私は、以前にこの連載において、「第一原則:メディアは広告で動くのです」というタイトルで、消費者が無料、あるいは大幅に値引きされた価格で享受できる「マスメディア」というビジネスモデルを成立させてきたのは、広告という後ろ盾のおかげである、という話をしたことがあります。
『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』という1890円の価格がつけられた単行本が、今、売れています。この書籍の中でも、マスメディアの広告ビジネスモデルは、「一世紀以上の歴史を持つ、消費者がコンテンツを無料で得るために、第三者(広告主)が費用を支払う三者間市場」として、かなりのスペースを割いて取り上げられています。
今回は、「フリーモデルの先駆者=マスメディアと広告」の未来を考えるという視点で、この2009年のビジネス書スマッシュヒットを考察してみたいと思います。
「フリー」が破壊するマスメディアビジネス
「フリー(無料)」ビジネスの先駆者的存在であるマスメディアの広告収入は、現在、凋落傾向にあります。
在京民放キー局5社すべてが2009年4月〜9月で対前年比減収となり、電通・博報堂の同時期の決算も経常益が前年比2ケタ減と、厳しい数字になっています。この傾向は世界的なもので、「フィナンシャル・タイムズ」によれば、アメリカでは2009年に入って新聞の広告収入が29%減っており、「ニューヨーク・タイムズ」が年末までに編集部門で全体の8%にあたる100人を削減すると発表するなど、広告収入の落ち込みに対応してのリストラの動きも、数多く見られます。さらには「このままでは新聞に未来はない。NPO化して、公的支援を受けるべき」という主張の論文を、「ワシントン・ポスト」の副社長が発表して話題になっています。
こうした中、ニューズ・コープのルパート・マードック会長兼CEOが、「当社のニュースコンテンツを一銭も払わずに手に入れて、好きなように使う権利があると思っている人がいる」「公正な利用ではなく、泥棒だ」と、グーグルに代表されるネット企業を批判するなど、怒りの矛先は新たな「フリー」へ向けられているように見えます。
果たして、これまで広告マネーが支えてきた、マスメディアのフリーモデルは、インターネットという新たなフリーモデルの主役の登場によって、ついえてしまうのでしょうか?
感情論に流されず、冷静に見るべき
マスメディアの広告枠への需要が供給を大きく上回っていた時代は、もはや完全に過去の話です。紙面や、放送時間といった「枠」を飛び越え、情報が、あふれても、あふれても、受け止めることができる、無限のサイバースペースの出現によって、風景は一変しました。
一方で、限られた紙面、限られた放送時間の価値が、ゼロになることもないでしょう。
現在は、まるでフリーフォールのように見えるマスメディアの減収傾向も、どこかでバランスがとれるはずです。ネットの言論を見ていると、マスメディアへの、批判的な感情が目立ち、「マスメディア崩壊」「マスゴミはもういらない」といった言説が目立ちます。
これまで圧倒的な強者だった存在が、人間っぽい弱さを帯びることによって感じられる、カタルシス効果がそこにあるのは、よく理解できます。これまでミスター・パーフェクトだと思われてきた、プロゴルファーのタイガー・ウッズが、実は自分たちと変わらない、人生のトラブルを抱えていることがわかったことに大喜びして、ひたすらタイガー・ウッズ・ジョークをTwitterなどでつぶやき続ける人々の行為に、とてもよく似ています。
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