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科学技術予算の事業仕分けを考える

3兆6000億円は本当に日本のために使われているのか?

  • 宮田 秀明

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2009年12月11日(金)

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 私のオフィスは工学部3号館にある。安田講堂の左後ろに位置するので、本郷キャンパスの真ん中に近い。場所はいいのだが、昭和15年に建てられたものなので老朽化が進んでいる。窓のサッシは鉄製で錆びだらけになっていて、開けることができない窓が半分以上ある。そんな工学部3号館の目の前、つまり安田講堂の真後ろにあるのが理学部1号館だ。10年ほど前に新築された14階建ての立派な建物だ。

 11月25日夕方、この理学部1号館で行われたのが、ノーベル賞受賞者の方々による緊急声明の記者会見だった。「事業仕分け」の削減・凍結対象になった事業のなかに科学技術予算に関係するものがたくさん入っていたので、「科学技術予算を減らすことは国家の将来を考えるうえで大変問題である」という意見を述べられたのだ。

科学技術予算3兆6000億円の使い道は有効なのか?

 しかし、全部で3兆6000億円にもなるという科学技術予算は本当に有効に使われているのだろうか。この予算を使った研究開発によって、日本の科学技術は本当に進歩しているのだろうか。削減すべきものもあるのではないだろうか。

 研究開発の費用対効果を測ることは大変難しい。1000万円の予算で行った研究が100倍の10億円の予算を使った研究の成果を上回ることもある。100億円かけた研究開発プロジェクトが完全な失敗に終わることもある。

 しかし、ある組織の研究開発活動をまとめた段階で、費用対効果は正しく測られるものだ。民間企業なら研究開発費は売り上げの2~8%が普通である。この費用が新商品の開発に貢献して競争力を保ったり拡大できなければ、民間企業は生きていけない。

 日本全体で考えれば、日本の研究開発が何とか国際競争力を保ち続けているのは、民間企業中心でビジネスとして営まれている研究開発活動によるものと考えられる。

 民間企業における研究開発に比べれば、国立研究所や大学の研究開発の費用対効果はかなり低いだろう。数年前、あるエレクトロニクスメーカーの方が私のオフィスに来て言った。「大学の研究には全く期待していません。人材だけですね、期待するのは」

 分野によっては、そうでない場合もあるし、確かに人材育成は行っている。大学よりひどいのは国立研究所の研究の生産性かもしれない。

コメント27件コメント/レビュー

事業仕分けというのは,国民の溜飲を下げるのには大変役立っていると思うし、密室でこんな風に予算が決まっていたんだと、「劇場化」政治の典型である。日本での最大の問題は、専門家による正当な冷静な評価システムがないことである。実際の科学・技術はあらゆる分野で専門化が進行して、専門以外であれば周辺領域でさえなかなか適切な評価ができないほどである。今回のプロジェクトを支える技術の側面、その産業への波及効果、さらにそのプロジェクトの科学としての目的である。そして、どの程度の分野に波及するのかということである。たとえば、今年のTOP500は改めてクレイが登場してきた。そして、このプロジェクトから撤退したNECはIntelと共同開発を進めることになった。つまり、これが日本の将来に対する安全保障にきわめて関わっていることである。そしてそれを支える新しい分野を支える技術者、科学者を育てる環境作りが重要なのである。国の安全保障と触れたのでこの金額がどんなものかと言えば、イージス艦一隻分である。(2009/12/13)

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事業仕分けというのは,国民の溜飲を下げるのには大変役立っていると思うし、密室でこんな風に予算が決まっていたんだと、「劇場化」政治の典型である。日本での最大の問題は、専門家による正当な冷静な評価システムがないことである。実際の科学・技術はあらゆる分野で専門化が進行して、専門以外であれば周辺領域でさえなかなか適切な評価ができないほどである。今回のプロジェクトを支える技術の側面、その産業への波及効果、さらにそのプロジェクトの科学としての目的である。そして、どの程度の分野に波及するのかということである。たとえば、今年のTOP500は改めてクレイが登場してきた。そして、このプロジェクトから撤退したNECはIntelと共同開発を進めることになった。つまり、これが日本の将来に対する安全保障にきわめて関わっていることである。そしてそれを支える新しい分野を支える技術者、科学者を育てる環境作りが重要なのである。国の安全保障と触れたのでこの金額がどんなものかと言えば、イージス艦一隻分である。(2009/12/13)

やり玉に上がったスパコンに関しては戦略なんて全く立案しておらず、いきなり「スパコン作ろう、予算はこう。」という馬鹿げた経緯だったようです。それが見抜けない仕分け人では無かったので尤もな内容の厳しい指摘(報告書のPDF参照)になり、それに対して何も反論できない(戦略無いから当然)という結果を持って予算凍結となったようです。予算復活させるなら当然、戦略立案(要不要も含め)からやり直すしかありません。批判の通り順序が逆ですがそういう手順でやるしかないでしょう。でないと来年の仕分けで当然また予算凍結です。さすがに来年は誰も助けてくれないと思います。今年は単なる執行猶予(挽回のチャンスを与えようという)ですよ。(2009/12/13)

研究活動なりクリエーティブな活動というのは、自由な発想で自由に使えるお金1000万円のほうが、目的と期間を縛られて制約だらけのお金10億円より貴重なのでは、と思います。中島飛行機を創業した中島知久平が、海軍だとやりたいことがあっても年度予算にしばられ、申請してもらえるのがやっと次の年度、日進月歩の飛行機の世界でこれではやってられない、たとえ金額は少なくても自分の裁量で自由な時期に自由に資金を投入できる民間会社でやろう、というのが海軍を辞めて中島飛行機を起業した理由であることを考えると、役所の予算というのは研究には最も不向きな金ですね。(2009/12/13)

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