「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

頑張らずとも儲かる「収穫期」なのか?

財務諸表に見る国内キャリアの真の実力

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2009年6月4日(木)

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 会社は財務だけで回っているわけではない。当たり前のことだが、資本市場で仕事をしていると、そんな大原則をふと忘れてしまいそうになることがある。だから財務諸表を読む時や、資本政策のお手伝いをする時は、常にこの言葉を思い出し、自らを戒めるようにしている。

 一方で、通信キャリアというビジネスにとって、財務は極めて重要な経営管理項目の1つだ。他の産業と比べてみてもその意味はひときわ重い。取り扱っているモノの規模が大きく、またそのライフサイクルも長いからだ。

「扇の要」は、やはりインフラ

 自説で恐縮だが、通信キャリアというビジネスの経営モデルは、下図のような構造だと思っている。

 まず前提として、「資本、技術、市場」という3つの要素でもって「インフラ」を構成する。そのインフラを「活用する」という視点で上に引っ張れば、サービスや製品などの「プロダクト」を形成する三角錐になる。またインフラを「支える」視点では、サービス全体の品質や信頼性を維持するための「運用・ガバナンス」となる。

 すなわち、「インフラ」を文字通りの事業基盤とし、「プロダクト」と「運用・ガバナンス」をどのように構成していくか。この管理・制御こそが、通信キャリアというビジネスの真髄となる。

 その中でも特に扇の要となるのは、やはり「インフラ」だ。市場なきインフラは無用の長物だし、技術がなければインフラは陳腐化する。そして通信キャリアにとってインフラは大規模かつ長寿であり、それ故に「資本」の話となる。これらをどう管理するかが、ひいては2つの三角錐の大きささえも規定するのである。

 枕が長くなったが、そんなわけで通信キャリアの姿を見るうえで、財務分析は重要なポイントとなる。財務を無視して、端末や料金サービスや技術規格の動向を追いかけただけでは、ケータイ産業を理解することはできない。

一見は“優雅な白鳥”、その水面下は・・・

 その通信キャリアの決算が、ちょうどまとまりつつある。ソフトバンクモバイル(以下、SBM)やイー・モバイルのように現時点では親会社の連結決算が出ただけの会社や、ウィルコムのような非公開企業もあるが、それでも全体を大きく把握するには十分だ。

 まず通信キャリア3社の概況を俯瞰すると、各社とも営業収益(売上高)が落ちている。景気低迷という理由もあるだろうが、そもそも市場が飽和しつつあるという要因が大きい。実際、新規加入者数全体の伸びの鈍化や、契約当たり月間平均収入(ARPU)の低下は、すでに2007年頃から兆候が見えていた。昨期もこの流れの上にあるということだ。

  営業収益(億円)
2007年度 2008年度 増減率
NTTドコモ 47118 44480 -5.6%
KDDI 28517 27080 -5.0%
ソフトバンク 16313 15629 -4.2%

 一方で昨期は、各社とも営業費用も大きく絞り込んできた。市場が飽和するなら費用も抑えるのは当然のセオリーではあるが、特に販売奨励金の廃止と、割賦販売による「2年縛り」の定着による端末のライフサイクルの長期化により、販売機会が減少した影響が少なくないと思われる。さらに言えば、それを見越して、あらかじめ積極的な費用削減策を講じたということだろう。

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著者プロフィール

クロサカ タツヤ(くろさか・たつや)

クロサカ タツヤ 1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。



このコラムについて

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書

19世紀がヒトとモノ(物質)、20世紀がマネー(金融)のエコノミーだとしたら、21世紀は何か。この質問に対する、有力解の1つは「ビット(情報)のエコノミー」だろう。現実に、中南米やアフリカを視野に入れたケータイの普及という形で、ビット・エコノミーを構築しようと国や企業が動き始めている。「ガラパゴス」日本にチャンスはあるのか。世界で思惑がうごめくケータイ産業の最前線を描く。

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