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国家技術開発プロジェクトの無様なマネジメント

大切なのは予算獲得後の「変化と成長」

  • 宮田 秀明

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2009年7月24日(金)

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 商船の多くはディーゼルエンジンでプロペラを回して推進している。その仕組みは自動車とほぼ同じなのだが、船には変速機がないところが違う。船のエンジンとプロペラは直結されていて、ディーゼルエンジンの回転数は毎分100回前後である。

 モーターでプロペラを回す方式の「電気推進船」という船がある。これは、ディーゼルエンジンとプロペラを直結せずに、ディーゼルエンジンで発電機を回して発電し、電気でモーターを回す。この技術はそれほど難しいものではないので、古くから使われている。戦前は客船によく使われたが、最近の客船でも復活して、大型のクルーズ客船では定番の推進システムになっている。このシステムを使うと静かで、振動が少なくなるのでクルーズ客船に適しているのだ。

 この電気推進システムを2000~5000トンの内航船に応用しようというプロジェクトが2003年に始まった。内航船の主な荷物は石油製品と鋼材とセメントである。国のプロジェクトだった。その頃、国のプロジェクトにはなるべく関わらないようにしていた。ところが国土交通省の担当課長が、この職の人にとっては珍しいことを言うのだ。

 「先生にならついていけそうな気がします」

 そうして、内航船を近代化するこの計画のプロジェクトマネジャーを引き受けた。ところが予算を要求した時の企画案を見て驚いた。技術的に間違ったことが満載なのだ。

予算のついたプロジェクトは設計を修正できない

 スーパーエコシップ(SES)プロジェクトと命名されていて、骨子はこんな具合だ。

(1) 燃料費の少ないエコな船にする
(2) 電気推進システムを使って、安全で扱いやすく、高齢化の進む船員に合った船にする
(3) 主機関には、別の国家プロジェクトで開発した新設計のガスタービン・エンジン(ジェットエンジン)を採用する

 (2)と(3)は、(1)とは相容れないことである。エンジンで発電機を回して電気を作り、この電気を使ってモーターを回してプロペラで駆動するシステムは、エンジンで直接プロペラを回す方式より20%程度効率が悪い。20%ロスが発生するのだ。さらにガスタービンの燃費は普通のディーゼル機関より20%は悪い。

 エコな船の計画とはまるで反対の条件を2つもつけて国家予算を獲得してきたのだ。そして、一度予算がついた以上、修正はできないのだという。しかも、初年度だけではない。このプロジェクトが終了するはずの4年後まで、これは変えられないというのだ。

 手かせ足かせをつけて泳げと言われているに等しかった。

コメント13件コメント/レビュー

うちの会社でも国や独立法人からの受託研究とかを受けてやってますが、研究の世界では、時期や用途に制限のあるお金1億円と自由に使えるお金1000万円がほぼ等価な価値ですね。このことはマスコミなぞ一切報道せず、まるで技術立国のためには国の公募する研究プロジェクト礼賛ですね。国の研究プロジェクトほど効率の悪いものはありません。このことは研究だけじゃなく、自治体が国からもらう交付金なんかも同じかもしれません。自治体の住民にとっては時期や用途に制限のある”ひも付き資金”1億円と自由に使ってよい1000万円がほぼ等価な価値ですね。(2009/08/01)

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いただいたコメント

うちの会社でも国や独立法人からの受託研究とかを受けてやってますが、研究の世界では、時期や用途に制限のあるお金1億円と自由に使えるお金1000万円がほぼ等価な価値ですね。このことはマスコミなぞ一切報道せず、まるで技術立国のためには国の公募する研究プロジェクト礼賛ですね。国の研究プロジェクトほど効率の悪いものはありません。このことは研究だけじゃなく、自治体が国からもらう交付金なんかも同じかもしれません。自治体の住民にとっては時期や用途に制限のある”ひも付き資金”1億円と自由に使ってよい1000万円がほぼ等価な価値ですね。(2009/08/01)

IT分野でも同様の混迷プロジェクトがたくさんあります。予算や期間が中途半端で水泡に帰すことが大半です。誰も総括しない、責任をとらない、そして思い切って捨ててしまえばいいものが生き残って、さらに被害を長引かせることも多いのです。欧米ならベンチャーのチャレンジは数年で結論が出て、悪い技術は駆逐されますが、日本では悪い技術の方が長く予算をとれ、生き残るのでしょう。(2009/07/29)

往々にある官の仕事のいかがわしさを端的にあらわしていると思います。結局、ガスタービンはやめて電気推進は採用されたようですが、もしそれもやめてお二人の取り入れられた技術開発のみにすれば、本当はもっとよかった、ということでしょうか。商業的に売れるのはそちらだと思うのですが。私も官との付き合いで痛感しましたが、エコでも地球温暖化防止でも、要は予算獲得のためのキャッチフレーズであり、中身は、それが無知からでたかどうかは知りませんが、錯誤或いは欺瞞と断じざるを得ないような事例があることが極めて残念なことです。(2009/07/25)

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