• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「安全への検証」と「技術者の情熱」はあるか

トヨタのリコール問題で見えた輸送機器設計の怖さ

  • 宮田 秀明

バックナンバー

2010年2月26日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 トヨタへの信頼が揺らいでいる。日本でトップレベルの経営をしている優等生企業だし、大きな利益をあげていたし、日本の産業の国際競争力を力強く支えていた企業だったから、トヨタの危機は日本の産業の危機と言う人までいるようだ。

 しかも欠陥がブレーキとアクセルという最も信頼性が要求される装置だから、なおさら心配だ。プログラムにミスがあるとされるABSというのはアンチロックブレーキシステムの略称である。最短距離で車を安全に停止させるためにブレーキを電子制御する装置だ。

 濡れた路面で急にブレーキを踏むと、タイヤの回転は止まるのだが、そのまま車ごと滑ってしまうことがある。こんな危険な動作を防ぐ装置がABSだ。

 もちろん昔の車にはこんな高級な装置はついていなかった。それどころか4つの車輪についているブレーキの利き方がまちまちで、ブレーキをかけたら車が別の方向を向いてしまうことさえあった。私も学生時代、自動車部に所属していたので、こんな危険な経験を2回ほどした。その時運転していたのは、いすゞの乗用車ベレットとマツダの2トントラックだった。

 ブレーキ制御装置という安全に直結する部分に欠陥があったとすると、大変厳しいミスと言わざるを得ない。仮に1秒作動しなければ、時速40キロで走っていても、約10メートル空走してしまう。

人命に大きくかかわる輸送機器の設計

 経営も設計も“Good at everything, best at a few”でなければならない。どこにも悪いところがあってはならないが、その上で競争力を持つように他社に比べて優れたベストがなければならない。

 商品設計の場合に限っても、GoodとBestの意味するところは随分違うものだ。建物なら自重と地震に耐えるように設計すればよい。だから技術的には最高レベルでなくても一応の設計はできるし、大きな地震に遭遇する確率は低いから、仮にBadな設計であっても露呈しないまま終わることさえある。パソコンは簡単にトラブルを起こす。私の使っていた2台のデスクトップ・パソコンは2月に同時に壊れた。購入後2年しか経っていないのにだ。データの引っ越しや修復の作業によるロスは大きい。早く10年使えるパソコンを作ってほしいと思う。

 最もBadが許されないのが航空機、船、車、列車などの輸送機器である。人命を預かる工業製品だから当然のことではあるが、このことによって設計法や開発法は他の工業製品とは異なったものになることはあまり理解されていないかもしれない。

コメント17件コメント/レビュー

正確にはトヨタ製HV自動車において有る特定の条件(波状路)で低速でハードブレーキングをするとABSが作動し、回生ブレーキと油圧ブレーキの切り替えが起こる現象に際して、空走感を感じる、でしょう。おそらく絶対的制動距離には全く問題が無いが、この感、が普段ABSを作動させた事の無いユーザーには恐怖を与える物ではないかと思っております。これ、普通の10年くらい前のABSでも有りますよ。みんながみんなそんなに元気よくダートを走った経験が有る訳ではないですからね。ただ、別の記事でトヨタの上層部の方が間違ったコメントを知ったかで喋った件(ブレーキ装置の種類を間違えた)、は私の会社もそうなんですが、プロじゃないな、というか、これでいいのか日本の会社、と思う、ここ10年ほどの一番の危惧点です。そういう上層部の人が評価して登用する部下も、また、外面だけで、製品的にはさっぱり駄目という悪い連鎖が続いています。開発期間の短さも、その通りの指摘だと思います。大きくて厄介な問題は、見て見ぬ振り、か、スケープゴートに選ばれたマジメな誰かに押し付けて逃げちゃう。(2010/02/27)

「宮田秀明の「経営の設計学」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

正確にはトヨタ製HV自動車において有る特定の条件(波状路)で低速でハードブレーキングをするとABSが作動し、回生ブレーキと油圧ブレーキの切り替えが起こる現象に際して、空走感を感じる、でしょう。おそらく絶対的制動距離には全く問題が無いが、この感、が普段ABSを作動させた事の無いユーザーには恐怖を与える物ではないかと思っております。これ、普通の10年くらい前のABSでも有りますよ。みんながみんなそんなに元気よくダートを走った経験が有る訳ではないですからね。ただ、別の記事でトヨタの上層部の方が間違ったコメントを知ったかで喋った件(ブレーキ装置の種類を間違えた)、は私の会社もそうなんですが、プロじゃないな、というか、これでいいのか日本の会社、と思う、ここ10年ほどの一番の危惧点です。そういう上層部の人が評価して登用する部下も、また、外面だけで、製品的にはさっぱり駄目という悪い連鎖が続いています。開発期間の短さも、その通りの指摘だと思います。大きくて厄介な問題は、見て見ぬ振り、か、スケープゴートに選ばれたマジメな誰かに押し付けて逃げちゃう。(2010/02/27)

輸送機器と一まとめにしていますが、航空機、船舶、鉄道、と自動車は分けるべきだとかんじます。理由は、全社はプロが運転して、客を運びます。後者の自動車は素人が運転して、客は運びません。プロが使うものは、いろいろな面で高い品質(グレード)が求められます。それに比べて素人が使うものは、必ずしも内容で選ばれるわけではありません。場合によっては見た目だけで選ばれることもあります。だから当然製品を作る時の観点も違うと思います。実際自動車事故でなくなる人は日本だけで数千人(本当はもっといるはず)に上ります。他の三つの交通機関は死人がでるような事故があればそれだけでニュースになるでしょう。この差は意識すべきだと思います。一般向けということで自動車は最初からパソコンと同じ分野の工業製品と見るべきだと思います。余談ですが、パソコンが早く壊れるのはメーカーの選択と使い方に問題があるのだと思います。中国製の自動車は1年くらいでよく壊れると聞いたことがあります。使い方が悪ければ日本製の自動車も簡単に壊れます。(2010/02/26)

精神論は止めましょう。よく知られたことですが、自動車はソフトウェアの比重が増大しているにも関わらず、それに対する技術が追いついていない、ということです(自動車に限ったことではありませんが)。にもかかわらず、ソフトウェアは目に見えなく、部品点数という尺度でも測れなく、作る人間が増えれば増えただけ、どんどん増大していきます。一人の人間が理解できるソフトウェアの量には上限がありますが(人間の脳の容積はほぼ一定なので)、その量の数十倍が実装されているのですから、不具合を見逃すことは当然起きるでしょう。目で見て確認できる、現物のある機械モノの技術と一緒に論ずるべきではありません。ついでに。輸送機械の技術者が特別であるかのような意識はおかしいのでは。パソコンの技術者だって魂を削って設計している人もいるでしょうに。(2010/02/26)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授