著名な方の訃報を伝えるニュースなどで、しばしばテレビの情報番組などでコメンテーターの方が「ひとつの時代が終わった、って感じますね」といった台詞が発せられます。立て続けにそうしたニュースがあると、「ひとつの時代、っていったい、いくつあるんだろう?」などと思ったりしますが、もちろんそれは個人的な思いであって、普遍的なものではないのでしょうから、いくらあってもおかしくはない。
で、最近、自分の中で「あー、ひとつの時代が終わったな」と思ったのが、先日、雑誌「広告批評」の最終号を書店でレジに持っていってお金を支払って、受け取った雑誌をカバンに入れた時です。
「こうして書店で、『広告批評』の最新号を買うことはもうないのだな」と思ったら、あの台詞が心の中に浮かんできました。
「広告批評」は、広告制作に携わる人間にとって、憧れの場所
マス広告のクリエイティブの世界を離れて10年近くになりますが、大学を卒業して広告業界に入り、広告制作に携わるようになって以来、雑誌「広告批評」は、常に気になる雑誌でした。
広告やマーケティングを扱う専門雑誌は他にも存在しますが、「広告批評」は、広告クリエイティブ業界の、文壇のような存在・・・といっても本家の「文壇」の方面にたいして明るいわけではないのですが、「ここで認められてこそ、一流の制作者」といった感がありました。
そして、この場所で認められるためには、「この広告によって商品が対前年で130%も売れました!」という広告効果よりも、「バラバラになった現代の家族がつながる瞬間を乾いたユーモアで軽妙に切り取った作品」であることのほうが重要だったりする、という感じがしていました。
雑誌「広告批評」で語られるのは、単に広告だけでなく、時に「ことばの現在位置」だったり、時に「戦争」だったり。ビジネスツールとしての広告というよりは、文化としての広告が語られる世界。
そんな文脈で認められる広告作品やクリエーターから、そこはかとなく、文化の香りがする。そんな、憧れの場所のように感じていました。
もちろん、広告には、商品を売ったり、企業の認知度を上げたり、といったビジネスツールとしての明確なミッションがあるわけですが、それを果たすためにこそ、「広告批評」的な場所が広告業界にとって大切だよね、という理解があったように思います。
では、「広告批評」の休刊とともに、そうした「広告の文化の香り」も消えてしまうのでしょうか?
ROIの台頭と「効かない半分」の消滅
I know that half of my advertising dollars are wasted ... I just don't know which half.
これは、アメリカの実業家ジョン・ワナメーカー氏が言ったとされる「我が社の広告費の半分は無駄だとわかっているんだが、どっちの半分が無駄な方の半分なのかが、わからんのだ」という、広告業界に昔から伝わる「名言」です。
広告の文化の香りのようなものは、このワナメーカー氏の言うところの、効かないほうの半分から漂ってきていたのではないかなと、思っています。
ところが、昨今は、なんでもROI(return on investment)=「投資収益率」で、計量化しようという時代ですから、「効かないけど特定できない半分」がどんどん窮地に追い込まれているような、いや、もう半分じゃなくて、せいぜい四分の一くらいしか残っていないのような、そんな印象があります。
広告クリエイティブにしても、まだ日本のマスメディア広告では出現していませんが、今後、配信技術が高度化すれば、一部のネット広告において既に行われているような、A案とB案とC案を、テスト的に投下して、回収されたデータをもとに最も効果の高いものに、集約して予算を追加して実施する、といったことがキャンペーンにおいて広がっていくことだって十分想定されます。
言葉の達人による「珠玉の一行」の価値がなくなってしまうわけではありませんが、「広告効果の結果はコレです」と明確に数値化される部分が増えていくのは、逆らえない時代の流れなのかもしれません。
英語圏では広告クリエイティブの「クラウド化」も
今、ビジネス書やビジネス雑誌などでさかんに言われる「クラウドソーシング」(※製品などの開発をする際に、不特定多数の人たちに参加を呼びかけて実行することで、発注先が明確な「アウトソーシング」と区別される)が、英語圏では広告クリエイティブにおいても実施されようとしています。AdAge誌が、「Can Creativity Be Crowdsourced?」という記事で、そうしたサービスをいくつか紹介しています(リンクはこちら)。
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