「川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」」

あなたの机の上が“工場”になる時代

三次元プリンター普及が変える日本のモノづくり

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2009年12月21日(月)

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 今回はテレビや雑誌などでも紹介され、目にする機会の増えてきた“立体プリンター”が切り拓く世界をご紹介します。「立体(三次元=3D)プリンター」と聞いて、「何それ?」と思う方もいらっしゃると思うので簡単にご説明いたしましょう。

 例えば目の前にメロンがあります。それをカメラで撮って三次元データに変換し、特別なプリンターに送ってをクリックすると、数時間のうちに色や形や質感までそっくりそのままの立体コピーメロンが出力されるという魔法のような代物です。

 この道具が導き出す可能性に早くから目をつけ、サブカルチャーの力を注入して日本の製造業を活性化させるパスを考える道先案内人、相馬達也氏に今回はお話を伺います。氏が事務局長を務める3D-GAN(3次元形状を活用する会)という組織は、3Dプリンターの使い方から使い道まで、啓蒙・普及を促す会員制の非営利組織です。

3D-GAN(3次元形状を活用する会)の相馬達也氏

 秋葉原UDXにあるオフィスは製作現場兼サロンとして使われており、会員が常時詰めて銘々のアイテムを検討しています。オフィスにはアニメキャラやら、機械部品、ジュエリーの原型、人骨見本から歯の詰め物まで多種多様な業界の試作品が転がっています。取材を始めると、偶然そこに居合わせた一人の造型作家を紹介されました。

 「彼はデザイナーだったのですが、気づいたら“メーカー”になっていたんです」と紹介されたそのお方、金津鬼(KANETSUKI)氏が得意満面の笑顔で見せてくれたのは、小指大のお人形シリーズ「一寸フィギュア」です。箱にギッシリ並べられたお人形は、よく見ると1つずつ顔や仕草、服装や持ち物が異なっています(金津鬼氏のサイトはこちら)。

「一寸フィギュア」。金津鬼氏が設計し、三次元プリンターで造形した作品
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 双六のようなボードゲームに用いるアイコンなのだそうで、愛好家の間では人気上昇中だとか。もともとはテーブルトークRPGという仮想空間ゲーム上のアバターでしたが、リアルに出てきたわけです。1体を1000円で売り出したところ、思いのほか受注が舞い込んで嬉しい悲鳴なのだそうです。量産用の金型まで起こして夢はどんどん広がる感じ。

 以前は、CGデザインの孫請け外注みたいな仕事をされていた彼ですが、今では「リアル界」の「完成品」を企画・製造・販売するという身分になり、「毎日が充実しています」と顔に書いてありました。彼の設計室は自宅のPC、製造工場は冷蔵庫大の3Dプリンター1台、販売網はネットと行きつけのショップ、それで一連のバリューチェーンが完結した立派なメーカーとして成立しています。

 プロシュ−マー化の流れがソフトの世界では当たり前になっています。口コミサイトからSNSなどCGM(Consumer Generated Media)の世界が花開いています。広義にオープンソースと言う意味ではOSのLinuxまで広がる「みんなで作る」世界です。そのウェブは、もはや2.0を卒業し3.0とも言われるクラウドの時代に移行中。「あちら側」が、あらゆる情報処理に関するリソースを縦横無尽に仮想化して流用しまくる3.0な段階に進化しつつある一方で、リアルのものづくりの世界は少し遅れて2.0が到来している段階です。

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著者プロフィール

川口盛之助
(かわぐち・もりのすけ)

川口盛之助

慶応義塾大学工学部卒、米イリノイ大学理学部修士課程修了。日立製作所で材料や部品、生産技術などの開発に携わった後、KRIを経て、アーサー・D・リトル(ADL Japan)に参画。現在は、同社プリンシパル。世界の製造業の研究開発戦略、商品開発戦略、研究組織風土改革などを手がける。著書に『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社)がある (写真:山西 英二)



このコラムについて

川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」

このコラムでは、商品の機能やデザインにフォーカスし、その商品が生まれた発想の起源を探ります。特に日本の商品に密かに隠れたいかにもニッポン的な「和」のテイストに注目しながら、日本のものづくり文化に息づく競争力の源泉をひもといていきます。

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