「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

児童被害が拡大するケータイSNS

フィルタリングの実効性に、警察からは疑問の声も・・・

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2009年8月27日(木)

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 去る8月18日、国内最大手のSNS(ソーシャル・ネットワーキング ・サービス)事業者であるミクシィが、青少年ユーザー保護を目的としたユーザー確認の導入と、その実施に向けた規則改定を行った。いわゆる出会い系に近い交際希望の情報や、ポルノ画像・文章などの性的コンテンツについて、青少年の利用・閲覧を制限するというものである。

 いわばSNS事業者自身による、コンテンツのアクセスに関する自主規制となる今回の動きだが、実はミクシィだけの取り組みではない。モバゲータウンのディー・エヌ・エー(DeNA)やグリーなど、国内の大手SNS事業者が足並みを揃え、時同じくしてこの8月に、同様の対策を講じている。

 これは単なる偶然ではない。なぜなら3社とも、ケータイ・フィルタリングという、同じ技術かつ同じ運用の枠組みを使っているからだ。つまり、同じ問題の下で、同じ解決策を採る必要があった、ということである。

SNSが犯罪の温床になっている?

 では、SNSに共通する問題とは一体何か? それは、SNSが犯罪の温床となりつつある、ということである。

 警察庁が8月6日に発表した、「平成21年上半期のいわゆる出会い系サイトに関係した事件の検挙状況について」という資料を見れば、一目瞭然である。2008年及び2009年の上半期で、いわゆる出会い系サイトに関係した事件の検挙状況を比較すると、大手SNSを含む「出会い系以外のサイト」を媒介とした犯罪が、今年に入って急激に増加しているのだ。

 特に深刻なのは、被害者が児童の事件の増加である。2008年上期の被害児童数が388人だったのに対し、2009年上期は、現時点(まだ上期は終わっていない)で既に545人と、157人(40.4%)も増加している。逆に「出会い系サイト」を媒介とした事件は、昨年が356人だったのに対し今年は256人と、91人(25.6%)ほど減少している。

 どうせ軽微な条例違反が多いのだろう、とタカをくくってはならない。同じく警察発表資料を見ると、児童売春・児童ポルノ、強姦といった性犯罪はもちろん、殺人や略取誘拐などの重要犯罪も、少なからず発生しているのである。

 しかもこれらの数字は、あくまで被害届が出るなどして立件されたものに限られている。特に性犯罪に関しては被害者が泣き寝入りしてしまうケースも少なくないため、被害実態はその4〜5倍で考えるべきというのが定説だ。計算してみれば、「出会い系以外のサイト」が相当深刻な状況にあることは、すぐお分かりいただけるだろう。

 もちろん、これらのすべてが大手SNSを指し示しているという話ではない。SNS事業は地域のボランティアベースのものを含めれば数え切れないほどあるし、単純なSNSだけでなくプロフ(自己紹介を公開して友達作りや出会いを促進するサービス)のようなサービスでもあちこちトラブルが発生しているのは、学校でのいじめ問題などでも明らかだ。

 ただ、現時点の被害実態としては、やはり単純に母集団の大きい大手SNSを経由しているものが多いというのが、警察の見立てである。そして、こうした事態を受けて、もはや警察としてもただ黙って見過ごすことはできず、ついに事業者への指導という形で動き出した、というのがここまでの経緯である。

事業停止の可能性も

 すなわち今回の自主規制は、事業者による自発的な行動というわけではなく、警察庁からの強い要請に基づいた対応、ということになる。事実、先の資料の文中にも「出会い系サイト以外のサイトで児童被害が相当程度発生しているサイト事業者に自主規制を講じるよう指導を継続」と書かれているように、同庁(特に生活安全局)からの指導が断続的に行われているところだ。

 こうした動きは、突然乱暴に行われたわけではなく、警察としても順番を追って作業を進めている。まず今年の2月に、事件多発を受けた対応の本格化を事業者に通知し、業界団体であるEMA(一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構)や安心ネットづくり促進協議会も巻き込んだ、業界での自己解決の可能性を探らせた。前後して、ちょうどケータイによるフィルタリングサービス(有害・違法コンテンツを閲覧させないようにする機能)の提供が開始された頃である。

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著者プロフィール

クロサカ タツヤ(くろさか・たつや)

クロサカ タツヤ 1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。



このコラムについて

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書

19世紀がヒトとモノ(物質)、20世紀がマネー(金融)のエコノミーだとしたら、21世紀は何か。この質問に対する、有力解の1つは「ビット(情報)のエコノミー」だろう。現実に、中南米やアフリカを視野に入れたケータイの普及という形で、ビット・エコノミーを構築しようと国や企業が動き始めている。「ガラパゴス」日本にチャンスはあるのか。世界で思惑がうごめくケータイ産業の最前線を描く。

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