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【8】「マスクをすると仕事ができません」。新型インフル対策の温度差

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2009年5月21日(木)

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 「米国でマスクをしていると仕事になりません。やむを得ず、自分の判断で外しましたので、ご報告します」

 米国に出張している部下から筆者に送られた電子メールの内容である。彼女は米国のIT(情報技術)企業が開くコンファレンス(会議)に参加するため、3週間ほど米国に滞在している。新型インフルエンザに対処するため、飛行機の中や空港でマスクをしっかり着用してきたが、記者会見に出席する際に外した、という報告であった。彼女が在米の通訳の方に相談したところ、「マスクをしていると記者会見の会場に入れてもらえない。外すべきです」と進言されたそうだ。

 米国にいる彼女とは毎日、電子メールでやり取りをし、時折、電話で報告を受けている。仕事の話もあるが、「インフルエンザ、大丈夫?」「はい、全く問題ないです」といったやり取りが必ず入るので、そのたびに日本と米国のインフルエンザに対する反応の差が分かる。

 新型インフルエンザについて各種の業務指示が筆者のところに送られてくるたびに、部下の記者に伝えており、米国にいる彼女にもメールを送る。今年1月から日経コンピュータという雑誌の編集長になり、各種の指示を部下に伝える役回りとなった。だが、「インフルエンザについてこういう方針が出た」と米国の彼女に伝えると、「日本は過敏過ぎます。米国では誰も話題にしていません」といった返信が送られてくる。その一例が冒頭に紹介したやり取りである。

 彼女が現地の通訳に聞いたところ、米国でマスクをするということは、「私は重症です。近づかないでください」というアピールなのだそうだ。従ってマスクをしていると記者会見はもちろん、街中のレストランにも入れてもらえないという。この話を彼女から電話で聞いた際、「そもそもマスクは売っているのか」と聞いてみた。彼女は早速行動に移し、次のような電子メールを送ってきた。

 「電話の後、近所の薬局に行って、ハンドサニタイザー(アルコール消毒薬)を購入したところ1.75ドルでした。ほかにティッシュと石鹸がインフルエンザ対策コーナーに置いてありましたが、マスクは店内のどこにもありませんでした」。

自粛せず、海外出張を指示

 今回の出張は4月から計画していたものだが、出発時期が5月の初めであり、ちょうどその頃、新型インフルエンザの問題が日本で大きく取り上げられるようになった。出発前、彼女とは次のようなやり取りをした。

 「米国出張、どうしましょう。やむを得ない案件以外、海外出張はできるだけ控えるように、という指示が出たようですが」
 「出張の目的である、IT企業各社のコンファレンスは開かれるのか」
 「はい。今回4社のコンファレンスに参加予定です。問い合わせましたが、4社とも開催すると言っています」
 「では、行くしかないでしょう。先方が開催すると言っているのに、こちらが自粛するのはいかがなものか。会社の上の方には連絡しておきます」

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著者プロフィール

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BPビジョナリー経営研究所研究員、コンピュータ・ネットワーク局編集委員。1985年に記者となって以来、情報システム関連のテーマを取材し続けている。関わった媒体は「日経コンピュータ」「日経ウオッチャーIBM版」「日経ビズテック」「日経ビジネス」「経営とIT」など。「ビジネスとテクノロジーの一体化」に最大の関心を寄せる。

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