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ウェブ2.0の次は「スポーツ2.0」

サッカー界の未来形チーム「MYFC」はもの言うファンが経営判断を下す(1)

2009年8月24日(月)

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 “ウェブ2.0の時代”というフレーズもかなり使い古されましたが、2.0的なものを構成する大きな塊に「CGM(Consumer Generated Media)」の概念があります。末端のコンシューマーが参加して情報を持ち寄ることで生成されるメディアサービスです。今回のコラムは、このCGMが進化した形でユニークな市場を開拓する「MYFC(マイエフシー)」をご紹介しましょう。

 これは実在のサッカークラブをオンライン上のオーナー会員たちが協力して育成するコミュニティーです。各人が一票の投票権を持って会員同士の議論と投票を繰り返しながら、クラブをより魅力的にするための経営判断を行おうというものです。単なるファンクラブの域を出て、もの言う株主ならぬ、“もの言うファン”が集合知としての意思を現場にフィードバックさせるシステムがMYFCです。

 2009年2月から、実際に静岡県社会人リーグ1部の藤枝MYFC(旧藤枝ネルソンCF)を対象に試験運用されてきました。これまでは無料会員制で5600人の会員が参加しており、この秋からいよいよ有料化、すなわち本当のオーナー制に移行する段階に至っています。お話は、MYFCを立ち上げたJ.プレイヤーズの代表取締役社長、小山淳氏に伺いました。

MYFCを立ち上げたJ.プレイヤーズの代表取締役社長、小山淳氏(写真:小久保 松直)

 世界初の試み!と言いたいところですが、実は世界で2番目。英国5部リーグのEbbsfleet Unitedというチームの運営を担う“My Football Club”が元祖です。35ポンドを支払えば、ファンがオーナーとしてクラブ経営に一票を投じることができるのです。2007年に運用開始されましたが、創設者がウェブ上に1ページの広報記事を載せただけで事の重大性に気付いた英BBCが取り上げ、そのおかげでいきなり2万人もの出資会員が集まり、多額の資金が調達されました。運営費の9割近くをネット資金で賄っており、これを背景にサポーターは強い発言力を持っています。

 サッカー発祥の地でついに生まれたこのビジネスモデル。FIFAランキング40位の極東の島で世界の2番手として挑戦しようというわけですから、苦労が絶えないようです。

「スポーツ2.0化」する部分とは

 一口にチーム運営のオープン化と言っても、ビジネスプロセスは様々あります。日々の対戦におけるメンバーや布陣など戦術や采配に関わる部分で、熱いファンにはみな一家言あるでしょう。試合以前の話として練習試合や合宿日程などの強化方針も決めなくてはなりません。そのまた前には新人選手の発掘やトレードなど補強の方針にも合意が必要でしょう。そもそも論としてこれらを束ねる監督やコーチの選出が最も大事な合意事項でもあるでしょう。またチーム運営以外にも、備品の購入やらファングッズの開発など企業運営に関わる大事なプロセスは山ほどあります。

 そのあたりを小山氏に伺うと、「まず現場サイドがあらゆるプロセスを円滑に運営できる体制を整えたうえで、どこから始めるのかは全くオーナー次第です」とのことで、どっからでも来いの状態でした。ちなみに「藤枝MYFC」というチーム名称も投票で決めたとのことです。

 「まずは、勝利給の選手への分与というところから始められると良いのですが・・」と漏らされましたが、それは、“ファンに養ってもらっている選手たち”という意味で両者の距離を縮める効果を期待しての親心のようです。

 技術的には、スタジアムのファンたちが携帯で投票を行って、選手交代やポジション変更などの采配にも、ファンの意思なるものをベンチに届けることは可能です。プロチームでは禁止されていますが、現状はアマなので大丈夫です。もし、そのようなシステムを採用した方が勝率やチームの魅力度が上がるということになったら、サッカー界も無視できないことになるでしょう。

 すでに機能しているプロセスは、新人発掘のプロセスです。藤枝MYFCはローカルチームながらも各地にファンは散らばっています。各地方の学校や下位クラブには、まだスカウトの目に留まらない逸材が埋もれています。熱いファンたちは、センサーネットワークとして“金の卵情報”を集めては議論の場に吸い上げる役目を果たしてくれているのです。損得抜きに、好きだからという理由だけで手足を動かしてくれるファンというものは有難いものです。

“もの言う株主”と“もの言うファン”の違い

 このオンラインオーナー制とは、「もの言う株主」という面で個人投資家と似ています。経営者にとっては、緩い経営をしていると叱責され、下手をすると集団訴訟までされる怖い存在です。ただ決定的に異なる点があります、一般企業の個人株主はその多くが利殖目的であって、必ずしもその企業を愛しているわけではありません。株価が上がったら売り抜けるし、配当も求めます。短期的な経営指標の改善を望むばかりで、金の切れ目が縁の切れ目という冷めた関係です。

コメント6件コメント/レビュー

全権を烏合の衆に預けるというモデルは、責任の所在問題でうまくいかないように思います。少ない大きな株主が居て、安定した経営基盤があるうえで、その株主たちがタニマチ的に金は出すが、ものはいわぬ系の人たちであって、そのうえでファンたちが2.0的に集まっているという姿が理想的に思います。(2009/08/24)

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「ウェブ2.0の次は「スポーツ2.0」」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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全権を烏合の衆に預けるというモデルは、責任の所在問題でうまくいかないように思います。少ない大きな株主が居て、安定した経営基盤があるうえで、その株主たちがタニマチ的に金は出すが、ものはいわぬ系の人たちであって、そのうえでファンたちが2.0的に集まっているという姿が理想的に思います。(2009/08/24)

テレビゲームが普及にかかわっているという点が非常に面白いと思いました。プロシュマー^の動きと言い、テレビゲームの影響と言い、今風なメカニズムでリアルビジネスも考えなければならない半面、エネルギー源が熱いファン魂というアナログなところがポイントですね。次回も楽しみにしております。(2009/08/24)

サッカー運営がシミュレーションRPGになって、そのエキスが抽出されてデジタル化された後に、再び形を変えてリアルのサッカーチーム運営に戻ってくるという分析がとても鮮やかでした。大変面白い現象で、今後いろんなシーンに展開される可能性を感じました。(2009/08/24)

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夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長