「クチコミ広告に規制」というヘッドラインで、アメリカの連邦取引委員会(Federal Trade Commission)が今年12月1日から実行する規約改訂が、日本のメディアで伝えられています。81ページに及ぶ様々な事例を想定した新規約全文を読むと、その影響はインターネット以上にテレビ・新聞・雑誌といった伝統的メディア、広告会社、PRエージェンシー、芸能プロダクション、さらにはスポーツ選手、ジャーナリストといった団体や個人に多大な影響を与えるものであることがわかります(内容は、こちらからご覧になれます)。
地獄の釜の蓋を開ける?
具体的に言いましょう。FTCの文書の原題は「Guides Concerning the Use of Endorsements & Testimonials in Advertising」ですが、この中の「Endorsements & Testimonials」を「クチコミ広告」というのは、かなり乱暴な意訳です。
「Endorsement」とは手元にある英和辞典によれば、「是認, 承認, 保証, 支持;(有名人による商品の)保証宣伝」であり、「Testimonial」とは「(人格・資格・価値などの)証明書;推薦状」です。
したがって「クチコミ広告」というよりは、むしろ「すべての推奨広告に関する規約改訂」と理解するべきでしょう。
サプリメントやビタミン剤のテレビCMで「ひさびさに同窓会に行ったら、20年前とぜんぜん変わらないね、って言われちゃいました。でも、実際、自分では20年前よりも今の方が若々しいと思ってくるくらいなんですけどね、オホホ」といった「実際の購入者」が登場し、画面の下に小さく「あくまでも個人の感想であり、商品の効能を保証するものではありません」という断り書きが表示される、ああいった手法すべてに関する規制が、大きく変わるのです。
それだけではありません。この新しい規約施行後は、プロ野球の選手による「この栄養ドリンクを毎日飲んで、今シーズンも3割打ちました」といった言葉も、規制の対象になり、たとえそれが、広告会社のコピーライターやCMプランナーが用意したものを、カメラの前で読み上げただけであったとしても、虚偽の発言だった場合にはその野球選手が罪に問われる可能性があります。
また、ある健康器具の効能が「アメリカ科学研究所の実験結果としてデータで証明された」といった表現も、その実験にかかる費用をその健康器具メーカーが支払っていた場合、その事実を明らかにせずに広告に使えば罰則の対象となります。
メーカーから「制作協力金」といった名目で、出版社や放送局に支払われたお金を使ってメディアが取材したり、記事や番組をつくったりといった、以前からある「(広告と明記されていない)PR的コンテンツ」も、金銭、あるいは金銭と同等物のやりとりがあった場合には「広告」であり、罰則の対象になる可能性があるとしています。
ドイツ・ニュルブルクリンクのサーキットでのテスト走行に自動車メーカーにモータージャーナリストが招待を受け、航空運賃や宿泊費用などを負担してもらっていたとしましょう(普通、そういうことになっています)。その事実を明らかにせずに記事を書いた場合には、無料でゲームソフトを受領したブロガーが、その事実を明かさずにブログ記事を書いた場合と同様に、罰則の対象となります。グルメ評論家、映画評論家、ハイファッション雑誌の編集者、などなど。ブロガー同様に、彼らも罰則の対象になりうるのです。
ブロガーを使った広告への規制が、マスメディアとその周辺業界を含めた、これまでの慣行を禁止する、まさに「地獄の釜の蓋を開ける」ことにつながる、という声もあがっています。
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