「経営の情識」

持ち出せない「持ち歩きPC」

「495グラム、すごく小さいでしょう!」ができないジレンマ

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2010年1月29日(金)

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 「ところで御社は、ノート・パソコン(PC)の持ち出しについてどうしていますか」

 「仕事に使うノートPCであれば原則として持ち出しはできません。どうしてもという場合、申請を出す必要があります」

 「携帯しやすいPCを作って売っているのに、なんだかおかしくないですか」

 「うーん。それはそうですが、顧客情報を入れたPCを持ち出して万一無くしてしまったら新聞沙汰ですからねえ」

注目集まる495グラムPCなのだが

 PCメーカー各社がいわゆる“春モデル”の発売を始めた。上記の会話はPC春モデルを売り出したメーカー数社の社員とのやり取りをまとめたものである。

 1月19日付の朝刊を見ると、日本経済新聞も朝日新聞も、春モデルについてかなり大きな記事を掲載していた。その数日前、筆者は1月15日付の本欄で、PCについて「新聞においてはさほど大きな記事にならなくなっている。明らかに最近は、インターネットやスマートフォンの記事のほうが目立つ」と書いてしまった。

 間抜けなことになったと反省しつつ、新聞記事を読むと、日経は「2台目需要狙う」、朝日は「モバイル主戦場」といった見出しを付けている。春モデルは小型軽量高機能が売り物で、メーカー各社は用途の1つを「PCを持っている人が持ち歩きしやすい2台目を買うこと」と見ているわけだ。

 とりわけ注目されるのは、富士通が売り出す、重さ495グラムのマシンのようで、日経も朝日も、このPCの写真を掲載していた。ところが、不思議なことに、富士通もまた、PCの持ち出しについて社員に制限をかけている。

 画期的に軽いPCを売り出したにもかかわらず、当の社員はPCを自宅に持ち帰ることを規制されているし、客先に持ち込むことはもっと難しい。本来なら、全社員が495グラムのPCを持ち歩き、会う人かまわず、「すごく小さいでしょう」と宣伝しなければならないところである。

 PCメーカーなのに、PCを自由に持ち歩けない。これは富士通だけの話ではない。

PCを持ち歩けないIT技術者たち

 以上の文章において、一般消費者向けと企業向けとの違いを曖昧にしたままであった。PC春モデルは一般消費者向けの製品であり、そのビジネスを手掛けているのはPCの事業部門である。

 これに対し、PCの持ち歩きが危険視されているのは、企業向けのビジネスを手掛ける営業部門やシステム開発部門のほうである。顧客向けの提案書や、顧客システムの設計情報を扱う社員は、PCにそうした情報を入れて自宅に持ち帰ることは原則としてできない。

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著者プロフィール

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BPビジョナリー経営研究所研究員、コンピュータ・ネットワーク局編集委員。1985年に記者となって以来、情報システム関連のテーマを取材し続けている。関わった媒体は「日経コンピュータ」「日経ウオッチャーIBM版」「日経ビズテック」「日経ビジネス」「経営とIT」など。「ビジネスとテクノロジーの一体化」に最大の関心を寄せる。

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