「クラウド――脱・自前主義の経営」

人気急上昇ソーシャルアプリを支える

うれしい悲鳴、不測のアクセス増にも柔軟に対応

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2010年4月27日(火)

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 「クラウドは誰に売るべきか?」。現在、クラウド・コンピューティングの事業化を計画している、あるいは既に事業を開始しているサービス・プロバイダが頭を悩ませている点はこの点だろう。

 サービス展開で先行する米国の状況を見ると、低廉な利用料金が売りのパブリック・クラウド、特にIaaS(Infrastructure as a Service)の利用者の中心は、個人の開発者、あるいは、死語になってしまったが、Web2.0系の企業が多いとされる。

 米国の場合、西海岸のシリコンバレーを中心に無数のIT系ベンチャー企業が存在する。しかも、スタンフォード大学やMITなど世界でも有数の理工系大学も抱えており、潜在的な利用者は相当なものだろう。

プラットフォームのオープン化が契機に

 一方、日本に目を向けるとどうなのか。IT系ベンチャーの数は限られ、セキュリティに敏感な大企業は利用に及び腰――。筆者は少し前まで、このように考えていた。

 しかし、ここにきて非常にクラウドと相性の良い市場があることが分かってきた。それは、ソーシャルアプリ市場である。

 ソーシャルアプリとは、mixi(ミクシィ)やモバゲータウン、GREE(グリー)などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のプラットフォーム上で動作するアプリケーションだ。

 通常のゲームや占い、ECなどのコンテンツとの違いは、友人などとのコミュニケーションを重視している点にある。たとえば、ゲームであれば、個人で楽しむだけではなく、友人との共同作業を楽しむ、占いであれば、自分の運勢だけではなく、相手との相性を占う、ECであれば、自分のために商品を購入するのではなく、友人に対する贈り物(ギフト)というイメージだ。

 昨年から、SNS各社がプラットフォームのオープン化に大きく舵を切り始めたことにより、外部の開発者でも、アプリケーションを開発し、mixiやモバゲータウン上で公開できるようになった。

3大SNS上でアプリの公開が可能に

 口火を切ったのは、mixiだ。昨年8月に、「mixiプラットフォーム」をオープン化し、パソコン向けに「mixiアプリ」を、10月末には携帯電話向けの「mixiアプリモバイル」の公開を開始している。

 11月にはmixiに続き、モバゲータウンがAPIを先行開発パートナーに開放、今年1月にはこのパートナー40社が開発した92作品のゲームが公開されている。

 また、GREEも今年2月にプラットフォームのオープン化を発表、3月にはプラットフォームを利用した「モバイル版GREE」向けのゲームについて、開発パートナーの募集を開始している。

 GREEもオープン化に踏み切ったことによって、ソーシャルアプリ・プロバイダは、日本の3大SNS上でアプリの公開が可能になる。

さらなる収益力強化を目指す

 日本のSNS各社のプラットフォーム・オープン化の背景にあるのは、さらなる収益力の強化である。会員数(2009年12月現在 約1858万人)でいえば日本最大のSNSであるmixiは3社の中で最も売り上げが小さい。いち早く、オープン化に踏み切ったのは、早急なテコ入れ策が必要だったからだといえるだろう。

 会員数2番目(2009年12月現在 約1673万人)のGREEの場合は、売り上げは一番多く、右肩上がりで伸びており、一見、不安要素はないように思える。しかし、2009年12月には、上場以来、初めてページビュー(PV)がダウンし、今後の売り上げの伸びの鈍化が懸念され始めた。

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著者プロフィール

城田真琴(しろた・まこと)

野村総合研究所技術調査部 上級研究員。
北海道大学工学部卒業後、大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て、2001年より現職。現在、ITアナリストとして、先端テクノロジーの動向調査、ベンダー戦略の分析、ユーザー企業のIT利用動向調査を推進。同時にそれらを基にしたITの将来予測とベンダー、ユーザー双方に対する提言を行っている。専門領域は、クラウド・コンピューティング、仮想化などのITサービス、IT基盤技術。2009年より、総務省「スマート・クラウド研究会」技術WG構成員。
著書に『クラウドの衝撃』(東洋経済新報社)、『今さら聞けないクラウドの常識・非常識』(洋泉社)、『SaaSで激変するソフトウェア・ビジネス』(毎日コミュニケーションズ)』、共著に『ITロードマップ 2010年版』(東洋経済新報社)などがある。



このコラムについて

クラウド――脱・自前主義の経営

クラウドはアマゾンのEC2のようなインフラ層から、グーグルのGmailのようなアプリケーション層のサービスに至るまで、企業システムのあらゆるレイヤーをカバーするようになった。
クラウドを利用すれば、短時間・低コストでシステムを構築できるだけでなく、事実上無限ともいえるIT資源が使えることで、企業に新たなイノベーションをもたらす可能性も高まる――。
日本でもクラウド時代が本格的に幕を開けようとしている。

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