「牧野茂雄の「深読み自動車マーケット」」

ビッグスリーが輝きを失った理由

クルマから読む企業価値(2)

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2008年12月26日(金)

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 ビッグスリーの栄光が過去のものとなろうとしている。

 だが、自動車が姿形を変えながら生き続ける「流行商品」であることが忘れられていないだろうか。ビッグスリーが輝きを失ったのは、もちろん会社の体質にもよるが、そのクルマが多数の消費者の心をとらえることができず、売れなくなったからにほかならない。

 前回は「ビッグスリーが儲けてきた理由」をお伝えしたが、今回は、特にセダン分野で日本メーカーが進出してから、ビッグスリーの栄光が失われていく過程を深く見つめてみたい。

 かつてのフォードは、米国のセダン市場に「トーラス」「セーブル」の兄弟車を持ち、これが飛ぶように売れた。ピックアップトラック(PUT)のベストセラーである「Fシリーズ」を擁し、そのうえでセダン系が売れていたのだから利益が出ないはずがない。

フォード・トーラス

1986年モデルとして発売された初代「フォード・トーラス」。欧州フォードが進めていた空気抵抗低減のデザイン手法が採用され、瞬く間にベストセラーとなった。この時期のフォードは空力(エアロダイナミクス)研究で世界をリードしていた

 1985年に発売された「トーラス」「セーブル」のおかげで、フォードは86年からの3年間、連続して純利益でGMを上回った。しかし、2代目、3代目とモデルチェンジを重ねるごとに「トーラス」「セーブル」の人気は落ち目になり、やがてモデル廃止に追い込まれる。この、足元市場でのセダン不振こそ「ビッグスリーの大失態」だった。

米セダン市場席巻を狙う日本メーカーが「トーラス」「セーブル」を徹底研究

 80年代後半、日本の自動車メーカーは「トーラス」「セーブル」を徹底的に研究した。90年代にはアッパーミドルと呼ばれる2万ドル台のセダン市場でトヨタ「カムリ」、日産「マキシマ」、ホンダ「アコード」の3モデルが大成功を収める。その理由の1つには「トーラス」「セーブル」への対抗策と差別化案を真剣に考えたことが挙げられる。

 ビッグスリーが苦手としていたサブコンパクト(コンパクトよりもボディーが小さいクラス)市場はトヨタ「カローラ」やホンダ「シビック」がすでに席巻していたが、日本勢はその勢いをアッパーミドルにまで拡大する。ビッグスリーのセダンに取って代わり、ユーザーに支持されたのは日本ブランドだった。

 それでも、フォードは90年代に入ってからも「トーラス」「セーブル」で利益を得ていた。ところがGMのセダン系モデルは、ことごとく失敗する。ビュイック「センチュリー」やオールズモビル「カトラス」は、内外装デザインを変えただけで10年以上も中身はあまり変わらず、そこが消費者に見透かされて販売はジリ貧。やっと90年代後期に「起死回生」と鳴り物入りで新型を投入するが、もはや出番はなかった。

大きくてカッコいいアメリカン・セダンがウケない

 2000年暮れにGMは「オールズモビル・ブランド」の廃止を発表した。かつて1960年代、日本人が憧れた、大きくてカッコいいアメリカン・セダンが、もはや市場を失ったことを意味するブランド消滅だった。

 実業家W.C.デュラントが04年にビュイック・モーターを買収し、その持ち株会社として設立されたゼネラル・モーターズ・カンパニーは、オールズ・モーター、キャデラック・オートなどを相次いで買収、08年に現在の姿のGMは生まれた。買収後にいくつかのブランド名が消えたが、いすゞ、スズキ、トヨタの3社に商品のOEM提供を依頼して89年に立ち上げたGEO(ジオ)が97年にシボレーとブランド統合されたのに続き、購入者の平均年齢が50歳に近付いてきたオールズモビルの廃止が決まった。

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著者プロフィール

牧野 茂雄(まきの・しげお)

牧野 茂雄

1958年東京生まれ。日本大学芸術学部卒。日刊自動車新聞社記者、三栄書房編集顧問、同社刊『ニューモデルマガジンX』編集長を経てフリーに。自動車専門誌および国内外経済誌への執筆のほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動中



このコラムについて

牧野茂雄の「深読み自動車マーケット」

新聞記者、自動車雑誌の編集長、フリージャーナリストとして自動車業界を見続けてきた牧野茂雄氏が、自動車業界やマーケットの動向、メーカーの商品戦略などを、表から裏からお伝えするコラムです。メーカーの拙いプレーには叱責を、ファインプレーには拍手を送り、自動車業界を全力で応援します。

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