「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

「主役の不在」、そこでどうする日本勢

世界最大規模の携帯電話展示会を終えて

バックナンバー

2010年2月25日(木)

1/3ページ

印刷ページ

 前回に引き続き、スペイン・バルセロナで開催されたケータイ産業の世界的な展示会「モバイル・ワールド・コングレス(Mobile World Congress、以下MWC)」の様子をレポートする。

ノキアが消えた?

 先週の本連載では韓国のサムスン電子や中国のHuawei(華為=ファーウエイ)といった、日本を除くアジア勢の躍進と成熟を伝えたが、従来ケータイ産業では北欧企業がその中核をなす存在であった。フィンランドのノキアやスウェーデンのエリクソンといった企業がケータイの端末や基地局の製造と販売、あるいは技術標準化の中心にいたことは、本連載をお読みの方はもちろん、ケータイ産業に興味のある方なら多少なりとも耳にしたことがあるだろう。

 MWCにおいても、両社はこれまで「顔役」のような存在だった。

 しかし今回、両社のプレゼンスは明確に分かれつつあった。まずエリクソンだが、こちらは今回も、合弁会社のソニーエリクソンが発表した新しいAndroid(アンドロイド)端末となる「Xperia(エクスペリア) X10」を大々的に展示し、また本業の基地局販売でも北米市場でのLTEをはじめとした積極的な攻勢をアピールするなど、その健在ぶりは相変わらずだった。Huaweiが成長著しいとはいえ、知的財産も含めて、引き続きケータイ業界を牽引するという姿を見せつけた格好である。

 一方、端末販売で世界一を誇っているノキアは、子会社のノキアシーメンスこそLTEやバックホール(基地局間を結ぶネットワーク)を中心に大規模な展示を行い、着実な事業展開を見せていたものの、ノキア本体での出展は会場外に別途設けられたスペースでの展示にとどまった。その結果、新製品の展示はおろか、おなじみのノキアのロゴさえも会場から姿を消し、ノキアそのものの存在感は皆無と言っていい状態だった。

 実は「ノキアがMWCの出展を見送るらしい」という噂は、昨年末頃から業界では広く知れ渡っていた。ノキア自身からは明確なコメントが出ているわけではないのであくまで推測だが、このところノキア製品の出荷が先進国で急速に落ち込みつつあり、ノキアの事業全体が大きな曲がり角に来ている中で、MWCに積極的に参加するメリットや意義が見いだせなかったのだろう。

 なにしろノキアの将来に関する憶測は、ここ最近の資本市場でも枚挙に暇がない。そろそろ身売りするのではないか。あるいはかつて米クアルコムがそうしたように製品開発から知的財産管理を中心に据えた事業体にするのではないか。さらにはiPhone(アイフォーン)関連技術を巡り米アップルを訴えたのはその布石なのではないか、など。

 そのいずれも噂話の域を出てはいないので、今後どうなるかは定かではないし、なにしろ元はフィンランドの製紙会社が長靴メーカーとなり、さらに様々に転じた末に今日に至る同社であり、またぞろ盛り返して変異する可能性は十分にある。ただ、今回ノキアがMWCで得た唯一のプレゼンスが、インテルと共同で発表したプラットフォーム「MeeGo(ミーゴー)」に関する取り組みだけだったというのは、同社の将来を暗示しているようにも筆者には思える。

見たい人がいなかった

 一方、今回MWC全体を俯瞰して感じたのは、「主役がいない」ということだった。具体的には、プラットフォーム事業者たちの不在である。

 例えば今回、米グーグルは、エリック・シュミットCEO(最高経営責任者)の講演こそ賛否を含めて盛り上がったものの、申し訳程度に設置されたブースがあるだけであった。また米アマゾンに関しては、Kindle(キンドル)向けにデバイスを作っている事業者の姿はあったが、本人たちはほとんど見かけなかった。アップルも同様で、アプリケーションやコンテンツのベンダーたちは多く出展していたものの、彼ら自身は影も形も見かけなかった。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

クロサカ タツヤ(くろさか・たつや)

クロサカ タツヤ 1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。



このコラムについて

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書

19世紀がヒトとモノ(物質)、20世紀がマネー(金融)のエコノミーだとしたら、21世紀は何か。この質問に対する、有力解の1つは「ビット(情報)のエコノミー」だろう。現実に、中南米やアフリカを視野に入れたケータイの普及という形で、ビット・エコノミーを構築しようと国や企業が動き始めている。「ガラパゴス」日本にチャンスはあるのか。世界で思惑がうごめくケータイ産業の最前線を描く。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内