2007年9月にバンダイから発売された「∞(無限)プチプチ」は大きな話題を呼び(関連記事「あの病みつき商品の王者の神秘性」)、すでに250万個が販売されています。病みつきになるプチプチシートをヒントに設計された「手慰み」を存分に堪能できるマシンでしたが、その後も類似商品が開発され続けています。枝豆を押し出す「∞エダマメ」、お菓子箱の開封動作を模した「∞ペリペリ」などなど。エポック社からも「にゃウンド肉球」や「めくるめくバナナ」など、名前だけで図の浮かびそうなこの種族は地道に子孫を増やしています。
以前にも記しましたが、「∞プチプチ」のフォルムは携帯電話のテンキーのようでもあります。押しやすいとか疲れにくいテンキーというような人間工学の領域を超え、「用もないのに押したくなるスイッチ」を目指す設計思想というのは面白い切り口です。それは何らかの目的のための手段としてのスイッチではなく、操作すること自体が目的となっており、「指のお供」になろうとしています。
直感で生きる幼児の嗜好にモノづくりのヒントあり
プチプチシートのトップシェアメーカーである川上産業のプチプチ文化研究所、杉山彩香所長によると、生まれて初めてプチプチを手にする1歳半の赤ちゃんもいきなりプチプチするとのこと。それどころか種の壁を超え、猿でさえ同様にプチプチするというお話を以前伺いました。2歳程度の幼児と猿はちょうど同程度の知的レベルということらしいですが、この知られざる直感のみの幼児の世界には、複雑化し過ぎた電子機器類の「直感操作」が話題の昨今、何かヒントが潜んでいそうで興味をそそります。

ということで今回は乳幼児玩具業界の注目企業ピープルさんにモノづくりのヒントを探りたいと思います。お話は、商品企画部第一企画部部長の森本裕子さんとマーチャンダイジング部の栗原みどりさんに伺いました。そこは感性工学もひれ伏すような超絶の「動物的直感の“翻訳”」に挑む最先端でした。
隠れた優良企業ピープルの大ヒット作は「やりたい放題」
乳幼児玩具業界における同社の位置づけから説明しておきましょう。ピープルは1977年、文具メーカーのオートから独立した幼児玩具専門のファブレス企業です。70年代からすでに企画販売の専業というユニークなビジネスモデルをとり、社員7人でスタートしました。現在は従業員が37人ですが、売り上げ27億円は業界9位、経常利益率7.1%(2007年度)は業界トップという優秀な成績です。2位のサンリオ、3位のタカラトミーを抑えての第1位は立派です(出典:日本経済新聞社、NIKKEI2009何でもランキング)。

玩具市場と言うと天才クリエーターのひらめきとか、一発ホームラン狙いの企画センスが勝負の市場と思われがちですが、同社の思想は逆方向です。個々の社員の観察力や人間力の充実でロングセラー商品を粛々と確実に生み続けています。そのあたりもおいおい紹介していきましょう。
前置きが長くなりましたが、同社の代表的ロングセラー商品を紹介します。その名も「やりたい放題」。写真を見れば一目瞭然ですが、赤ちゃんがいじりたくなりそうな日用品がテンコ盛りに合体化した装置です。一見、適当に身の回り品を寄せて集めただけの工夫の無いおもちゃに映るかもしれませんが、そんな浅はかな代物ではありません。85年に初号機を上市して以来、数多くの類似品のチャレンジを受けては、そのたびに実力の差を見せつけて挑戦を退けてきた歴戦のつわものなのです。
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