「宮田秀明の「経営の設計学」」

プロダクト・イノベーションが電気自動車社会を築く

航続距離をシミュレーション【続編】

バックナンバー

2010年4月23日(金)

1/3ページ

印刷ページ

 先週のコラム「電気自動車の航続距離をシミュレーション」の反響が大きかったので、今週も電気自動車社会について考えていく。

 10年後、20年後に訪れるであろう電気自動車社会は、どのような社会だろうか。もっと将来予想図を描かなければならないのではないだろうか。

 なぜなら、この社会を構成する主要な技術が大きく進歩しそうだからだ。リチウムイオン電池と電気自動車、充電設備に大きな技術革新が起きて、現在予想されている電気自動車社会よりも、もっと大きく飛躍した世界が広がっているかもしれない。

 リチウムイオン電池は液晶パネルや太陽電池に作り方が似ているので、大容量化、低価格化は急速に進むだろう。

今はガソリン車が“電気自動車化”した段階

 電気自動車の変化も大きいのではないだろうか。三菱「i-MiEV」もスバル「プラグイン ステラ」も日産「リーフ」も、既存のガソリン車の“電気自動車化”という開発手法が用いられているようだ。だから、これらが将来の電気自動車の理想形であるかどうかには疑問が残る。電気自動車の設計思想というか設計法についてはまだしっかりしたものがないようなのだ。

 電気自動車を考えるうえで明瞭なのは、利用者が最も気にしているのが航続距離性能だということだ。ガソリン車では消費者がそれほど気にしなかった航続距離をファーストプライオリティーで設計しなければならない。あちらこちらで“電欠”して立ち往生する電気自動車が現れたのでは、電気自動車社会への進歩が大きく阻害されてしまう。

 しかも航続距離は、車の状況や運転の仕方やエアコンの使用によって大きく変化する。先週のコラムでは、日産の小型車ベースの電気自動車に対して航続距離が色々な道路環境の変化でどのように変化するかを大雑把に試算してみた。日産からいただいたのは、公開された基本仕様のほかは一般的な消費馬力計算式だけだったので、色々な性能は私たちが憶測して行った。だから30%ぐらいの誤差があるかもしれない。

 しかし、「A社の電気自動車は公称160キロの航続距離だけど実用航続距離は80キロらしい」などと言った噂が広まって、それが電気自動車の評価につながるのは好ましくないことだ。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント5 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

宮田 秀明 (みやた ひであき)

宮田 秀明

1948年生まれ。1972年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士修了。同年石川島播磨重工業(現IHI)に入社、77年に東京大学に移り、94年より同大教授。専門は船舶工学、計算流体力学、システムデザイン、技術マネジメント、経営システム工学。世界最高峰のヨットレース「アメリカズ・カップ」の日本チーム「ニッポンチャレンジ」でテクニカルディレクターを務めた。著書に『アメリカズ・カップ―レーシングヨットの先端技術―』(岩波科学ライブラリー)、『プロジェクトマネジメントで克つ!』『理系の経営学』(日経BP社)など



このコラムについて

宮田秀明の「経営の設計学」

経営には「論理」が必要である。論理を積み重ねた理系思考がイノベーションを育む。技術力を最大限に生かし、プロジェクトをまとめ上げ、新しいビジネスを創造する。「理系の経営学」を提唱する東京大学の宮田秀明教授が理系の視点による経営の要諦を語る。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン