「澁谷征教の「日米住宅漂流記」」

澁谷征教の「日米住宅漂流記」

2009年1月8日(木)

日本の住宅ローンは世界から見れば変則です

投資せずに貯蓄に走る国民性の根本原因がこれ

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 前回の記事「日本の今の住宅は、80年前の米国に及ばない」では、私が想像していた以上に反響があり、正直驚きました。コメントをお寄せいただいたおかげで、日経ビジネス オンライン読者の関心分野を少しは理解できたかと思いますので、今後もできるだけ、皆さんの疑問に答えるような形で、コラムをお届けしていきたいと思っています。

 さて今回は、前回の最後で触れた「住宅ローンの日米の差異」について話を進めてまいります。

 日本の新築住宅の多くは、購入した途端に、その価格価値が1割も2割も下がってしまいます。生涯賃金の数割もの巨額の長期ローンを組んで思い切って購入したのに、なぜそんなことになるのか、納得いかない方も多いはずです。これは、日本の住宅ローンや住宅価格の決め方が、世界から見れば特異で変則的な仕組みとなっている点が大きく影響しています。

長期の住宅ローン誕生は世界大恐慌の後

 そもそも、「長期の住宅ローン」がいつ“策定”されたかご存じでしょうか。

 これも実は、1929年の世界大恐慌の後に端を発しています。33年に就任したフランクリン・ルーズベルト米大統領によるニューディール政策により、それまで5年の延べ払いだった住宅ローンが、20年の延べ払いに大幅に拡大されたのが、事実上の「長期ローン」の誕生でしょう。このおかげで、多くの人が住宅を所有しやすくなりました。これは当時としては画期的な住宅行政として評価されるとともに、ニューディールの要であり、米国らしいダイナミックな改革でした。

 世界大恐慌の際、それまで年間60万戸以上建設されていた住宅の戸数は、1932年にはわずか9万戸まで落ち込んでいたので(最近の数値では年率62.5万戸)、このような行政が行われました。もっとも、これほどの大胆な住宅復興政策が実現しても、住宅建設の完全な回復までにさらに10年近い年月を要したことから、世界大恐慌の最も手痛い打撃を被ったのが、不動産・建設業であったことが分かります。

 ニューディール政策での「20年住宅ローン」の融資条件の根底をなすのが、まさに初回のコラムでご紹介した、1928年に開発に着手していた「ラドバーン」地区の開発条件でした。


「20年住宅ローン」が初めて適用されたとされる、米国ニュージャージー州の「ラドバーン地区」

借り主の責任が限定されるノンリコースローン

 ここで大事なのは、新しい融資条件がノンリコース(借主責任限定型)であった点です。ここが、米国と日本の住宅ローンの仕組みで昔も今も最も大きな違いであると言っていいでしょう。

 私が1994年、米国のハワイ州、ホノルルの郊外にある中産階級向け住宅地の家をローンで購入した時に、銀行からは勧められましたが知人には「生命保険に入る必要はないよ」と言われました。その時は何のことか理解できなかったのですが、それがまさにノンリコースを意味していたのでした。もっともこの時点では、プライムローン(信用力高い個人向け住宅融資)のみで、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)という仕組みはありませんでした。

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著者プロフィール

澁谷 征教(しぶや・ゆきのり)

澁谷 征教

 住宅地の企画開発プランナー。世界基準に基づきエポックメイキングな街並みを創造する日本の第一人者。
 国内で最も米国型住宅の実績の多いプライドホームの顧問、「住宅生産性研究会」理事。
 また、 住宅開発総合企画と建築デザインを行う、珍しいタイプのデザイン事務所、ハワイと日本に本部を置く「デザインコンセプト インク」の日本代表を兼ねる。
 代表的な開発例は、南ヨーロッパの城郭都市のような景観を実現し、資産価値が高まる街として知られる「南町田マークスプリングス」(横浜市瀬谷区)。
 1972年、ミキヤ創業。お台場13号地のレストラン・ショッピングモールの企画、新宿高層ホテルのインテリア・デザインの設計等、大規模開発の企画を受注。
1995年〜2004年、分譲住宅の設計企画及び集合住宅の設計企画を主たる業務とする。
1998年、ホノルルにデザイン室を開設。2004年プライドホーム顧問、ラウリマデザインスタジオ・デザイン室主幹、住宅生産性研究会では常任の講師を務める。
埼玉県不動産鑑定士協会研修会、国土交通省国土交通大学校専門課程住宅行政研修などで講師の経験あり。著書に「マークスプリングス物語」(井上書店)がある


このコラムについて

澁谷征教の「日米住宅漂流記」

「日本の住宅を、何とかしてより良いものにしたい」。米国と日本の住宅制度や開発設計を熟知する著者が、未来の日本の住宅論を展開する。金融関係者やデベロッパーではなく、住宅地計画者・プランナー・建築専門家という立場から、日本のあるべき住宅の方向性を示す

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