「原発漂流」

原発の黒子、表舞台へ

モノづくりの力に定評、世界各地から受注が舞い込む

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2010年1月22日(金)

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 昨年の11月25日。三菱重工業の二見工場(兵庫県明石市)では、原子炉の上蓋を作り上げたところだった。ほかのメーカーが建設した米サウステキサスプロジェクト電力の原子力発電所向けの主要機器だ。出荷前ということもあり、真新しい上蓋にはビニールシートがかぶせられている。

 三菱重工の国内での受注実績は申し分がない。これまで関西電力の美浜原子力発電所や九州電力の玄海原子力発電所など23基を建設。昨年12月には北海道電力の泊発電所3号機が営業運転を開始し、24基目のプラントとなった。

 それに対して、海外で原発そのものを建設した実績はない。海外では“黒子”として多くの実績を積んできた。米国向けに原子炉容器の上蓋を12基、蒸気発生器を4基、加圧器を1基を納入。世界各地の原発に様々な主要機器を納めてきた。

下請けに甘んじるつもりはない

 世界各地から受注が舞い込むのは、三菱重工のモノづくりの力に定評があるからだ。原発は機器にトラブルが生じると多大な損害を及ぼすために、高度な品質が求められる。また納期が遅れると建設コストが膨らむために、確実に納期を守ることが必要だ。同社はこうした要求に応え続けることで、世界の原発メーカーや電力会社の信頼をつかんできた。

 品質を確保する上で最大の武器となっているのが「スーパーミラー」という大型複合工作機械だ。これは10メートルを超える設備であり、同社の工作機械部門が作り上げた。従来は原子炉容器を横に倒して加工していたため、精度を高めるのが難しかったが、スーパーミラーは巨大な原子炉容器を立てたまま、加工できる。そのため、10ミクロン(ミクロンは1000分の1ミリメートル)単位の非常に高精度の加工ができるようになった。

三菱重工業の原子力事業本部長である澤明・代表取締役
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 しかし同社は原発メーカーの下請けに甘んじるつもりはない。モノづくり力を武器に、自らが元請けの原発メーカーとして世界に打って出ようとしている。

 代表取締役である澤明・原子力事業本部長は「2020年までに世界で130基の需要があるだろう。我々は年間2基のペースで受注していきたい」と意気込む。それに備えて約150億円を投じて、二見工場を拡張する。2011年下期には年間2基を生産できる体制にする計画だ。

 三菱重工が単独で世界展開を決断することになったのは、ある敗戦がきっかけだった。

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著者プロフィール

大西 孝弘(おおにし たかひろ)

日本経済新聞証券部。



このコラムについて

原発漂流

地球温暖化と、エネルギー需給の逼迫懸念に対する解決策として、原子力発電所に対する期待感が高まっている。「原子力ルネサンス」という言葉に代表されるように、世界各国の政府や関係企業は相次ぎ、原発の新増設計画を打ち出している。しかし、政策や技術動向、エネルギー需給の不確実性は高まりつつあり、今後、原発メーカーや電力会社は事業戦略の巧拙を厳しく問われることになる。荒波にどう挑むのか−−。企業首脳のインタビューを絡めながら、原発事業の最前線を追う。

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