「日本を救う夢の技術」

エビちゃんの双子の妹はなぜ看護師なのか

iPS細胞の研究者が突き当たった「ゲノム創薬の限界」

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2010年1月8日(金)

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 「日経ビジネス」では2010年1月4日号で「日本を救う未来の技術」と題する特集をまとめた。その連動企画として、日経ビジネスオンラインでは、識者の意見、注目技術の動向などを掲載する。

 今回取り上げるテーマは、人間の生命に直接的に関わる「医療システム」。ソニーコンピュータサイエンス研究所の桜田一洋研究員に話を聞いた。


 ―― 協和発酵工業(現、協和発酵キリン)やバイエル薬品で創薬の最前線を歩まれ、再生医療の分野ではiPS細胞の作成に成功されるなどの研究成果もあげてこられました。なぜ今、ソニーの研究所に籍を置くことにしたのですか。

桜田 一洋(さくらだ・かずひろ)氏
1986年大阪大学理学部卒。協和発酵工業を経て2004年より日本シエーリングのリサーチセンター長。バイエル薬品との合併に伴ない、2007年までバイエル薬品執行役員、神戸リサーチセンター長。2008年より現職(写真:都築 雅人、以下同)
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 桜田 2008年9月から、こちらの研究所に所属しています。転じた最大の理由は、ゲノム創薬など先端基礎科学で実現できることの「限界」を感じたからです。

 科学誌ネイチャーは2008年、基礎生物学に投じられた膨大な研究費の割に、その成果として新たな治療法や予防法が生まれていないという厳しい評価を下しました。これはまったくその通りだと思います。

 1970年代に米国のニクソン政権がガン撲滅を宣言し、以降、世界中の学術機関や研究機関が莫大な研究費を投じていますが、40年間が経過しても「ガン撲滅」は成功していません。革新的な新薬が生まれにくくなっていることは疑うべくもありません。

先進国の医療システムはもはや危機的な状況

 もちろん、こうした先鋭的な基礎研究を続けて行くことはとても大切です。ですが、効果が乏しい目標に向かって、無尽蔵に資金を投じ続けるわけにはいきません。新たなアプローチで、医療というものを考えなければならないところにきています。

 しかも、時間がないのです。と言うのも、先進国の医療システムはもはや危機的な状況に陥りつつあるからです。

 例えば米国の2007年度の医療費の総額は220兆円。これはGDP(国民総生産)の17.6%に当たります。30秒に1人の割合で医療費が原因で破産していると言われています。米オバマ大統領は、こうした医療システムの現状に強い危機感を持っています。

 ―― 17.6%というのはすごい数字です。軍事費(3〜5%)よりも圧倒的に大きい。

 日本も例外ではありませんよ。

 医療費は年々上昇しています。加えて、今後の人口推移をシミュレーションしてみると、2025年と2050年にそれぞれ大きな危機を迎えることになります。人口が極端に多い団塊世代や団塊ジュニア世代が医療や介護などを必要とするようになるためです。

 備えのためには、介護施設などのインフラを整える必要があります。そのためのコストが必要ですが、話はそう単純ではありません。

「別の手法」で医療コストを下げなければ

 縁起の悪い話で恐縮ですが、団塊世代がこの世を去ってしまえば、そうしたインフラは余剰なものになってしまいます。一過性の需要増加に、箱モノの施設を増やすことでは対応できないのです。

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著者プロフィール

池田 信太朗(いけだ・しんたろう)

日経ビジネス記者。



このコラムについて

日本を救う夢の技術

 今、日本人は「未来」を失いつつある。経済はデフレの波に襲われ、財政は火の車、年金は崩壊の危機にある。世界第2位の座を守ってきたGDP(国内総生産)も中国に抜かれる。少子高齢化が劇的に進行し、人口は減少の一途をたどる。聞こえてくるのは確かに暗い話ばかりだ。
 しかし、よく考えてほしい。我々には培ってきた技術がある。蓄積された膨大な金融資産がある。これらの蓄えを、再び未来を語れる社会を作る投資に回せるか。期限は、財政破綻が現実味を帯び始める2015年。残された時間は少ない。

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