「Web2.0(笑)の広告学」

その広告宣伝費が「仕分け」されないために

「調達担当役員」の管轄下で広告が戦っていくために必要なこと

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2010年1月12日(火)

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 新年早々、老舗クルマ雑誌『NAVI』の休刊が発表されるなど、2010年もメディア、広告業界は厳しい状況が続いています。アメリカ最大の広告業界誌Advertising Ageは、広告業界を取り巻く変化のひとつとして、クライアントサイドの広告キャンペーンに関する意思決定のキーマンが、従来のCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー=マーケティング担当役員)から、調達担当役員(Procurement Officer)になりつつあり、この傾向は2010年も続くであろうとレポートしています。

広告も、文房具の調達と同列?

 広告予算に関しても企業の他の支出と同様にROI(Return on Investment=投資回収率)が厳しく精査される中で、より効率的なマーケテイングプランを判断する際に、調達担当役員の采配がマーケテイング担当役員のそれよりも重視される流れは、たしかに理にかなっている、と見ることもできるでしょう。しかし一方で、ブランドと消費者を結ぶコミュニケーション回路をつくりだす作業が、オフィスで使う文房具の調達と同列に、効率性だけで判断されていいものか、といった疑問の声も上がっています。

 広告代理店へのオリエンテーションの際の文書が、製造原料のメーカーに使われるのと同じフォーマットで作成する広告主が2009年は増えた、という話が、アメリカ広告業協会のレポートに「不快なトレンド」として紹介されていたそうです。

 広告プランの価値は、他の調達物資とは異なり、単なる数字だけでは測りきれないものなのに、といった広告代理店側の不満が溜まっているのは容易に想像できます。

 しかし、広告主にとっての本当の利益に果たしてなるのか否かは別として、目に見える数字で効果を示していかないとマーケティング予算の継続的な獲得は厳しくなっています。

 アメリカ同様に景気後退に苦しむ日本でも、同じ流れを見ることが増えています。昨年末に実施され、話題となった行政刷新会議の「事業仕分け」。この中での、仕分け人と役人のやりとりを見ていて、アメリカの広告業界のさらされている「ルールの変更」と同じだなと感じました。

「具体的な数字の根拠を示してください」
「大勢の人から感謝の声が寄せられる非常に意義深い事業です」
「ですから、具体的に、どういう指標で、どのような効果があったのか、数値で示してください。意義深いといった言葉ではなく。この事業の理念はよくわかっています」

 こうしたチグハグな議論の末に「事業廃止」「予算の大幅な縮小」などとズバズバ斬られていきました。これは、広告宣伝費の明日の姿、という気がしてなりません。

「事実やデータに基づく選挙戦をやりたい」と言ったオバマ

 昨年12月にアメリカ、シカゴで開催されたSearch Engine Strategies(SES)に参加してきたサイバーエージェント社員から、興味深い話を教えてもらいました。

 それは、オバマ大統領の選挙戦における、広告キャンペーンのマネージメントについてです。

 オバマ大統領は、本格的な選挙戦に突入する前に、カリフォルニアのグーグル本社で講演して、その際に「私は、感覚に頼る大統領選挙をやりたくない。事実やデータに基づく選挙戦をやりたい。だから、エンジニアの皆さんの助けが必要だ」と呼びかけたのだそうです。そして、それに応じてオバマ候補の選挙チームに参加したのが、ダン・シロカー氏であり、彼はグーグルではブラウザのクロームのプロダクトマネージャーをしていた人物です。彼が、シカゴでのSESカンファレンスでキーノートスピーチを行い、その中で、オバマの選挙戦におけるデータ解析の役割について細かく話したのです。

 「感覚に頼るのではなく、事実やデータに基づいてやりたい」というのは、まさに、現在、多くの広告主が感じていることであり、それが、AdAge誌の伝えている調達担当役員がCMOに変わってキーパーソンになっている背景にあることはご理解いただけると思います。

 では、具体的にどのようにして、感覚に頼るのではなく、事実やデータに基づいた選挙キャンペーンを実施したのでしょうか。そこには、現在の広告会社や広告主にとってのヒントが隠されているはずです。

計測可能な成功を定義し、常にテストを行い、セグメントごとに評価する

 大統領選挙の究極のゴール、コンバージョン指標は「選挙に勝利する」ということです。しかし、当たり前ですが、それをモノサシにしたのでは、キャンペーンのチェックになりません。途中のプロセスを計測していくことができず、実施している施策が有効かどうかわからないからです。通常の広告キャンペーンにおいても、「商品が売れたかどうか」という最終コンバージョン以外のモノサシをきちんと設定しておく必要があります。

 シロカー氏のチームは、キャンペーンを評価する中間チェックポイントを、「Webサイトへの訪問者を増やす」→「メールマガジンの登録者を増やす」→「寄付金を増やす」といったように、さまざまなフェーズに分けて設定していました。

 こうした中間チェックポイントをデイリーで追うことによって、適宜キャンペーン施策を見直していったのです。

 また、従来の広告のクリエイティブは、最終的に「このコピーで、このビジュアルで行こう」と決定したら、その1案と心中するような覚悟が求められてきました。しかし、デジタルの世界においては、広告クリエイティブを差し替えていくことが比較的容易です。複数パターンのWebページを用意して、実際のユーザーが使用しての効果を比較する「A/B test」と呼ばれる手法が、広告においても使われています。

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著者プロフィール

スダシン(須田 伸 すだ・しん)

須田 伸

サイバーエージェント ネットトレンド研究室長/コミュニケーションディレクター。1992年株式会社博報堂入社。CMプランナー/コピーライターとして「ACC賞」「日経広告賞」「消費者のためになった広告コンクール」などの広告賞を受賞。 1998年カンヌ国際広告祭ヤングクリエイティブ・コンペティションに日本代表コピーライターとして出場。2000年にYahoo! Japanに転じてコミュニティサービス担当プロデューサーとして「ヤフー・チャット」を立ちあげ「ライブチャットイベント」では初代「Y! Chat MC」として活躍。2002年より株式会社サイバーエージェントに勤務。同社の企業ブランドを一新する。現在は同社ネットトレンド研究室長。ブログとインターネット広告に関する著書として『時代はブログる!』(アメーバブックス)がある 。「サイバーエージェント/アメーバ」は、2008年度グッドデザイン賞を受賞。



このコラムについて

Web2.0(笑)の広告学

ブログやSNSのように、普通の人がインターネットで気軽に情報を発信するようになったことが「Web2.0」という流行語(バズワード)を生みました。Web2.0の切り口には、技術も、商売も、哲学もありますが、このコラムでは、基本的に「広告」という視点で考えていきます。筆者はテレビ広告業界を経験後、サイバーエージェントに転じ、ネット広告の世界で活躍している須田 伸氏です。

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