景気の二番底も懸念される中、新年を迎えた。デフレ、マイナス成長、少子高齢化…。日本の厳しい現状を表現する言葉には事欠かない。
しかし、暗い話ばかりではない。日本には未来を切り開く「技術」という武器がある。資源の乏しい日本がその技術力を磨き上げて戦後の荒廃から立ち上がったように、「100年に1度の危機」によって企業が身をすくませる陰で、力強く芽吹こうとしている技術がある。
「日経ビジネス」では2010年1月4日号で「日本を救う未来の技術」と題する特集をまとめた。その連動企画として、日経ビジネスオンラインでは、識者の意見、注目技術の動向などを掲載する。
第1回目となる今回は、1973年にエサキダイオードの発明でノーベル物理学賞受賞をした江崎玲於奈氏(現横浜薬科大学学長)のインタビューをお届けする。
―― 科学技術とは我々人間にとってどういう意味を持つものだとお考えでしょうか。
江崎 文明を維持、発展させる原動力だと思います。一口に「科学技術」と言いますが、正確には科学と技術は違うものではないでしょうか。考え方として別々にとらえた方がいいように思います。
科学とはともかく新しい知識を生むことが重視される。何か新しいものを生むものです。それに対して、技術は科学が生んだものを育てるというプロセス。科学を応用したいわゆる工業的な技術なんですね。ですから技術は富を生まないといけない。富を生まない技術は価値がないわけです。一方、科学は直接的には富を生まなくてもいい。
「科学技術立国」は英語にできない
1925年生まれ、84歳。47年東京大学理学部物理学科卒業。同年神戸工業入社、56年東京通信工業(現ソニー)、60年米IBM、日米の企業で研究活動を続けた後、92年筑波大学学長、2000年芝浦工業大学学長、2006年から横浜薬科大学学長。1973年エサキダイオードの発明でノーベル物理学賞受賞
科学技術を英語で言おうとするとどうなるか。サイエンステクノロジーではない。サイエンス・アンド・テクノロジーとかサイエンス・ベースド・テクノロジーといった訳し方になるのでしょう。もっとも、それも違うという人だっているかもしれない。日本の目指す方向として「科学技術立国」というような言い方をよくしますが、はっきりと英語に翻訳できないわけです。
サイエンスとは人間の理性、知性の産物です。世界と交流、コミュニケートするうえで、きちんと西洋に翻訳できるような言葉を使うべきだと思います。日本が何をしていきたいのかが分からないと世界で理解してもらえません。
―― 日本では民主党政権が実施した行政刷新会議の事業仕分けをきっかけに、日本の科学技術のあり方がクローズアップされました。
江崎 いろんな論議がありましたが、僕は事業仕分けそのものは決して悪いことではないと思っています。
科学技術予算にも当然、無駄はある。「科学技術」は錦の御旗ではない。効率を良くしようというのは間違っていません。公開の場で評価するようなことは今までなかったわけですから、それを初めてやった行政刷新会議には意味があったと思います。
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