「川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」」

家電も飛行機も下剋上時代

玩具メーカーの「所帯臭さ」が「上位スライド」をもたらす

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2009年4月27日(月)

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 昨年9月のリーマンショック以降、決算期を目前に控えて耳をふさぎたくなるような恐ろしいニュースばかりの続く日本列島ですが、そんな中でも任天堂の快進撃は続いています。日本の誇るハイテク・モノづくり業界が軒並み総崩れの惨たんたる状況にもかかわらず、過去最高益を更新しそうだというニュースは度肝を抜く話でした。

まばゆいまでの任天堂の躍進

 しぼんでいる市場の中でも、「ニンテンドーDS」や「Wii(ウィー)」が海外市場で独り勝ちしている結果だということのようです。最新の6軸モーションセンサーを搭載して方角や動きを割り出したり、音響センシングで画面に吹きかける息の強さを感知したりするなど、「たかがおもちゃ」だったはずのものが、あれやこれやのデバイス武装によりインターフェース能力を磨き込んで賢くなっています。

 これまで、デジカメや音楽プレーヤー、電子マネーや万歩計などのあらゆる携帯機器をブラックホールのように吸い込んできた携帯電話機ですが、最後の挑戦者になるかもしれないゲーム機は、ますます心技体が充実しつつあり、逆に携帯電話がのみ込まれるかもしれません。任天堂が携帯電話ビジネスにいつどのような形で本格的に関与してくるのか、業界の関係者は固唾をのんでいます。

 電話機とはその祖先の黒電話機が電電公社からのレンタル品であったように、張り巡らされたインフラ網の末端装置です。水道の配管網に対する蛇口のようなもの。その一方で、ゲーム機とは、まさに任天堂の出自の通り、花札やカルタ、けん玉やヨーヨーなどの末裔。前者が「あちら側」の末端とすると、後者は「こちら側」からの発展拡張型です。電子武装したこの両者の“決戦”の行方は、将来大きな意味を持つような気がします。

機能出しの妙で価値を上げる玩具メーカー

 電子機器業界の水平分業化が進んだため、おもちゃメーカーでも簡単にハイテクデバイスを調達できるようになってきました。センサーや半導体の活用で知能化が進んだ玩具は、子供だましの世界を卒業し、大人も十分に楽しめる完成度に達しています。ただ、どれほど賢くなったとしても、それがゲーム機の範疇のものであるならば、しょせんは遊ぶためだけの道具です。

 ところが最近の玩具は、「脳トレ」やら「Wii Fit」のように、なまった大人たちの心身を修練するという別のしっかりした目的を持つ手段としての装置に格上げされつつあります。こうなるともはや玩具と言い切れない「健康器具〜医療器具」の領域にまで達してしまいました(私はこれが格上げでも進化でもなく、むしろ逆だと思うのですが、その話は別の機会に致しましょう)。

 同じように「なんちゃって」のノリで、玩具は家電品や生活用品の分野にもじわじわ進出しています。キティちゃんをあしらったデザインの時計やテレビのような、いわゆる「キャラもの」は昔からありましたが、ゲームやロボ、人形などで鍛えられた音声インターフェースの進化は、カーナビなどから実用品にも実装され始めています。

 タカラトミーやバンダイなど日本の誇る玩具メーカーたちも、情報機器からAV・家庭電化製品の領域への“侵出”を虎視眈々と狙っている雰囲気です。

 タカラトミーだけを見てもいろいろあります。デジタルカメラとプリンターがひとつになった「xiao(シャオ)」、ツンデレな音声対応のワンセグテレビ「SEGNITY(セグニティ)」などのAV機器(関連記事「きっかけは『滝川クリステルTV』開発でした」)。赤ちゃん専用空気洗浄機や、赤ちゃんの声を光で知らせたり赤ちゃんの部屋の温度が遠隔で分かるモニターといった「あんしん空間シリーズ」など、家電品類も出しています。そのほか蕎麦打ち機、ろくろなどの工芸用ツールから、1人カラオケ用の端末「Hi-kara」など趣味の世界をとば口に、子供玩具からじわじわと大人の道具の世界に滲み出てきています。

プリントできるデジカメ「xiao(シャオ)」。デジタルカメラとプリンターが一体化している(写真提供:タカラトミー)

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著者プロフィール

川口盛之助
(かわぐち・もりのすけ)

川口盛之助

慶応義塾大学工学部卒、米イリノイ大学理学部修士課程修了。日立製作所で材料や部品、生産技術などの開発に携わった後、KRIを経て、アーサー・D・リトル(ADL Japan)に参画。現在は、同社プリンシパル。世界の製造業の研究開発戦略、商品開発戦略、研究組織風土改革などを手がける。著書に『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社)がある (写真:山西 英二)



このコラムについて

川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」

このコラムでは、商品の機能やデザインにフォーカスし、その商品が生まれた発想の起源を探ります。特に日本の商品に密かに隠れたいかにもニッポン的な「和」のテイストに注目しながら、日本のものづくり文化に息づく競争力の源泉をひもといていきます。

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