「諏訪暁彦の「オープン・イノベーションのすすめ」」

オープン・イノベーションで、開発予算節減と成果向上が両立できる

バックナンバー

2009年2月26日(木)

1/3ページ

印刷ページ

 景気後退という厳しい環境の中、企業のR&D(研究開発)部門は予算の節減と同時に、新たな成果を生み出すことが求められています。多くの企業はこのジレンマに直面していることでしょう。

 先行きが見えず、前例の通用しない今の事業環境において、多くの日本メーカーの社長や役員の方々は、まさにこの2〜3月に来期の開発費の予算案をどうすべきか、日々悩んでいます。研究開発の投資のあり方は、企業戦略に関わる重要な意思決定事項となります。

 では、開発予算を少なくせざるを得ない中で、どのように新しい研究開発を進めていけばいいのでしょう。その答えの1つが「オープン・イノベーション」です。これは、新たに人を雇って一から開発リスクを取るのではなく、外部の組織がリスクを取ってすでに開発した「役に立つ技術」を見つけて自社に取り込むことで、失敗を減らし開発スピードを加速する方法です。

「レーザー・レーサー」も、外部技術を“拝借”して誕生

 「匿名で技術ニーズを公開し、世界中の優れた技術を集めて取り込む」という新しい発想の研究開発を支援する仕事を私はしているため、大手メーカーの研究開発トップの方とよくお会いします。この3カ月間で40社以上の役員の方と会いましたが、最近は、「これまでの市場予測の常識が通じないため、キャッシュの流出を最小限に抑えるよう社長から指示が出ている。研究開発の投資をどこまで確保できるか、この時期になっても全く見えない」 といった声をよく耳にします。海外出張どころか県外出張すら制限する企業が出ている今の厳しい経営環境においては、売り上げと利益にすぐには直結しない研究開発費を先送りにしがちです。

 しかし一方で、現在、そして近い将来の競争に勝つための技術開発はこれまで以上に求められています。なぜなら、世界的に市場がほとんど成長していない中でも、特に上場企業は年4〜5%の成長をするためにライバルに打ち勝ち、市場シェアを伸ばすことを投資家から求められているからです。この4〜5%という売り上げ・利益の年成長率は、米国がゼロ金利政策を取っている現在でも3%を維持している米国の長期国債の金利を上回るリターンを上げるうえで求められる数字です。

 予算が削られる中、すぐに成果の出る目先の開発に資源を集中すると、将来の競争力を維持するための技術開発がもちろん止まってしまいます。リソース配分やテーマの見直しだけを行い、従来通りの自社内での研究開発の進め方を継続していては、求められる成果を上げ続けることは到底困難です。100年に1度とも言われる現在の危機を乗り越えるうえでは、イノベーションを生む仕組みである研究開発の進め方そのものにも投資対効果を高めるイノベーションが求められています。

 新しい研究開発手法により投資対効果を飛躍的に高めた革新的開発の好例が、北京五輪の競泳で生まれた25件の世界新記録のうち、実に23件において選手が着用した英スピード製の「レーザー・レーサー」です。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント2 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

諏訪 暁彦(すわ・あきひこ)

諏訪 暁彦米マサチューセッツ工科大学大学院 材料工学部修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン、日本総合研究所を経て、2006年に技術仲介・コンサルティング会社、ナインシグマ・ジャパンを設立し、代表取締役社長に就任。米NineSigma Inc.取締役を兼務。これまで国内50社以上の大手メーカーのオープン・イノベーションを支援してきた実績を持つ。



このコラムについて

諏訪暁彦の「オープン・イノベーションのすすめ」

競争に勝てる商品は欲しいが、「研究開発投資がなかなか成果に結びつかず、これ以上は費やせない」という悩みを持つ企業は少なくない。いくつかの企業は、開発の発想自体を変えた「オープン・イノベーション」という新たな戦略を導入し始めている。このスピードと効率重視のR&D戦略で成果を出し、成長を遂げている実例を紹介していく。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内