「宮田秀明の「経営の設計学」」

今の日本に必要な「五つの国家戦略」

日本は“下山”することなく“登山”を継続せよ

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2010年1月29日(金)

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 鳩山内閣の施策にはなかなかいいものもあるし、よく勉強して行動している閣僚がいて、そんなに悪くないかもしれない。しかし、需要者サイドに向けたバラマキ的な施策が多すぎるというのは大勢の意見だ。市民にしても企業にしても、インセンティブをもらったり優遇されただけで、元気が出たり、人生が富かになったり、企業が大きく成長するわけではない。

 大きなビジョンが示され、協力し合ってそのビジョンを実現できれば、インセンティブの10倍も素晴らしいことが、一人ひとりに与えられることを信じることから始めたい。そして辛抱強く努力したり、新しいことに挑戦したりして、その結果としての成果を国民全体で分け合いたいと思うようになりたい。高度成長時代には、このような気持ちを国民全員が共有していたと思う。

 今の日本に一番欠けているのは、将来ビジョンだと思う。年が明けて、久しぶりにテニススクールに行った帰り、車のテレビから聞こえてきたのは、五木寛之さんへのインタビューだった。はっきり言って、残念な思いがした。彼はこんなことを言っていた。

 「国の歴史は山登りみたいなものです。日本は山に登って、今は下山中ですから、いい下山の仕方をして国の仕上げをしなければいけません。下山中に転ばないように」

日本が登らなければならない新しい山

 国も企業も人も、永遠に山に登り続けなければならないと私は思っている。時々下山しなければならない局面に遭遇することもあるだろう。しかし、いつも新しい山を探し求めて発見し、改めて登り続けて、いつまでも進歩への努力を怠らないようにしなければならないのではないか。

 進歩のベクトルは、時代とともに変わるものだ。21世紀になってそのベクトルをどの方向に向けるかの暗中模索が続けられているのが現代の一番中心的な姿なのかもしれない。

 新たに登らなければならないのはどの山なのか。新しいビジョンは何なのか。
 
 社会福祉や医療や教育のインフラも大切だが、製造業には大きな変革を伴う成長が求められているし、サービス業にはブレークスルーが必要だ。環境と資源エネルギーに関しては、一番大きな、一番賢い世界規模の経営が求められている。

 たくさんの新しい山へ登らなければならない。どのように登山を成功させるかが大切である。そのために戦略を立てることが急がれている。その意味では、民主党政権が国家戦略室を設けたのはいいことだ。さらにスタッフを増強するそうだし、是非成果をあげてほしい。

 少し大胆だが、私なりに五つの国家戦略を挙げてみようと思う。

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著者プロフィール

宮田 秀明 (みやた ひであき)

宮田 秀明

1948年生まれ。1972年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士修了。同年石川島播磨重工業(現IHI)に入社、77年に東京大学に移り、94年より同大教授。専門は船舶工学、計算流体力学、システムデザイン、技術マネジメント、経営システム工学。世界最高峰のヨットレース「アメリカズ・カップ」の日本チーム「ニッポンチャレンジ」でテクニカルディレクターを務めた。著書に『アメリカズ・カップ―レーシングヨットの先端技術―』(岩波科学ライブラリー)、『プロジェクトマネジメントで克つ!』『理系の経営学』(日経BP社)など



このコラムについて

宮田秀明の「経営の設計学」

経営には「論理」が必要である。論理を積み重ねた理系思考がイノベーションを育む。技術力を最大限に生かし、プロジェクトをまとめ上げ、新しいビジネスを創造する。「理系の経営学」を提唱する東京大学の宮田秀明教授が理系の視点による経営の要諦を語る。

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