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「日本のキャリアってすごいですね、でも・・・」

お門違いの「官製不況」悪玉論

  • クロサカ タツヤ

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2009年5月21日(木)

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 日本の通信技術を世界に売り出せないか。政策当局とも協調しながら、世界のあちこちを行脚しているのだが、交渉を重ねる中で困ったことが1つある。それは、日本の通信分野の産業構造が、世界中の多くの国と異なっているということだ。

 例えば、通信キャリア由来の技術を説明しようとした時、それは顕在化する。海外では通信キャリアの主な役割は、インフラの敷設とその運用である。基本的にそれ以外の仕事は他人任せ、すなわち通信設備事業者や端末メーカーが担うことになる。場合によっては技術のみならず、設備投資に必要なファイナンスさえもメーカーに依存することがある。

 一方、日本の通信キャリアは、自らがインフラ技術の開発を行ったり、端末開発に乗り出したりすることが少なくない。最近では、NTTドコモがメーカーの端末開発に資金援助を行い、代わりに知財を共有するといった、がっぷり四つで組むスキームも登場している。

 またディー・エヌ・エー(DeNA)の「モバゲータウン」に代表される、いわゆる「勝手サイト」も、NTTドコモを始めとしたキャリア各社の開発チームによる仕様開示などを受けて開発されるなど、アプリケーション開発の領域でも彼らの役割が増大している。これがいわゆる「垂直統合」の実像である。

強大キャリアによる支配

 こうした、産業全体の守護者(あるいは支配者)としての役割を通信キャリアが担うケースは、米国でも一部見られるが、それでも日本よりは力が弱い。その意味で、日本ほど通信キャリアが強大で、かつエコノミーの大部分を支配している国はほとんどない。

 そこにコミュニケーション・ギャップが生じるのである。つまり、こちらが通信キャリア由来の技術だと説明しても、先方の頭の中は「なぜキャリアが技術開発をするの?」というところで思考停止してしまうのだ。

 そして最初にこの違和感を持たれてしまうと、それを解くために日本の通信セクターの産業構造の説明となり、ふと気がつけばすっかり日も暮れ、先方の頭に残るのは、技術の話ではなく「日本のキャリアってすごいですね」という印象だけとなる。

 垂直統合型の産業構造は、うまくいけば信頼性が高く効率的なエコノミー(経済圏)を作ることが可能となる。ケータイ産業でいえば、その顕著な成功例は、iモードとその周辺エコノミーだと言えよう。また、そもそも何か新しいサービスを作ろうとする時、当初はアプリケーションから足回りまで、そのすべてを作っていくことが必要となる。

 プラットフォームの開放が叫ばれて久しいが、そうした議論も、あくまでそうした一気通貫のサービス開発を経て、サービスが成熟してから、ある部分がプラットフォームとして切り出されていくというものだ。水平分業の申し子のように見えるインターネットでさえ、当初は米国防高等研究計画局(DARPA)の枠組みという閉じた環境で、アプリケーションを含めた全体の基本設計が行われたのである。従って、垂直統合が悪いとか、何でもかんでも最初からオープンにせよ、という議論は、やはり短絡的に過ぎる。

 しかし、通信キャリアによる垂直統合ということは、当然ながらその求心力も牽引力もすべてが集中し、エコノミー全体が彼らに依存する構造となる。リスクの分散がリスクヘッジの原則である以上、集中しているということは、やはりリスク要因である。実際、キャリアの業績が悪化したり、キャリアによる開発に限界が生じたりした瞬間、その産業構造全体の価値が毀損されかねない。

コメント2件コメント/レビュー

「販売奨励金による官製不況」はお門違いだけれど、上下分離を妨げている電波行政の規制によって「官製不況」になってしまっている、ということですね。行政の罪は深いと思います。(2009/05/23)

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いただいたコメント

「販売奨励金による官製不況」はお門違いだけれど、上下分離を妨げている電波行政の規制によって「官製不況」になってしまっている、ということですね。行政の罪は深いと思います。(2009/05/23)

垂直統合モデルは電気通信の歴史であり,どこの先進国でも見られたモデルであるが、そのデコンストラクション及び監督規制当局の対応スピードに違いがあると認識しています。以前孫さんが提案したような加入者系光ファイバー会社による上下分離論や携帯サービスにおけるポータルのポータビリティ等が取上げられると思いますが、他のインフラ事業者同様、どのような形で競争環境を担保できるのかということに掛かっていると考えます。通信においては、当座は固定と無線(移動・固定)での競争ということになって来るでしょうが,今後は何処まで1企業グループが両事業領域を提供すべきかどうかということへの議論がやはり必要だと思います.(2009/05/21)

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