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モバイル取り巻く「3つのファンタジー」

世界経済の牽引が期待されるも“バラ色”なのか?

  • クロサカ タツヤ

バックナンバー

2009年10月29日(木)

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 通信と放送のいかんを問わず、ほとんどすべての情報通信産業は、現在大きな転換期を迎えている。それも、単なる変化ではなく、技術、事業、資本、規制などという、およそ情報通信産業にとっての根幹となる要素のすべてが、同時多発的かつ劇的に変化している。

 おそらく未来から今を振り返ってみれば、20~30年ほど前にインターネットが誕生・普及した頃と同じような、歴史的な転換点にさしかかり始めたところと言えるだろう。プレーヤーの入れ替えを強く促しているという観点からすれば、それ以上のインパクトかもしれない。

 その影響は、国内外を問わず、あちこちで散見され始めた。本連載開始後も、ネタに事欠くどころか、どれを取り上げればいいのか迷うほど、大きな動きが日々起きている。ただ今のところ、これらの動きが落ち着く気配はなく、アップサイド(成長)、ダウンサイド(退行)のいずれにせよ、こうした変化の激しい状況は当面変わらないだろう。特に日本に関して言えば、2012年半ば頃まで続くと予想される。

 その中でケータイ産業が、今後の情報通信産業の中核を担うポジションであることは、間違いない。既にインターネットを超えた普及状況にあり、この不況下においても比較的安定して成長を重ねている数少ない産業である。今春スペイン・バルセロナで開催された「GSMAモバイルワールドコングレス」で、米コロンビア大学地球研究所長のジェフリー・サックス氏が指摘した「モバイルが世界経済を牽引する」という言葉通り、ということであろう。

 ただそれは必ずしも“バラ色の人生”というわけではない、と筆者は思っている。ケータイ産業とて経済社会全般の影響下にあるし、むしろ担わされる責任の重さから、場合によっては茨の道を歩む事業者が出てくることも覚悟しなければならない、とさえ思っている。

 ではケータイ産業は、今後どのような道を歩み、何が有望領域となっていくのか。今回から、そうした産業全体の将来展望を中心に検討していきたい。

進化する無線通信技術だが・・・

 将来を論じるには、まず現在の立脚点を冷静に見極める必要がある。そのためには、ケータイ産業にまつわる「ファンタジー」から、一度目を覚まさなければならない。既に本連載でも何度か個別には指摘しているが、まとめると大きく3点ほど挙げられる。

 まず「無線通信は劇的に高速化する」というファンタジー。確かにLTEやモバイルWiMAX、またウィルコムのXGPといった次世代規格が、10Mbpsだ、100Mbpsだと、それぞれ威勢のいいスループット値を提示している。それらを鵜呑みにすれば、ADSLやFTTHはもはや代替できるかもしれないと、固定網をも飲み込む「ケータイ帝国主義」を夢想するかもしれない。

 しかし現実は、おそらくいずれもコンディションのいい時で10Mbpsも出るか出ないか、だろう。それこそ現状でモバイルWiMAXやイー・モバイルなどのHSDPA(第3.5世代技術)がそうであるように、状況が悪い時にはヘタをすれば1Mbpsどころか100kbps台前半程度しか出ないだろう。

 この理想と現実の大きな落差は、技術、運用、政策のそれぞれに要因がある。まず技術面では、そもそも無線通信自体が非常に複雑な技術で成り立っており、固定網のようにそう簡単にはスペックを安定させられないという事情がある。これはほとんどのケータイ技術に共通する前提条件であり、原則的には干渉等を防ぐための工夫を重ねつつ、基地局の密度を高めるしか対応策はない。

 この点、マイクロセル方式(高密度の基地局運用、ウィルコムが現世代PHSで採用)は基本的に有利なアプローチであり、NTTドコモもそうした動きに追随して基地局を大量に設置している。ただ、そうした工夫をすることもなく、不安定な地盤の上にデジタル技術の高度化による「高層ビル」を建てようとすれば、その後のサービス品質がどの程度のものになるかは自明というもの。ましてその高度化技術もそろそろ限界が見えてきていることを考えると、理想を実現するための糊代は大きくない。

 また運用面では、バックボーン容量との兼ね合いで無線アクセス部分のスループットを絞らざるを得ない、という事情もある。これは、バックボーンがどのように調達・構成されているか、またそれも含めて損益分岐点がどの辺りに設定されているか、というビジネスの話でもあるのだが、あちこちで100Mbpsをガンガン楽しむユーザーを余裕で受け入れられる状況には、どのキャリアもまだないというのが実情だろう。

 そして政策面。HSPAのような3.5G技術にせよ、LTEやXGPのような3.9G技術にせよ、いわゆる次世代規格と称される無線通信技術がひねり出すスループットは、実は技術の優位性ではなく、そもそも規制当局から事業者に割り当てられる帯域幅で大抵決まるというのが現実である。そしてこの帯域幅は、例えばLTEで既におおむね10MHz程度と決まっており、その割り当て状況では各社10Mbpsも出ないであろうことは容易に予想できる。

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