「牧野茂雄の「深読み自動車マーケット」」

ビッグスリーが儲けてきた理由

クルマから読む企業価値(1)

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2008年12月5日(金)

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 米国のビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)が倒産を回避できるかどうかは、米国政府の支援策にかかっている。危機的な状況にあるのはビッグスリーだけではない。北米依存度が高い日本の自動車メーカーも状況は厳しい。欧州市場も金融危機のあおりを食らっている。「20世紀の恋人」と言われた自動車を取り巻く環境は、今年、激変した。

 しかし、自動車の生産が世界中でストップしたわけではない。今日も自動車工場では数多くのモデルが生産され、出荷されている。需要減退とは言え、おそらく来年も5000万台以上が出荷されるだろう。世の中は、文明の利器である自動車を少なからず必要としている。

 本コラムでは数回にわたり、自動車という商品から現在の自動車産業界を点検してみようと思う。経営や経済だけではなく、自動車メーカーと消費者をつなぐ商品という視点でとらえていく。

車種別販売台数の全米1位と2位はピックアップトラック(PUT)

 米国で最も売れているクルマは、フォードの「Fシリーズ」と呼ばれるピックアップトラック(以下PUT)だ。2007年の販売実績は69万台。様々なバリエーションを持つモデルだが、車名別販売台数でここ二十数年間トップを守ってきた。2位はGMのシボレー・ブランドから販売されているPUT「シルバラード」で、2007年実績は63万6000台。この2台が双璧である。


「シボレー・シルバラード」。HD(ヘビーデューティー)仕様は6000ccエンジンを積む。ボートやキャンピングカーをけん引するには、廉価仕様に積んでいる5300ccエンジンではパワー不足らしい

 1モデルでこれだけの数を量産するのだから利益率は高い。しかも、それぞれプラットフォーム(車両の基本骨格)及びエンジン・変速機などの主要コンポーネンツを共用するPUTやSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル=商用車ではない乗用車タイプの大容積ワゴン)がある。兄弟商品を合計すると年産100万台に達する。GMとフォードの稼ぎ頭は、こうした大排気量V8エンジンを積むPUTとSUVである。

 PUTは、ラダー(はしご)型をした丈夫なフレームに、エンジン・変速機とサスペンション、ステアリング機構などを取り付けてある。走行機能はフレームに集中していて、その上にボディが載る。トラックの荷台を取り付ければPUTになり、2〜3列シートを備えた大きなキャビン(車室)を載せればSUVになる。もっと大きな居住空間となる箱を載せればミニバンになる。

 ちなみに米国では、PUTだけでなくSUVとミニバンもライト(軽量)トラックに分類されるが、その理由はこうした生い立ちにある。同じフレームでブレッド&バター(生活必需品)的な商品から付加価値の高いぜいたく商品までカバーできる点が特徴だ。

 たとえばGM。V型8気筒5300ccエンジンを積む「シルバラード」の廉価モデルは約1万8000ドルである。外観はただのトラックだ。しかし、豪華な内装のキャビンを載せたシボレー「タホ」は3万5000ドル以上で販売される。同じエンジンを積むキャデラック・ブランドのSUV「エスカレード」に至っては5万3000ドル。素材はほぼ同じで、多少の手間をかければ、料理の値段を3倍にできるわけだ。

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著者プロフィール

牧野 茂雄(まきの・しげお)

牧野 茂雄

1958年東京生まれ。日本大学芸術学部卒。日刊自動車新聞社記者、三栄書房編集顧問、同社刊『ニューモデルマガジンX』編集長を経てフリーに。自動車専門誌および国内外経済誌への執筆のほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動中



このコラムについて

牧野茂雄の「深読み自動車マーケット」

新聞記者、自動車雑誌の編集長、フリージャーナリストとして自動車業界を見続けてきた牧野茂雄氏が、自動車業界やマーケットの動向、メーカーの商品戦略などを、表から裏からお伝えするコラムです。メーカーの拙いプレーには叱責を、ファインプレーには拍手を送り、自動車業界を全力で応援します。

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