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投資額の多寡は、技術の普及に関係ない

「モノ作り信仰」時代の終焉

  • クロサカ タツヤ

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2009年7月9日(木)

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 前回の内容について、「膨大な投資を要するLTE(3.9Gと呼ばれる高速通信を可能とする技術)が途上国で普及するとは思えない、安価なモバイルWiMAXが本命だろう」という趣旨のコメントをいただいた。

 これまで世界の通信機器ベンダーがどのように取り組んでいるかを本コラムで書いてきたが、私たち日本人の多くは理解しにくいのだと思う。これは、「いいモノを作って、売りさばく」という極めて単純なビジネスモデルに、慣れ親しんだことの反動とも言える。

 確かに「いいモノを作る」ビジネスモデルからすれば、ファイナンス技術を駆使してビジネスを広げていくという手法は、分かりにくいし、いかがわしさを感じるかもしれない。そして先の金融危機で生じた米リーマン・ブラザーズ破綻などのショッキングな事態が、そんなネガティブな印象をさらに強化しているようにも感じる。

 しかし現実問題として、いいモノを作って真面目に売ればいいという、いわば「モノ作り信仰」の時代は、既に終わっている。それこそ日本の得意分野である自動車は、ローンを組み合わせなければとても売れるものではないし、場合によっては道路というインフラをODA(政府開発援助)で作るところからスタートしなければならない。あるいはそもそも日本の輸出品で多くの割合を占める工作機械などは、クルマ以上にファイナンス技術が必要だ。

 そして日本のケータイ産業も世界に出て行くべきと考えるならば、やはりこの産業でもこういった複雑な仕組みに対する苦手意識を乗り越えることこそが、求められるはずだ。そこで今回は、冒頭のコメントを寄せてくださった方の問いかけを受けて、改めて世界のケータイ産業のビジネスモデルのからくりを説明していきたい。

LTEは確かに重い。普及は容易でない

 まず冒頭のコメントを振り返ろう。「膨大な投資を要するLTEが途上国で普及するとは思えない」という論旨の中には、いくつかの要素が含まれている。

まず「LTEは膨大な投資を要する」ということ。これ自体は概ね間違いがないし、これまでの連載でも再三、触れてきた。これは、新興国はもちろん、3G(第3世代通信規格)が発達した日本においても事情は同様である。

 例えばNTTドコモは、大都市部を中心とした限定的な提供にとどめ、むしろ投資が完了しているHSDPAやその高度化を主軸に据えて、フリーキャッシュフローの増大を目指すだろう。またソフトバンクモバイルやイー・モバイルは、現在の財務状況からすれば、そもそもLTEのサービス開始にこぎ着けることさえ怪しい。

 悩ましいのはKDDIである。既に現在の3G技術には先がない以上、インフラの高度化を進めるためにはLTEに乗り出さなければならない。しかしこれまでCDMA2000シリーズという「LTEと親和性の低い技術」を採用してきた同社にとって、実質的にインフラの作り替えを意味するLTEの採用は、相当な負担とリスクを伴う。まして同社には2012年の周波数再編に伴う端末やサービスの移行が重荷としてのしかかってきている(これは今後改めて触れる)。

 このように、あらかじめ3G技術が普及し、投資余力もある日本でさえ、LTEの立ち上げには相当な困難を要する。ならば「LTEが途上国で普及するとは思えない」という結論が出てくるのは、一見すると自然のように思える。

だからこそ、ファイナンスの出番

 しかし、ここには、暗黙の前提が隠されている。それは、「技術は、それを提供する人と利用する人が、直接相対して対価を払い、買うもの」ということだ。

 「そんなこと当たり前では?」と思われる向きには、こんな問いを立ててみよう。例えばあなたが住宅を買おうとする時、あなたはそれを現金一括で支払うだろうか。

 住宅やクルマのような高額商品を買う場合、よほどの資産家でもない限り、ほとんどはローンを組むだろう。逆に、住宅ローンという仕組みがあるからこそ、「年収500万円、貯金700万円」という人であっても、3000万円もするマンションが買えるのである。

 ケータイ産業といえども、基本的には同じこと。確かに新興国にはカネがない。しかしカネがなければ技術が買えないというのであれば、3GやLTEうんぬん以前に、そもそも今世界中のデファクトスタンダード(事実上の標準)となっているGSM(第2世代通信規格)のケータイインフラさえも整備できないことになる。

 もちろん現実はまったく逆だ。中国にはフィンランドのノキアだけではなく、自国のGSMケータイ端末ベンダーがひしめいている。インドでは、携帯電話事業のシェア第1位を誇るバーティ・エアテルの契約者数が、先日、1億契約を超えた。いずれも、押しも押されぬGSM大国である。

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