「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

エリクソンを駆り立てる危機感

新興市場の誤算と不透明な次世代インフラ投資

バックナンバー

2009年12月17日(木)

1/3ページ

印刷ページ

 年末も差し迫ったところで、世界初の商用LTEサービスの開始というニュースが入ってきた。去る12月14日、スウェーデンの通信キャリアのテリアソネラ(TeliaSonera)は、スウェーデンのストックホルムとノルウェーのオスロで、LTEの商用サービスを開始したと発表した。

 同社のプレスリリースによると、ストックホルムではエリクソンが、またオスロでは中国のHuawei(華為=ファーウエイ)が、それぞれ通信機器を納入した。また端末については、両地域とも韓国のサムスン電子が提供しているという。今後は機器の評価を進め、標準ベンダーの決定を2010年初冬までに行うとしている。

 スウェーデンといえば、世界最大の通信機器ベンダーであり、LTEを牽引するリーダーでもあるエリクソンのお膝元である。LTEの商用化は、今年から来年にかけて、米国と欧州のどちらが先か、と噂されていただけに、まずはスウェーデン陣営の面目躍如といったところだろう。

LTEとGSM両方に手を伸ばす

 一方でエリクソンは、LTEばかりに躍起になっているわけではない。同社は先月末、2G(第2世代)ケータイ規格であるGSM技術の資産を、カナダのノーテル・ネットワークスから7000万ドルで買い取ることを発表した。

 3.9G(ないしは4G)と位置づけられるLTEから数えて2世代前の技術となるGSMは、1990年代初頭に登場したケータイ技術で、欧州を中心に世界の標準となった規格である。当時の日本では国産規格のPDCが採用され、GSMの不採用が日本のガラパゴス化の要因の1つとなった、と指摘されることもある。それほどまでに、実質的な世界標準となった規格だ。

 しかし既に20年近くが経ち、日本を含め先進国の多くが3G技術にスイッチし始めている中、さすがのGSMも先進国においては「時代遅れ」と見なされつつある。発祥の地である欧州でも、欧州委員会が近い将来のGSM廃止を勧告した「GSM指令」を、既に加盟各国に提案しているというのは、前回触れた通り。

 一方でGSMは、実は音声通話とメール程度であれば十分使い物になり、収穫期に入っている「枯れた技術」でもある。そのため「引退勧告」を受けつつも、欧州ではまだ現役であるし、また中国・インド・アフリカなどの新興国ではむしろ主流の規格となっている。

 このGSMの、北米市場における技術と権益を、エリクソンが手に入れた。それはつまり、GSM自体は世界市場においては相変わらず「おいしい商売」であることを如実に物語っている。

 もちろん、既に7月に先行してノーテル・ネットワークスと交わされていた、CDMAおよびLTEに関する資産取得の取引と、今回の取引が、何らかのセット関係にあるとは考えられる。今夏の取引が、11億3000万ドル、今回が7000万ドルで、合わせると12億ドルと「きれいな数字」になるのも、偶然の一致とは言えないだろう。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

クロサカ タツヤ(くろさか・たつや)

クロサカ タツヤ 1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。



このコラムについて

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書

19世紀がヒトとモノ(物質)、20世紀がマネー(金融)のエコノミーだとしたら、21世紀は何か。この質問に対する、有力解の1つは「ビット(情報)のエコノミー」だろう。現実に、中南米やアフリカを視野に入れたケータイの普及という形で、ビット・エコノミーを構築しようと国や企業が動き始めている。「ガラパゴス」日本にチャンスはあるのか。世界で思惑がうごめくケータイ産業の最前線を描く。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内