「川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」」

商品力で海外メーカーに全く負ける気がしない

乳幼児玩具業界の異才ピープル、本能の世界を制覇(2)

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2009年3月30日(月)

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 「やりたい放題」というネーミングそのままの究極的な手慰み道具などを開発してロングセラーを連発する乳幼児玩具業界の雄ピープルにお話を伺いながら、前回の(「ロングセラーを連発するこの観察力を見習うべし」)に続いて、日本のモノづくりを考察していきたいと思います。

 大人界で注目の「みんなで鍛える全脳トレーニング(脳トレ)」や「∞(無限)プチプチ」などの設計思想が何年も前から開拓されてきたこの業界。「Wii」や「iPod」などで話題の直感操作も、当たり前のようにずっと以前からこなしてきており、ある意味ユーザー・インターフェースの最先端を開拓する業界でした。

赤ちゃんにとって、新聞の本質は「グシャグシャ感」

 前回紹介し切れなかった同社のヒット商品をもう1つ取り上げます。それは「赤ちゃん新聞」という商品です。

「なめても安心 赤ちゃん新聞」
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姉妹商品の「赤ちゃん専用チラシ」
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 ごく普通の新聞のようなデザインの布切れで、記載されている内容は同社の商品ラインアップの紹介やユーザーの投稿記事などです。表裏の布地が縫い合わされた袋構造になっていますが、ミソはその間にサンドイッチされたセロファン状の薄いプラスチックフィルムです。

 このフィルムのおかげで、触ると派手にグシャグシャ音が出て、手放すと元の形に戻ります。赤ちゃんは新聞やチラシのグシャグシャが大好きです。本能的な握り締めたいという衝動に加えて、お父さんが難しそうな表情で開いてはめくっている姿を見て真似してみたいと思う興味津々の日用品なのです。「まず手に取る→くしゃくしゃにする→口に入れて味わう→口の周り真っ黒」という事件はどこの家庭でも経験があるでしょう。

 赤ちゃん新聞を手にしてみて、改めて同社の恐るべき観察力と機能の紡ぎ出し力に感心いたしました。我々大人は、新聞の提供すべき機能を「知りたい情報を伝えるもの」だと枯れた感覚で捉えがちです。しかし感性と直感だけで生きている生き物、赤ちゃんにとっては、新聞の本質はめくる時のグシャグシャ感だと言っています。

 確かに「朝の食卓で新聞を広げるお父さん」という構図には仕事前の儀式という部分もあります。その儀式は、まず1面を読んでから、3面に進むというような各自の式次第がメインですが、同時にほのかなインクの香りや、めくる時の音、パシンッと皺を広げ直す感触などもデフォルトで含まれていました。

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著者プロフィール

川口盛之助
(かわぐち・もりのすけ)

川口盛之助

慶応義塾大学工学部卒、米イリノイ大学理学部修士課程修了。日立製作所で材料や部品、生産技術などの開発に携わった後、KRIを経て、アーサー・D・リトル(ADL Japan)に参画。現在は、同社プリンシパル。世界の製造業の研究開発戦略、商品開発戦略、研究組織風土改革などを手がける。著書に『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社)がある (写真:山西 英二)



このコラムについて

川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」

このコラムでは、商品の機能やデザインにフォーカスし、その商品が生まれた発想の起源を探ります。特に日本の商品に密かに隠れたいかにもニッポン的な「和」のテイストに注目しながら、日本のものづくり文化に息づく競争力の源泉をひもといていきます。

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