築で取り壊される例が多いのは、飽きがくるデザインが多いということなのではないでしょうか。言い換えると、普遍性がなく、斬新さが芸術性の域に達していないということだと思います。奇をてらったり、一時期の受けを狙ったようなデザインでは飽きられても当然かと」

 「戦前の建築に対して好意的な目が多いのは、それが様式美もさることながら『見て安らぐ』情緒的な何かを持っているからではないでしょうか? ひるがえって戦後の機能美やデザインの先進性を競った建築物は、建築家の支持は得られても利用する側、眺める側から見たら『落ち着かない』のでは? (中略)こういった建物は戦後の数十年という歴史的な価値の相対的な軽さもあり、より機能的な建物に取って代わられる運命にあるのではないだろうか?」

 鋭い。普段から考えていたのか、このコラムを読んで考えたのかは分からないが、どちらにしてもかなり的確に、戦前・戦後の建物の違いを言い当てている。

 戦後のモダニズム建築は、その時代その時代の最先端の工法、表現方法を追うあまり、短期的な“流行”と受け取られかねないデザインが多くなってしまった。その結果、戦前の建物と比較した時に、「飽きがくる」「落ち着かない」「軽い」といった印象を一般の人に抱かせることになった。

 数多く寄せられたコメントの中で、筆者が一番「痛い」と感じたのはこのコメントだ。

 「この手のモダン建築が、はっきり言って大嫌いです。理由は、私の職業にあります。舞台照明の自営業です。仕事場は、市民会館、県民会館、文化ホール、何とか記念体育館ホール等、実に、このモダン建築が多かった。見てくれだけ良くて、作りはペケペケ、使い勝手最悪。極端に柱が少ない、巨大な空間で、欧米の伝統ある劇場を手本にすれば、べらぼうな金額がかかる。この手のデザイナーの出番だったのでしょう。このコラムも、『庭園にマッチするデザイン』とか、見てくれだけの評価で、機能のことは何も言及されていない。日本のホールは、機能を含めて良くなってきたのは、ここ12年前ぐらいからです。早くなくなってもらいたいというのが、本音です」。

利用者や運営者の視点を第一に考えるようになったのは、バブル崩壊以降か

 モダニズムは「機能主義」や「合理主義」と訳されることが多い。19世紀以前の様式主義的な建築から脱却し、機能重視の合理的なデザインを目指そうとしたのがモダニズム建築の出発点であるわけだが、冷静に振り返ってみると、その「合理性」はほとんどの場合、建物をつくる段階での合理性である。1950~70年代の日本のモダニズム建築で、使い手から見た「合理性」をデザインの核にしたものは少ない。この方のご指摘のように、シンプルな大空間であるがために、運営上はかえって使いにくい、というケースもままある。

 これはあくまで筆者の印象だが、日本の建築設計者たちが、利用者や運営者の視点を第一に考えて設計するようになったのは、バブル崩壊以降ではないか。それは、この方の「日本のホールは、機能を含めて良くなってきたのは、ここ12年前ぐらい」という指摘とも一致する。それ以前は、多くの場合、「いかにつくるか」が最優先事項だったように思う。こうした辛口の指摘は、建築関係者の1人として胸に刻んでおきたい。

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「続・戦前の建築が残り、戦後の建築が消えていく、という不条理」の著者

宮沢 洋

宮沢 洋(みやざわ・ひろし)

日経アーキテクチュア副編集長

1967年東京生まれ。1990年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日経BP社入社。日経アーキテクチュア編集部に配属。以来、建築一筋。現在は日経アーキテクチュアにて「建築巡礼/プレモダン編」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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