「Web2.0(笑)の広告学」

「エビスさん」のブログから学べること

プロフェッショナル・サービス・マーケティングとしてのブログ

バックナンバー

2009年7月7日(火)

1/2ページ

印刷ページ

 現在では5000人近くの著名人芸能人が書いているアメーバブログですが、ランキング上位にはやはりテレビで人気の若いタレントさんが並んでいます。そんな中で比較的最近始まったブログでランキングが300位前後まで急上昇しているのが、蛭子能収(えびす・よしかず)さんのブログ「エビスのシネマミシュラン」です。蛭子さんは、テレビにもしばしば登場しますし、タレントとしての活動期間も長いですから、このくらいの人気は当たり前と言ってしまえばそうかもしれません。しかし、60歳を過ぎた蛭子さんの、映画批評とその日常を綴ったブログからは、学べることがいくつもあります(リンクはこちら)。

「ザ・エビス・チャンネル」

 蛭子さんのブログは、「シネマミシュラン」というタイトルからもわかるように、映画批評をメインに据えたブログです。実際に6月だけで7本の話題の映画を取り上げ、星をつけて採点し、映画の内容にまつわる批評文を書いているので、立派な「映画批評ブログ」だと思います。ただ、映画に関すること以外の、蛭子さんの日常を綴ったブログが、更新頻度が高く、かつとても面白く、とりわけ、マネージャーや娘さんが撮影した、アイスを食べる蛭子さんであるとか、アイデアに煮詰まって困っている蛭子さんであるとか、競艇場に出かけた蛭子さんであるとか、さらに競艇から負けて帰宅しガックリきている蛭子さんであるとか、「ザ・エビス・チャンネル」とも言えるマイナー放送局の様相を呈しているのです。

 テレビや映画などでは、蛭子さんは「味わいぶかい脇役」だったり「意外なキャスティング」といった位置づけで、ひたすら蛭子さんという構成ではなく、ちょっとした「変化球」として、皿に盛られることが多い。だから、逆に「ひたすら蛭子さん」というコンテンツを日替わりで楽しめるのは、著書を別にすれば、テレビや雑誌ではなかなか目にすることのない、ブログだからこそできるもの、だと言えるでしょう。

 こうした「俺・チャンネル」「私・チャンネル」としてのタレントブログは、蛭子さんだけでなく、他の著名人・芸能人のブログではよく見られるパターンですが、「カッコいい俺」「素敵な私」というメッセージではなく、「あー、俺って駄目だなぁ」という正直な姿と、なかなか真似のできないマメな仕事ぶりとのギャップが実に魅力的なのです。

パーフェクトでなくとも丁寧な手づくりコミュニケーション

 アメーバブログには、自分がそのブログを訪問したことをワンクリックで簡単に残すためのツール「ペタ」があります。ペタをされた人の中には相手のブログを見に行って、自分もお返しにペタをする、といった簡単なコミュニケーション方法です(必ずしなければならないということは、もちろんないです)。ただ、芸能人・著名人の場合、1日に数十ではなく、数百、数千というペタも珍しくないので、「ペタ返し」をする芸能人は、あまりいません。しかし、蛭子さんの場合は、「以前からアメブロをやっている娘から、アメーバには、ペタというものがあるというのを聞かされていた」ということで、律儀に仕事の合間をぬって「ペタ返し」をしてくれています。

 それと、これは筆者のアメーバ運営会社の社員という立場から行くと複雑なところなのですが、「ブログを見てくれる人に自分に対してお金のかかるプレゼントをさせるのは申し訳ない」と、仮想通貨アメゴールドで花束やケーキといったデジタルアイテムが贈れる「アメーバプレゼント」を受け付けていません。

 さらに、自分で100円ショップのダイソーで買ってきた扇子に絵を描いたものや、イラストの原画などを、読者登録してくれた人や、コメントを残してくれた人たちから、抽選でプレゼントするという企画も手づくりで実施しています。その抽選の方法などもブログで詳細に紹介しているのですが、「それは、あまり効率的ではないのではないか」と、読者の方でも思ってしまうようなやり方で、案の定、家族総出の作業で明け方までかかった様がブログでレポートされていました(リンクはこちら)。

 またうっかりミスで、書き込まれたコメントを削除してしまった際には、深々と謝罪し、いったん削除してしまったコメントをコメント欄への復活はできなかったのですが、修復データからブログ本文のなかで紹介するなど、「クライシス・コントロール」にも、誠心誠意、丁寧に向き合っている姿が、伝わってきます(こちら)。

 こうした蛭子さんが行っているようなことを、今、売れに売れている若いタレントさんが同様に真似をするのは難しいと思います。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント2 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

スダシン(須田 伸 すだ・しん)

須田 伸

サイバーエージェント ネットトレンド研究室長/コミュニケーションディレクター。1992年株式会社博報堂入社。CMプランナー/コピーライターとして「ACC賞」「日経広告賞」「消費者のためになった広告コンクール」などの広告賞を受賞。 1998年カンヌ国際広告祭ヤングクリエイティブ・コンペティションに日本代表コピーライターとして出場。2000年にYahoo! Japanに転じてコミュニティサービス担当プロデューサーとして「ヤフー・チャット」を立ちあげ「ライブチャットイベント」では初代「Y! Chat MC」として活躍。2002年より株式会社サイバーエージェントに勤務。同社の企業ブランドを一新する。現在は同社ネットトレンド研究室長。ブログとインターネット広告に関する著書として『時代はブログる!』(アメーバブックス)がある 。「サイバーエージェント/アメーバ」は、2008年度グッドデザイン賞を受賞。



このコラムについて

Web2.0(笑)の広告学

ブログやSNSのように、普通の人がインターネットで気軽に情報を発信するようになったことが「Web2.0」という流行語(バズワード)を生みました。Web2.0の切り口には、技術も、商売も、哲学もありますが、このコラムでは、基本的に「広告」という視点で考えていきます。筆者はテレビ広告業界を経験後、サイバーエージェントに転じ、ネット広告の世界で活躍している須田 伸氏です。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内