このコラムも、新年が明けまして3年目となりました。皆様には長らくのご愛読ありがとうございます。
新年号なのである意味「書き初め」というわけですが、お習字の上達には、「目習い、手習い、指習い」という三原則があるそうです。目習いとは名作を観て学ぶこと。手習いとは筆を手に取り書いてみること、そして指習いとはお手本を指でなぞって学ぶことです。お習字のみならず、お稽古事、芸事というのはとにかく型から入る、あれこれ理屈を考えずに模倣することを大事にしますね。「習うより慣れよ」とか「教わるのでなく盗め」とも言われます。
それに対して近代科学的なアプローチの学習では、整理・体系化したうえで、ノウハウのように方程式化した型で理解しようとします。お習字でも、ここをこれくらいの角度ではねるとバランスよく見えるとか、そこを少しカスレ気味にするとカッコイイとか、ハウツーにしてもらうと確かに目に見えて上達した気分になります。試験のように特定の出題者が考えた課題があって、そこに何らかの採点基準が設けられている場合には、このような「傾向と対策」という手法は大変効果的です。
「傾向と対策」があれば何でも上達は簡単か
運転免許から司法試験まで、人工のルールを運用するための資格検定試験の場合にはそれでもよいでしょう。基準を満たす知識を持ち合わせているかどうかを判定するのが目的のケースです。大学受験も百歩譲って仕方なしとしても、美術大学や芸術大学の入試で、実技部門にも傾向と対策があるという話になってくると何となく釈然としなくなります。
芸術の世界にも予備校と言うのがあって、そこでは講師陣が美大各校の出題傾向を日夜分析しています。どこそこ美大はデッサンにはクジャクバトやツルなど鳥系が多いとか、そろそろ今年はペンギンか、などと対策練習をやっていると聞きました。二科展や日展などにももしかしたら入選しやすい傾向があるのかもしれません。しかし芸術の本来目的である「観る人の心を打つ作品を作る」という原点に立ち戻ると、傾向と対策ができるということ自体が妙な感じです。そんなことができるくらいなら、ミリオンセラーとなる歌謡曲の楽譜や小説などがコンピューターでシミュレーションできるということになってしまいます。
1.5流の陸上選手だった私が気づいた上達ノウハウ
習い事の話に戻りますが、言われ続けてきた唯一のノウハウとは、長い時間と努力を重ねて、基本を身体に叩き込んだうえで、ようやく気づく自分らしさという部分こそが世に訴えるべきオリジナリティーだということなのです。様々な経営指標やIT(情報技術)システムを駆使したうえで、顧客や競合の分析をして、ひたすら傾向と対策を練る。生産効率、財務効率、販売効率を極限まで追求する。与えられたタスクでの実績が認められて、ついに社長にまで栄達した結果、「エーっと、次は何をベンチマークすればいいんだっけ?」となるかもしれません。
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