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今年のアメリカズカップは“変曲点”

「純粋な技術開発競争」になる可能性あり

  • 宮田 秀明

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2010年3月5日(金)

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 2月中旬にスペイン・バレンシアで第33回アメリカズカップの大会があった。カップを保持するスイス・アリンギチームに米国のBMWオラクルチームが挑戦してカップを奪回した。

 このレースは全く変則的だった。ルールが全く変わって、ヨットは船体が複数あるマルチハル型だった。スイスは船体が2つあるカタマラン型、米国は3つあるトリマラン型で、トリマラン型が速かった。マルチハル型だと復原力が大きいので、風の力をたくさん受けて高速で走れる。それまでのアメリカズカップ艇がせいぜい13ノット(時速25キロ)程度までだったのに、マルチハル艇は30ノット(時速55キロ)にまで達することがある。

 今回は、米国チームの圧勝だった。マルチハル型は設計が複雑で、設計の差も大きいから、勝敗のほとんどは設計によって決まってくる。以前のアメリカズカップは技術とセーリングが半々ぐらい勝敗に影響したので、レースの性格が大きく変化したことになる。極端に言えば、アメリカズカップが「純粋な技術開発競争」になってしまう可能性がある。

米国艇とスイス艇、ともに次の大会に課題あり

 次回大会が今回のような変則的な形で行われるのか、元に戻るのか、すべては勝者であるBMWオラクルチームが決めることだが、もし、マルチハル型の船体を使いサンフランシスコ沖で開催となると、技術開発的には大変興味あるところだ。地中海と違って波がある。波長の長いうねりもあるだろう。

 今度の大会で使われた2艇に対しては強力な技術開発が行われただろうが、未成熟というか、設計の不充分さがあると思う。特に波のある海域に対しては充分な設計がなされていないと思う。ヨットに限らず高速の船で一番危険なのは“つんのめり”状態になることだ。つんのめりになってひどい時は、つま先を引っ掛けて前に倒れるような現象を引き起こす可能性さえある。横転でなくて前転してしまうのだ。

 実は、私はマルチハル型の船の設計や開発が得意だ。1993年にアメリカズカップの仕事を依頼されて引き受けたのも、この年に私と民間企業が開発したカタマラン旅客船が完成してめでたく就航する見通しが立ったからだった。

 それから7年間、アメリカズカップの仕事に没頭していったので、開発したカタマラン旅客船のことは民間企業に任せきりだった。その結果、製造販売されたのは国内の10隻までだった。安いし性能のいい船なので、国内では評判が良く、17年も使い続けられることになった。代替船を建造する時はこの船の改良版でいいと顧客に言われるほど評価が高いのに、その販売数は伸びない。日本の造船会社は船価100億円のタンカーの営業には必死に取り組むのだが、船価10億円の旅客船の営業に本気で取り組まないからだ。

コメント2件コメント/レビュー

レースの技術開発競争は結果がレースに単純に現れるのがうれしいですね。まったく同感です。ただ、力のない技術者は必ずしも好きではないと感じます。結果が単純に現れますからね。だから自信がない人は手を出さないんですよ。特に研究者と言われる人達が実際に動くものを作っているかどうかでその人たちの自信の程が分かります。レースの技術開発はお金だけで決まらないのもいいですね。F1でのトヨタの結果をみるとお金をかけても技術力がないところはなかなか勝てないことを分かります。レースは技術力が単純に結果にでますから、上手く使えば技術者のレベルアップに有効だと思いますが、最近は上手に使っているメーカをあまり聞きません。以前はホンダがF1レースで多くの優秀な技術者を育てたと思いますが、トヨタは勝つことも技術者を育てることもできなかったみたいです。アメリカズカップも設計者を育てることを目的にすれば参加費用のもとを取ることもできるような気がするのですが、今の日本の造船業界にそこまでの意思はないのでしょうね。(2010/03/05)

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レースの技術開発競争は結果がレースに単純に現れるのがうれしいですね。まったく同感です。ただ、力のない技術者は必ずしも好きではないと感じます。結果が単純に現れますからね。だから自信がない人は手を出さないんですよ。特に研究者と言われる人達が実際に動くものを作っているかどうかでその人たちの自信の程が分かります。レースの技術開発はお金だけで決まらないのもいいですね。F1でのトヨタの結果をみるとお金をかけても技術力がないところはなかなか勝てないことを分かります。レースは技術力が単純に結果にでますから、上手く使えば技術者のレベルアップに有効だと思いますが、最近は上手に使っているメーカをあまり聞きません。以前はホンダがF1レースで多くの優秀な技術者を育てたと思いますが、トヨタは勝つことも技術者を育てることもできなかったみたいです。アメリカズカップも設計者を育てることを目的にすれば参加費用のもとを取ることもできるような気がするのですが、今の日本の造船業界にそこまでの意思はないのでしょうね。(2010/03/05)

90年代迄の12メーター級シングルハルのアメリカズ・カップ艇が好きです。パワーボート・レースのP1GPやOSSの世界ではVボトムとカタマランの混戦が続いていますが、こちらは最初からテクノロジーの闘いが売り物です。19世紀に英国のワイト島で始まったアメリカズ・カップの艇は、常に究極の「ディンギー」だった事に価値が在った筈です。究極のディンギーの存在意義は、最高のヨットマンが究極の操船技術でマッチレースで技と知恵を競う事に価値が在った筈です。巨大IT企業オラクルとBMWオラクル双方のオーナーのエリソン氏は、SFゲート/SFエコノミック・ジャーナル両紙に「次期アメリカズ・カップ開催地」についてコメントしていません。エリソン氏が巨額の財力を背景に、百年以上アメリカズ・カップを独占したニューヨーク・ヨット・クラブの再来を求めるなら、アメリカズ・カップはヨットマン不在のマネーゲームとハイテクを競うヨットレースに変貌する危険があります。ヨットの醍醐味は、波と風を見方に大海原の上を自然相手に走る事です。(2010/03/05)

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