11月23日、モバイル広告大手の米アドモブ(AdMob)が、全世界のケータイによるデータ通信トラフィックの22%を、米アップルのiPhone(アイフォーン)が占めていると発表した。iPhoneへの広告配信などを手がける同社は、11月9日に米グーグルが7億5000万ドルでの買収を発表したことで一躍「時の企業」となったことでも知られる。
この数字の構造をもう少し細かく説明すると、トラフィック全体の44%がスマートフォンによるもの、そしてその50%をiPhoneが占めているという。ケータイ(特にiPhone)によるデータ通信が盛り上がった方が儲かる会社である以上、その発表内容には若干眉に唾をして読まなければいけないが、確かにそう思わせる勢いがあるのも事実である。
一方、iPhoneの出荷台数は9月時点で累計3000万台。全世界で動いているケータイの台数は、IT(情報技術)専門調査会社である米IDCやOECD(経済開発協力機構)などの発表値から推計して、おおよそ20億〜30億台程度と考えると、iPhoneの世界全体でのシェアは、ざっと1〜2%というところ。いずれの数字も正確ではないとはいえ、両者を比較すると1〜2%の市場シェアしか持たないiPhoneが、全体の20%を超えるトラフィックを占有していることになる。
読者の中には、この構図から、インターネットでのP2P(ピア・ツー・ピア、サーバーを介さずに端末同士が直接データをやり取りする高速通信技術)によるファイル交換を思い出す方も少なくないだろう。10%のユーザが90%のトラフィックを占有しているとも言われる現状に、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)は悲鳴を上げ、トラフィック制御(P2Pファイル交換によるネットワーク利用の制限)を打ち出す事業者も登場した。
割合や伝達形態に違いはあれど、通信キャリアからすれば深刻な状況であることに違いはない。特に日本のiPhoneの状況に置き換えれば、現状ではiPhoneを独占的に手がけるソフトバンクモバイルの全契約数のうち、iPhoneが占める割合は5〜10%程度あるだろう。単純な掛け算で考えても、彼らの事業運営に相当強烈なインパクトを与えているであろうことは、容易に想像がつく。
猫も杓子もAndroidやLiMo
ことほどさように悩みの種であるスマートフォンだが、ケータイ産業としてこの動きから逃げ出すわけにはいかない。出荷台数こそまだ立ち上がったばかりというところだが、今後のケータイ利用のトレンドとなっていく可能性があるからだ。
理由の1つは、スマートフォンがケータイの高付加価値利用の呼び水になりうる、という期待。パソコンとの親和性が高いスマートフォンは、ケータイの業務利用をさらに進め、法人・ビジネス用途を拡大する可能性がある。
日本をはじめ、個人市場が飽和しつつある先進国のケータイ産業にとって、法人市場は安定的な収益や一定のARPU(契約当たり月間平均収入)獲得が期待できる市場であり、また特にデータ通信に関しては成長余地がまだ残されていると期待されている。
今年7月、ケータイ端末向けOS(基本ソフト)開発大手の英シンビアンのプロフェッショナル・サービス部門を、コンサルティング・システム開発大手の米アクセンチュアが買収したことからも、法人市場への期待がうかがえる。
一方、個人・法人を問わず、サービスプロバイダー側の都合もある。スマートフォンが普及すれば、アプリケーションをケータイ向け、パソコン向けと分けて開発する必要がなくなる(もしくは小さくなる)。技術面では次世代の仕様であるHTML5.0がこの流れをサポートしているし、開発コストやリードタイムの圧縮が図られる可能性を考えれば、1つのトレンドとなっていく可能性は十分にある。
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1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。







