「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

iPhoneミニバブルの必然

アップルは“賭場の胴元”だから強い

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2009年6月25日(木)

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 多機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」のニューモデルである「iPhone 3G S」が、6月26日に日本発売となる。既に米アップルからは、「発売済みの世界各国で初日から3日間の合計販売台数が100万台を達成した」という、威勢のいいプレスリリースが出ており、滑り出しは上々とのこと。

 一方の日本といえば、初上陸となった2008年7月11日の「iPhone 3G」発売時に比べ、盛り上がりにはやや欠けている。前回は、アップルから重い販売ノルマを背負わされたソフトバンクモバイル(以下、SBM)の思惑もあって、表参道での行列という“演出”が見られたが、実際はすぐにあちこちのショップで入手できた。その記憶も新しい今回は、さすがに一部の好事家がお祭りをする程度だろう。

 それでも、今回のiPhone 3G Sの発売により、おそらく年内には日本国内における販売実績は100万台を超えてくるだろう。アップルもSBMも公表していないが、諸々の販売状況などから推察する限り、iPhone 3Gは既に60万〜80万台程度は売れたようだ。

 iPhone 3Gの爆発的ヒットを夢見て、他の端末メーカーとの開発調達関係の見直しさえも行ったと伝え聞くSBMからすれば、いささか不本意な結果かもしれない。しかしケータイ産業が不況下にある日本において、ケータイ端末単体と考えてもなかなかの数字だし、実際かつてここまで売れた高機能端末は日本にはなかったはずだ。

ゴールドラッシュか、あるいは賭場か

 アップルが4月下旬に発表した、同社の2009年1〜3月期のIR資料によれば、iPhoneの出荷台数は初代(日本未発表)を含め、全世界合計で累積2000万台を超えたようだ。言い換えれば、初代iPhoneの発売からわずか2年で、全世界で2000万台規模のエコノミーが誕生したということである。

 ソフトウェア開発者やコンテンツ事業者からすれば、興奮する状況だろう。広告モデルが中心でビジネスの構築が困難なウェブの世界や、反対にある程度のまとまった出荷本数が求められるパッケージソフトに比べ、アプリケーションの流通管理と課金をアップルが代行してくれるiPhoneのエコノミーは、果実を育てやすく、また確実に収穫しやすい。

 そうした使い勝手のいいエコノミーが、しかも2000万台という規模で、いきなり目の前に出現した。まして相手は、モビリティー(可搬性)が高く、洗練されたインターフェースを備え、高品質のサービスを実現する、高機能端末だ。開発環境も整備されており、アイデア1つで様々なサービスを世界的に展開させることができる。

 低機能端末で国内に閉じていた従来の「ケータイエコノミー」に比べ、ソフトウエア開発者から見た最大の差別化ポイントは、ここだろう。そして、「これだけニンジンをぶら下げられて走り出さないなら、もはや馬ではない」と言わんばかりに、あちこちから新しいアプリケーションやコンテンツサービスが出現している昨今である。

 しかし、それだけ軽いフットワークで動けた結果として、既にiPhone向けのサービス開発をギブアップする声もチラホラ聞こえ始めている。

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著者プロフィール

クロサカ タツヤ(くろさか・たつや)

クロサカ タツヤ 1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。



このコラムについて

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書

19世紀がヒトとモノ(物質)、20世紀がマネー(金融)のエコノミーだとしたら、21世紀は何か。この質問に対する、有力解の1つは「ビット(情報)のエコノミー」だろう。現実に、中南米やアフリカを視野に入れたケータイの普及という形で、ビット・エコノミーを構築しようと国や企業が動き始めている。「ガラパゴス」日本にチャンスはあるのか。世界で思惑がうごめくケータイ産業の最前線を描く。

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