「川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」」

ブロガーに愛される、新分野を創造したムービーカメラ

三洋電機「ザクティ」、ゼロからの挑戦

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2009年11月13日(金)

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 部品技術が進歩したために、製品全体の外観フォルムまで大きく変わってしまうことがあります。今回はビデオカメラに関しても、そんなフォルムの変化が起きているというお話です。

 撮像素子や記憶媒体の低価格化、さらにモジュール化が進んだおかげで、「iPod」(アイポッド)や携帯電話機に、当たり前のように動画撮影機能が搭載されるようになっています。

 カメラはどんどん小型化し、一機能としてビルトインされ、単体機としては形を失うのか、と思いきや、存在感十分な一眼レフカメラの市場も活況を呈しています。カメラとは、「撮影〜編集〜配信」に至る一連の行為自体を楽しむ装置でもあり、単純に省力化を進めればよいだけのものではないようです。

「いかついメカ」から「片手で持てるグリップ式」へと進化

 これまでの動画機器の歴史を振り返ってみると、記録媒体が変化した時に大きく形が変化してきました。“パスポートサイズ”で名を馳せたソニーの「ハンディカム」(最初のモデルは1985年)は、飛躍的に小型化された大ヒット商品でしたが、グリップベルトで支持した片手持ちの構えを定着化させました。これを実現したのは8ミリビデオテープの登場です。

 その先達としては「フジカ・シングル8」という超小型の8ミリフィルムカメラがあります。1965年に登場したそれは、操作が煩雑だったオープンリール式のフィルムをマガジン化し、ワンタッチ交換できるようにしたところが革新的なヒット商品でした。“私にも写せます”の名コピーで、片手で握るグリップ型に形が大きく変わった変局点となったわけです。

 いずれの事例も、それ以前は大型で操作にもリテラシーを要するセミプロ仕様、玄人向けの「いかついメカ」だったものを民に解放した傑作機であり、その後の製品フォルムに大きな影響を与えることになりました。

 80年代から長く続いたテープ磁気記録方式ですが、2000年代初頭に光ディスクやハードディスクへと移り変わり、ここに来ていよいよ駆動系を要しないメモリー素子の時代に入っています。

「ザクティ(Xacti)」の開発に携わった、三洋電機デジタルシステムカンパニー・DI企画部の塩路昌宏課長
(写真:小久保 松直 以下同)

 記憶方式の試行錯誤に合わせて様々な外観フォルムが提案される中で、2003年の登場以来メモリー方式を貫き、独特の縦型グリップフォルムで頑張っているのが三洋電機の「ザクティ(Xacti)」シリーズです。今回は同社デジタルシステムカンパニー・DI企画部の塩路昌宏課長にお話を伺いながらカメラの形について考察を進めてまいりましょう。

 ビデオカメラの外観を分類すると、縦型と横型があります。ザクティの多くは縦型です。光学系の下にある縦長の細い部分を片手で握れるようになっており、そのグリップ部分が後ろ向きに15度傾斜しているところを特徴としています。ファインダーを覗き込む必要のない撮影機の形を“人間工学”してみると、最も自然な形がこの縦長グリップ式だったというのが同社の結論なのです。

片手で持つ「縦長グリップ式」がザクティの特徴の1つ

 巷でこの形は「ガングリップ」とも呼ばれますが、考えてみると、身の周りの道具類にはガングリップがたくさんあります。スピードガンやレジのバーコードリーダーは傾斜の入ったガングリップ形状です。塗装用のエアブラシや散水用のホースノズル、拡声器やヘアドライヤー、高級釣り竿などにも銃のような持ち手がついています。エアーや水、ビームなどで少し離れた場所を“狙う”飛び道具の形としてガングリップは重宝されています。

 人間工学やエルゴノミクスという視点では、最も切実なシーン、つまり殺るか殺られるかというシーンを想定した「銃」の分野において、最も慎重にデザインは考慮されます。極限ストレスのかかった状況下でも操作ミスをせず、1秒でも速く反応しなければならない、という仕様での設計です。

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著者プロフィール

川口盛之助
(かわぐち・もりのすけ)

川口盛之助

慶応義塾大学工学部卒、米イリノイ大学理学部修士課程修了。日立製作所で材料や部品、生産技術などの開発に携わった後、KRIを経て、アーサー・D・リトル(ADL Japan)に参画。現在は、同社プリンシパル。世界の製造業の研究開発戦略、商品開発戦略、研究組織風土改革などを手がける。著書に『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社)がある (写真:山西 英二)



このコラムについて

川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」

このコラムでは、商品の機能やデザインにフォーカスし、その商品が生まれた発想の起源を探ります。特に日本の商品に密かに隠れたいかにもニッポン的な「和」のテイストに注目しながら、日本のものづくり文化に息づく競争力の源泉をひもといていきます。

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